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王国騎士団副団長の憂鬱  作者: まつり
侯爵令嬢が婚約破棄された、らしい
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10/17

婚約破棄には婚約を、らしい

「お呼びでしょうか副団長。」


お呼びでございますとも。

来てくれてありがとうね。

上官からの呼び出しなんて本当にイヤな予感しかしないだろうに。


さてさて、この部下の騎士くん。

何を隠そうよその大国、帝国の皇子様なんだよね。


うちの王国と帝国は仲良しさんで、友好の証にあちらの皇子と、こちらの王子が交換留学してんのよ。


まーね、人質の交換って言ってる奴もいるけどさ、要は大国同士が仲良くないと情勢が不安定になっちまうから、お互いの国をよく知る偉い人がいた方がいいよねってハナシでさ、かなり昔に始まったんだって。


弱小の隣国とは違って、帝国はマジで大国だからさ。

揉めたらその2カ国だけの影響じゃおわんねーのよ。


呼び出して何の話をするのかって?

アレだよアレ。

みんな大好きな恋バナってやつ。


「…はぁ、好いている女性でございますか?


あー、えーと、ご存知かと思いますが、私には色々と事情がありまして…。


…なんでしょう、副団長、あの、質問の内容が、あの、気持ち悪いです。」


事情は知ってるよ。

継承権のない皇子だけど、貴族としては価値が高ぇから、帝国の許可がないと気軽に恋愛も出来ないんですってこったろ?


マジでそれ、隣国の王子にも言ってやってくれよ。

二発までならぶん殴っていいからさ。


まーそんなこと言わないで聞いてくれよー。

騎士学校の夜中の雑談みたいなノリで話そうとしたのは失敗だったけどさー、こっちも大変なのよー。


皇子は事情を飲み込むと、まぁ、別に構わない、程度の返事をくれた。


どうせどこかで政治的な結婚をするのだから、その相手として件の令嬢は悪くないって。


悪くないどころか政治的にはかなりの有望株だもん。



王家筋、利発、美人、それに国交の友好の象徴と扱われても厭わない精神性を持ってる。

まぁ、その犠牲心はアホのせいで無駄になったけども。

心技体三拍子そろった有望な令嬢だからさ、マジでおすすめなんよ。


「なんならウチの兄でも良いくらいの条件じゃないですか?

兄はもう婚約者いますが、話を通せば乗り換えも検討されるレベルの相手ですよ。」


そうねぇ、そんな事したら別の事件が起きるだけっすねぇ。


ほんじゃ大筋はオッケーって事っでいいね?

案の一つには入れちゃうよ?

実家にも相談しておいてくれな。


じゃあ方針その2。


偶然知り合った皇子様となんか気があっちゃう作戦も練らなくては。


こっちはなぁ、令嬢の好みとかもあるしなぁ。

婚約破棄されたばかりだから恋愛は懲り懲りだろうけど、逆にそんな時だからこそ狙いやすかったりしねーかなぁ。


うん、これは有識者に聞いてみようかな。


「なによ。」


ご機嫌よう、我がやんごとなきお姫様。


この間助けてやったんだから少しくらい話を聞いてあそばせ。


「私にも思うところがあるわ。

友達だし、あの子がこんな事で不幸になって良いはずがないもの。」


そうで御座いますねお姫様。

早くあの娘の理想のタイプを教えやがって下さいませませ。


「んー、恋愛がどうこうって話はした事ないのよ。

職務に忠実だったから、彼女。


そんな個人的な好みなんてあるのかしら。


そうねぇ。


あの子の婚約者、真面目ぶっていたけれどクズだった訳でしょう?

ならその逆で、軽薄そうだけど根は真面目、みたいな方が懐に入りやすいのではなくて?


尚且つ、支えがいのありそうな殿方。

そんな人が良いのではないかしら。


そういえば…貴方とも話が上がった事があったわよね、すぐに婚約話が上がってなくなったけれど。」


成程で御座いますお姫様。

俺との話はあったらしいね。

勝手に浮かんで消えてったシャボン玉みたいな噂だけど、あの娘さんは評判がいいから、俺に勝手に同情する奴とか、俺をイジってくるやつとかいたわ。


一番イジって来たのは団長な。

あの野郎、亜人ごっこした時の記録、ゴシップ誌で広めてやろうか。


おっと。


サンキューお転婆姫!


あ、魔王領に居る際にお太りなられたので、運動した方が宜しくてよ?おほほ。


しっかしなぁ、軽薄そうで根は真面目で支えがいのありそうな奴?


そんなやつ浮かばねーわ。

相反してるだろ。

軽薄と真面目は。


あのお転婆。

ロマンス小説ばっか読んでいるからそんな事言い出すんだよ。

けど一番の友人の言葉として考えたなら、慮る必要はあるよなー。


さて、じゃあそれを踏まえて我らが皇子様はどうかな。

正確は…まぁ、真面目。

軽薄さは微塵もないね。

その代わりクズではないぜ?

身を挺して両国に橋を掛けているような人格者よ。


環境的にはどうだろう。

アイツの兄貴が皇帝になったら…たしか向こうに帰って、悠々自適の侯爵生活、それが既定路線だっけかな。


マジで羨ましい。


鼻にかけるような事はしないし、一般的な騎士として扱ってくれって帝国からも本人からも言われてっからそう扱ってるけども、本来の権力を持ち出して命令されたら俺なんてイエスがハイしか答えがなくなるわ。


そんな事する奴じゃねーけどさー。


あ、ヤベ。

うわ、そうじゃん。


令嬢のハゲ親父と似た立場になるんか。

王家の血筋ってだけで悠々自適にノリで娘を排斥した親父と立場は同じになっちゃう。


んー、断られるかもしれないなぁ。

別に悪い事じゃないんだけど、心情的なぁ…。


でも皇子は候補に入れておこう。

お、いいこと考えた。

何人かの良い男を見繕っておけば、どれかにゃ引っかかるでしょう作戦だ!


「貴方とは、どうなのですか?

昔一度話に出たでしょう?」


あ、姫様、やめて!

俺との婚約話はどっかから流れたただの噂だからさ。


今更イジんなって、マジで。

当時だって真に受けなかったし、マジで。

そのやんごとないニヤケ面やめろって。む

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