選ばれし男を選ぶ、らしい
皇子を気に入って貰えるのが理想なんだけどさー、人と人だからそう上手く事が進むとは思えないじゃん?
出来ればタイプの違ういい男を何人か側に付けたいところなのよ。
俺の近くには基本的に脳筋オンリー。
肉体派の脳筋か、頭脳派の脳筋しかいないのよ。
え?頭脳派の脳筋?
いるよ。
ダンベルにつけてる名前が、古事から来てたりとか。
だからね、俺が受けた任務だけども他に頼れるもんは頼らないといけないのよ。
使えるもんは親でも使えってのが基本だろ?
つーわけでマイロード、他に良い男知りません?
王でも使うぞ俺は。
「ふむ、姫の言うことも一理あるな。
恋愛の傷は、恋愛で治すのが手っ取り早そうだ。
それにお前が危惧する通り、独りで大きくなるには危険が伴い過ぎる。
貴族同士の争いになれば、色々とな。
単純な身の危険があると考えた方が自然か。
叔父上…侯爵は身分が高い。
愚かな事をしたとはいえ、それでも支持者が多いからな。
逃げそびれた者が大勢いると言った方がいいか。」
そうですね。
なんで王様、良い男知りませんかね。
「ふむ…。
ふはは、そんなもの我が知る訳がなかろうが。」
oh…王様って孤独ですもんね。
友達とかいないっすもんね。
あーあ。
このままだと俺の知り合いに当たるしか無くなって、令嬢が作りそうなおしゃれな店に不釣り合いな、筋肉達の饗宴になっちゃうよ。
兵士と騎士ばっかりだからなぁ。
紅茶とお菓子を筋肉に悪いから断るやつと、筋肉が喜ぶから頂くやつしかいねーもん。
俺も王様とあんま変わんねーわ。
どっかにイケメンで実績があって、人柄も良い。
そんな男はいないかなー。
あ、おるやんけ!
勇者。
あー、アイツどこに行ったんだろ。
善良で顔はいいぞアイツ!
ちょっと常識とかモラルとかマナーとか知識とか…その辺には欠けてるところはあるけれども。
「…お前な。
その様なものを押し付けようとするな。
確かに人柄は悪くないし、顔も悪くはない。
ハリボテとはいえ実績はあるから、食うにはこまらんだろう。
だが奴は王城に帯剣し、色々と物色しながら入ってくる田舎者だぞ。
洗練されたマナーを叩き込まれ教養に溢れた令嬢と過ごすだなんて、お互いストレスで死んでしまうだろうが。」
…ぐぅ!
「お前がいくら策略を練ろうともだな、恋愛なんぞその時の様々で変わるものだぞ。
お前が付くのはどうだ?」
俺はダメだよ。
だってこの後旅行に行くし。
あはは、ぼっちがなんか言ってら。
恋愛の機微なんて分からねーくせに。
あんたどうせ初めから結婚相手決まってたろ。
偉そうに!
あ、偉い人だった。
俺の給料はこの人から出ているんだワン!
でもそうっすね、一理ある。
恋愛に関しては考えたって仕方ない部分はある。
俺がコントロールしたまま動いてくれるのなんて勇者ぐらいなもんだ。
第一ね、女心なんて一生わかる気しねーもん。
はぁ。
まぁ、護衛代わりに男を付ける必要はあるから、結婚相手に良さそうなやつを送りつけるって方針はそのままでいくけどね。
どっか行って考えをまとめようかな。
そういや、あいつら令嬢様を確保できたかね。
それが崩れると前提が崩れるぞ。
何を始めたって大概どうにか出来るくらいの力が後ろで蠢いてはいるけども、死なれたらどーにもならんからなぁ。
…やめやめ。
茶店しばいたろ。
糖分とカフェインを欲しているわ。
脳が。
行きつけの店にいこうかね。
奥まった場所にあるし、人もまばらだし、薄暗い割からプライバシーも守れる。
騎士団の詰め所も近いからセキュリティも万全だ。
機密の考え事をするには最適やね。
…令嬢が働いてなければの話だけど。
なんでだよぉ!
注文取りに来た店員を見てびっくりしたわ。
件の令嬢が働いてんだもん。
知らんぷりしとこ。
相手は俺を知っている可能性が高いけどさ。
だって姫様のやんごとない御友人だからね、ついでに護衛をしたこともあるし。
賢い娘さんだから俺の事も覚えてるかな。
いや、私服だと兵士に見えないと評判の俺にゃ気づかねーだろ。
姿バレしたらさー、色々やりにくくなるよ。
「奥のお席どうぞ。
コーヒーには砂糖一つ、ミルクは無し、ですよね。」
アウト!バレバレ!なんで貴女、俺のコーヒーの好みを知ってんのよ!
なんだよ、夜のお姉さんの言う事を間に受けちゃダメだな。
優しそー、兵士になんて見えなーいっていってたじゃないかよ。
嘘かよ。
それにしても、本当に俺の味のいつ好みを知ったのやら。
あ、いやまだギリわからんか。
マスターから常連の味の好みとして、今さっき聞いただけかもしんないし。
「…姫ちゃんは元気にしてます?」
ダメでした。
バレバレでした。
確定しました。
なんも言えねー。
この娘さんは賢いからねー。
俺が話すとボロしか出んぞ。
まー、頭をちょっと下げて挨拶はするし、世間話はするさ。
無視はありえない。
今はちょっと外れただけで、やんごと系女子なのは変わらないし。
不敬は俺の首が飛ぶって。
物理的に。
えー、どうしよ。
事情を知り尽くしてるから、逆に会話がしづらいな。
えーと、そうだな、何にも知らない奴が一番はじめに疑問に思うのはアレか。
なんでここで働いてんの?か。
「…色々あったのですよ。
さ、コーヒーが冷めてしまいますよ。
どうぞ、お飲みになって下さい。」
おや、まだ俺の任務的なやつはバレてなさそう。
あ、よく見たらマスターが不安そうにこっちを見てるわ。
そりゃこっちの事情を知ってんだろうからな。
ウチのヤツがここに預けた後に、何故か俺がやって来たってタイミングか?
どうしたんですか副団長さん、なんでそんな堂々と現れてんすか、隠すんじゃ無かったんすか、そんな顔をしてらぁ。
誰だよここを匿う店に選んだ奴。
奥まった場所にあるし、人もまばらだし、薄暗いわりにセキュリティも万全なだけの店を何故選んだ。
うっそ、完璧じゃん。
俺でもここを選ぶわ。
行きつけじゃなけりゃあね。
行き違ったぁ。
王と無駄な話してる場合じゃなかったぁ。




