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王国騎士団副団長の憂鬱  作者: まつり
侯爵令嬢が婚約破棄された、らしい
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9/17

侯爵令嬢が追放された、らしい

挿絵(By みてみん)

やんごとねー姫のやんごとねーご友人の侯爵令嬢が、アホに婚約破棄されたらしい。


そのアホは隣国の、それこそ我が王国からしたら吹いて飛ぶような国の王子様。

そちらからしたら王子を婿にやるから、我が国をよろしくお願いしますって密約ありきの婚約だったんよ。

まぁ、言うなればその生贄の羊が逃げ出したって感じ。


気持ちは分からんでもないがね、ダメよ。

王族が我を通しちゃ。

そんな事したら国がなくなるゾ!


教会から派遣された聖女だかなんだか知らない女に唆されて、真実の愛を見つけちゃったんだって。


聖女かぁ。

性女だったりしない?


まぁとにかくそいつが真実の愛の化身らしく、あちらの国の威信を賭けた、愛のない結婚政策は水泡に帰したって。


ウケる。

向こうの王様泡吹いて倒れたんじゃねぇの?

つーか普通に通らんだろ、そんなわがまま。

アホ王子はのうのうと王太子やってんのかね。

ウチの国なら即刻継承権無くしてると思うけど。


栄えある便利屋こと王国騎士団の副団長である俺は、長期休暇に旅立とうとしていたその日に王から呼び出されて、その令嬢の保護にあたる任務を承っちゃった。


今頃はさー、湖の見える別荘地でゆったりと釣りをしながら過ごしていたはずなのに。

見てこのピカピカの竿。

特注品よ?有名な職人に頼んでさぁ、2年越しに届いたのよ?

使いたいじゃん、こういうのってすぐにさー。


個人的にも休暇を台無しにされたお礼をアホ王子にお見舞いしたいところだけれども、それより何より、令嬢だ令嬢。


彼女の事は知らない訳じゃない。

姫のお守りが俺の仕事の一環だから、姫の友達は大体把握してるからな。

あの娘さんは学園に通ってた頃は才女で通っててさー、教養も深かったから、王家からの評判が宜しかったのよ。


だから任務とも言えるこの政治的な結婚に選ばれた背景があんのね。

彼女だって好きな男の1人や2人居たろうに、国の為ならって涙を飲んだだろうよ。

なのにこの仕打ち。

マジで可哀想だろ。


しかもだ。


その娘の実家も中々のアホ…おっと、あの娘の実家の侯爵家って王家筋だっけか。


あぶねー、不敬だ不敬。

ポロッと口から漏れちゃった日にゃ俺の首もポロッと落ちるぜ。


えー、あー、凡人たる私には遠く及ばない考えを持たれてらっしゃる侯爵様が、優秀な娘を何故か嫌っていたらしくってね。

婚約破棄!即!実家排斥!なんてとんでもムーブをかましやがった。


王からしたら優秀で可愛い姪っ子みたいなもんよ。

血筋は詳しく知らんけど、娘と仲のいい親戚の子だよ?

まぁ、王様も可愛く思ってたんじゃないかな。


だからそんなさ、意味不明な排斥なんて事を許せるはずもないんだけど、王って立場のおっさんはね、簡単に動けないのよ。


贔屓だ差別だ優遇だって、この機会に大騒ぎして利益を掠めとったやろうとする火事場泥棒みたいな貴族なんてパッと思い浮かぶだけで両手じゃ数え切れないくらい居るんだもん。


でも王様はあのハゲ…えーと、眩いばかりに光輝く侯爵を排斥すると決めたらしい。

でもそれには準備が必要なんよね。


今すぐそう出来ますよっね確実になるまでは王は動けない。

うちの団長は、先日新しく出来た国に文官と共に行っちまったから不在。


だーから、休暇直前の俺が呼び出されたってさ。


まぁ、良いワン。


それに、俺はお国の犬でございますワン。

会議を開いて方針を決めて、まずは王に相談するんだワン。


俺も令嬢には同情してるしな。


うし、方針1。


行く当てもなく困った令嬢をウチで働かないかと助けた商人が、偶然新店舗の店長を探しており、そこを令嬢に任せる事に。


すると偶然大当たり!


王から呼び出されて、褒められて、新しい家を興せる事に!


あら、なんとまぁ、偶然血筋も王家筋ではありませんか!

これは侯爵様にするしかあーりませんね!


初代は後継より権力が強えー。

彼女の父は自分より格上になった娘を見て、その高貴な眼から涙を流す事になるでしょう。


喜びの、ではないだろうがね。


そんなうまく行くかって?

いやいや、これはそんなに難しい事じゃないのよ。

だってこっちは国のバックアップのもと動けるんだから、人海戦術なんぞ余裕よ。


大行列でも作れば流行りの店って評判は付くし。

サクラなんて雇い放題雇えば良いだけの話よ。

そんな人件費掛けるのは商売として終わってても、利益を出すのがその店の目的じゃねぇから関係ない。


まーそんな事をしなくても、優秀なコンサルタントを付けることだって出来ちまう。

それこそ国一番の商売上手の協力だって得られるよ。


そんで、姫と友達だからさ、姫がやって来て王室御用達になんても出来る。

あのお転婆、民からの評判はそこそこ良いからなぁ。

良い広告になるよ。


な?そんな難易度は高くないのよ。

勝ち確、やったぜ。

時間は多少掛かるけどな。

時間掛かると、俺の休暇もどんどん後回しになるけどな!


目下想像できる問題はアホが妨害してきそうなくらいか。

そっちを排除するのは正直めんどくさい。


俺らより遥かに権力があるからなぁ。

いざとなったらめちゃくちゃに被害者ぶって王様に泣きつけばいいか。


そんで、方針その2…を考える前に、前提を整えなきゃな。


ちょっとそこの君、訓練中の兵士…そう、例のあいつ、呼んでくれない?


ごめんね仕事中に。


俺も仕事中だから許して。

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