めでたしめでたし、か?
見てこの荷物。
丁度これから湖の綺麗な別荘地に休暇の旅に出ようと思ってさ、張り切って色々買っちゃった。
それにこれ!
魔王から酒が届いたのよ!
うれしいねぇ。
定期的に配送してもらう契約をして来たんだよ、個人的に。
美味すぎたから、後できっと買えなくなるぞって思ってさ。
軍の金とかじゃねぇよ?
マジで自費、趣味の出費。
これも一本持っていっちゃおっかなー。
水際で優雅に飲むワイン。
きっと美味しいぞー!
なーんて色んな想いを馳せてたら、嫌な奴が訪問して来たよ。
いや、コイツが嫌って言うわけじゃないんだけどよ、コイツが持ってくる話が嫌なんだよ。
んでなに?
何の用事?
「王が貴殿を召喚しております。」
うわ…出たよ。
出た出た。
あれ?俺って今日から休暇の申請出してたよな?
3ヶ月っていう長さは管理職としてはナメ過ぎだとは自分でも思うけどよ、溜まりに溜まった休暇日数の半分も消化してないからな、これでも。
王様からの呼び出し…?なんなんだ?
また姫がなんかやらかしたのかね。
せっかく戻って来た団長の健康がまた害されちゃうよ。
一応行くかぁ。
コイツに金握らせてもう出掛けちゃってた事にしてもいいんだけど、俺がトンズラこいたら困る人の顔が何人も浮かぶからなぁ…。
ま、続けておっきな問題なんて起きねーだろ。
パッと行ってパッと帰ってこよ。
「この度はご苦労だった。
褒美の目録は追って付け届ける。
申し訳なかったな。
些少の色は付けておる、許せよ。
…所でだ。」
所で。
あぁ…嫌な予感がする。
やっぱ使者に金握らせるべきだったぜクソ!
今頃さー馬車に乗ってさー草原をゆったりとさーさわやかな風を浴びながら走ってさー。
お気に入りの釣竿と、狩用の弓のお手入れなんかをしながら休暇に思いを馳せていただろうにさー。
聞きたくない!
俺の耳よ!
今だけ潰れてくれ!
「姫の親友にな、侯爵令嬢がいるのだが、隣国の王子と婚約しているのだが…。」
えぇ…存じておりますよ。
美人で賢い良い子だ。
俺は姫付きになることが多かったからな。
話したこともあるよ。
まー有名な才女だし、どっかの王子と婚約したと知った時はなんか納得したよ。
歳が近かったから、俺と婚約していたかもしれなかったって噂も聞いたことあったな。
思い出した。
それを団長にイジられたこともあるわ。
「その王子がな…婚約を破棄しおった。
なんでも聖女とやらと称する治癒魔法が得意な平民の女に入れ込んでな…。
もしかすると、その娘になにか吹き込まれたのかもしれんが…とにかくそう事になった。」
あらら、滅茶苦茶すんね。
王子と侯爵っつーでっけー貴族の結婚なんて、政治的に互いの国の利益になるように設定されたビックカップルでしょうよ。
そんなさら熱に浮かされて破棄出来る簡単なもんなの?
「まぁ、それは良い。
それを機にこちらから融通する予定であった諸々を白紙にするだけだ。
しかしだな、問題は馬鹿な侯爵がな、それを恥じて令嬢を追放しおったのだ。
家格を汚されたとかを名分にしてな。
元々令嬢は結婚に乗り気ではなかったらしく、そちらを悲しんでいる訳ではないらしいが、侯爵は政治的な足掛かりを失った。
他国とはいえ後の皇太子の祖父の座を得られていたはずだからな。
その怒りの矛先が令嬢に向き、追放したのだろう。
完全に八つ当たりだ。
年端もいかぬ娘が1人世に放り出されるとは、可哀想に。」
マジかよ。
そんな事した方が醜聞でしょうよ。
「あぁ、その通りだ。
…どうやら彼女の妹の方を溺愛しておるとかでな、出来た娘であるはずの令嬢を、小賢しいと冷遇しておった噂もある。
考えなしの行為の罰はいずれ与えるが、まずは令嬢の保護が必要だ。
副団長よ。
これから秘密裏に令嬢の新生活をサポートせよ。
我は政治的なしがらみがあり、元貴族の令嬢を王族が直接サポートする事は叶わないのでな、頼んだぞ。」
は?
いや、マジか。
まぁ、確かに可哀想だ。
休暇が消えた悲しみもあるけども、後回しにしたら野垂れ死にしかねんからしゃーねーわ。
了解しました。
マイロード。
んー、どうするか…なにか商売を始めるように誘導して、コンサルタントやサクラを使って成功させようか。
金と実績を産めば、才覚を認められて世論は令嬢側に味方するかもな。
意味不明な追放での都落ちから復帰する芽もあるだろ。
王の覚えもめでたいし、姫の親友でもあるのなら、ある程度の力を得たなら実家を乗っ取る事だってイケそ。
それか…えーと、俺の部下に修行として入っている帝国の第二皇子。
アイツは婚約者がいないはずだったな。
それこそ政治的なカードになるから気軽に切れないって困ってたはずだ。
驕ることもねー真面目ないい弟分だし、かなりの実力者でもある。
性格も良いし、頭もいい。
きっと話も合うだろうな。
そんな皇子とどうにか婚約させられれば、隣国なんて弱小国の王子なんて、それこそ吹けば飛ぶ存在に成り下がるだろうし、実家は吹かないでも飛んでっちゃうだろうなぁ。
よし、会議を開く!
方針を決めようぜ。
作戦名は…そうだな。
侯爵令嬢が無実の罪で婚約者を奪われた上に、貴族の実家を追放されてしまったが、偶然出会った男の人が大国の王子様!?何故だか私の事を気に入ってくれているみたいで、仕事もプライベートもサポートしてくれて。
どうかな。
長すぎるか。
第一章完




