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王国騎士団副団長の憂鬱  作者: まつり
お姫様がさらわれて勇者が旅立った、らしい
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勇者の旅路はこんなんだ、らしい

完全に勇者パーティを巻いて休憩。

ひっさしぶりにこんなに走ったわ。

偉そうなこと言ったけど、階級が上がると走る機会って減ってくんのよ。

別にあれだぜ?サボってる訳じゃねーのよ?

走るってのは時間のかかる訓練だからさ、忙しくなると後回しにされがちってだけよ?


…嫌いな訓練ではあるけど。

団長には内緒な。


疲れてゲボ吐きそうな体調を表に出さないようにして、部下達と合流。

隊へと戻って参りました。


メシ食って、風呂入って、寝るわ。

歯も磨くよ。

とりあえず待機だからな。

勇者のお使いが完了するまではやる事ないのよ。


…いや、遅ぇって。

寝て起きてメシ食って、部下をシゴいてメシ食って、風呂入って寝て起きてメシ食った今もまだ、勇者がお使いを終わらせてくれない。


それどころか、商品を受け取りに来たってのがたった今。


諸々で2日経ちましたが?

徒歩でも片道7時間あれば着く距離だろ。

馬とか借りりゃあその半分以下で終わる。


どこに寄ったんだよ。


勇者と一緒にいるデカくてムキムキの男の服装が、なんか毛皮一丁になってるし。

魔王領なら普通だけどさ、よくその格好で船借りに来られたね。

全裸より野生に近づいてんじゃね?その格好。

仮装パーティーにでも参加して来たん?

誘えよー。


誘われても困るけどよ。


頼むからもう寄り道なんて止めてください!なーんて祈りが通じたのか帰りはすんなり帰って来てくれたわ。

これはあれだな、神のご加護ってやつだな。

俺も勇者なんじゃね?


そんで、勇者はなにやってるかっつーと、海の上。


という事は我々も海の上って訳。

向こうの状況は知りようがない。

普通に過ごしてくれていたら助かるなぁ。

同じ船に部下も潜り込ませてるから、多分大丈夫でしょ。


そうそう、あっちの船長には話が通っててね、俺らが乗ってる船の方が先行してんのよ。


俺らはね、海賊を先行して潰して回ってんの。

それも勇者の為に船を出す条件だったからさぁ。

この船を出してくれた国の海軍のおっさんと共に、楽しい楽しい悪者対峙の時間だから、忙しくて余計に向こうの事を知る由もないのよ。


船酔いは大丈夫かって?

もう吐くもんないから全然大丈夫!


姿を見せない様に気を配って、先回りして安全を確保。

王や姫よりVIP扱いをしているんじゃないのコレ。

っていうか、神の加護じゃなくって俺の加護じゃねコレ。


そうか、俺が神の可能性もあるのか!

ふはは!

あー…早く陸に上がりてぇ…。


先行しているから、アイツらより数時間早くに大陸の港に降り立った。

うぉお、世界が揺れる。

陸酔いってやつか…。

え?お前ここに来た事あんなら船に乗ってるだろって?

乗ったよ?海賊と戦う為に急旋回したりしないし、馬鹿みたいに速く進んだりしないゆったりとした客船に。


うっぷ。

海軍のおっちゃん、海賊より海賊だったな。


さてさて港の見えるおしゃれなレストランで飯を食いながら勇者達を待つ。

偉いから、俺。

役得したっていいじゃん!

せっかくの港町だよ?

海鮮くらい食わせてよ!

仕事もいっぱいしてるからぁ。


お、真っ青な顔でフラフラ下船して来たのが勇者達だな?

船酔いか、可哀想に。

ま、俺は客船なんかじゃ酔わないけどな!

ざこざこ三半規管をお持ちのようで。


でもまぁそうだよなぁ…山生まれ山育ちなんだもんな。


ゆっくり休みなさいな。

本当にゆっくりしてくれ。

俺も部下を野営でも船でもなく、陸の宿に泊めてあげたい。


そろそろ後ろから刺されそうで怖い。


ん?あれ?願いが通じたのかすんなり宿へ行ったな。


あー、あれは部下の誰かが機転を効かせて先に宿を取ってやったっぽいな。

勇者と仲良くなって行動を誘導したのか。

やるじゃん。


給与アップしてやるぜ!

なんて言いたい所だけどね、俺らって国に仕えてる立場だからさ、そんなこと出来ないんよ。

ごめんな、力足らずの副団長で。


後ろから刺さないでな。


久しぶりにちょっと気を抜いてゆっくりと出来たから、アレでもやるか。


アレって?会議。

作戦会議。

し、ご、と!


半ギレの俺らが丁寧な会議で話し合った結果、ある程度の方針が決まりましたよ。


港町から魔王のとこまでには2つほど大きな街があってね、中規模の町は4つくらいか、んで、村々が転々としてんの。


まー、そこそこ長旅だ。


俺らで7時間の道のりを3日も4日も掛けちゃうのんびり系勇者に、フラフラと寄り道をされるとやってらんないのは全会一致。


せっかく船で仲良くなった団員に芝居をして貰お。

つまり、勇者に期限付きの依頼をして、次の町へ次の町へと頼み事で誘導する作戦だ。


あたかも人助けをしているみたいな感じだが、結果的に最短ルートで魔王城へまっしぐら。


さっき仲良くなった部下が名乗った身分は商人らしい。

それを活かして次の町まで護衛を依頼してもらう。


馬車は手配済みで、それに乗りゃあ徒歩よりも大分早く進む。

どっかフラフラ行きようもないし、迷子にもならないしそれがベストだと判断した。

あれ、子供の世話してんだっけか。

ま、いいや。


商人を装ってる以上は盗賊なんかがちょっかい出してくるかもしんねーけど、俺らが察知できるぐらいデカい規模なら先潰すし、少人数ですり抜けられても勇者達になんとかしてもらおう。


ある程度仕事もやんねーとな。

暇すぎてもモチベーションが続かないだろうし。

もしもその小規模の盗賊が強くても何の問題もない。


いや、だってさ、乗り合う町人も商人に扮してんのもおれの部下だぜ?

そもそも勇者の10倍強いから。


町から町へと依頼をこなしながら順調に進む勇者達は、凛々しい顔になっていく。

嬉しいよ、ホント。

もはや親心って言っても過言じゃないや。


近くに付いた部下達が用意した仕事。

護衛依頼や運搬、討伐依頼などバリエーション豊かな依頼をこなして自信を付けたんかね。


まぁ、言うてもね。

その表情とは裏腹に彼らは大して成長していないけどね。

その自信、ハリボテよ?


だってさー、アイツらが違和感を覚えない程度に戦いやすく数も少ない奴らを吟味して通してんだもん。


そらそうよ。


雑魚は5匹、大物は1匹までとルールを共有。

それでもやばそうな時は我が団自慢の狙撃手が、しれっと数を減らしている。


バレなかったのかって?


イカサマするときゃ依頼人役の団員に合図を送って、早く移動したいだとか、商品として素晴らしいからこの場で買い取らせて欲しいなんて意味のわからん色んな言い訳をつけて、アイツらに死体を吟味させない様に配慮してんのよ。


勘のいい奴ならとっくに気がついてるとは思うけどな。

いざという時の為にドッキリ大成功って書かれた看板でも用意しとこうか。


なんっつって。


あっちで困り事、こっちでお使いと右往左往していると見せかけながら、思惑通り最短距離を進んでいくと、いよいよ魔王領が見えてきた。


長かった…。

泣きそう。

帰ったら有給取るんだ絶対。


勇者達も気持ちを引き締めた顔で城へと近づいていく。


コイツら顔がいいから絵にはなるんだよなぁ。

なんか腹立って来た。


さてさて、いよいよ最後の難関っぽいステージですよ。

ここでも一応設定は考えました。

いや、魔王領もなかなか広くてさ、迷われたら困る。

それに、別に悪者の国なんかじゃないから、普通に慎ましく暮らす市民が生活してんのよ。

その人達に襲いかかったりしたら、もう処すしかないじゃん?


だから道案内をしねぇと。


えーと、チェックポイントを4っつ用意して、強敵っぽい人達を用意しました。


その名も四天王。

そのまんまやね。


四天王と呼ばれる強大な亜人を倒していかなくては魔王への挑戦権すら与えられないのだ!

困ったから勇者よ!


4人は長くねって?長引かせる理由もちゃんとあるって。


その戦いで、亜人達の悲しきバックボーンが明かされていき、4人目ともなると気持ちのいい武人の登場。


感情移入待ったなし!


敵として戦ったは良いものの、もしかして全ての亜人が悪人ではないのではないかという疑念を抱かせるというストーリー。


原作は俺、仕上げ…というかほとんどはそういうのが得意な演劇マニアの部下にやってもらったぜ!


そこの劇場主さん、この話使ってもいいよ。

お金の話をしよっか。


突貫で仕上げた割には良い出来だ。

面倒だけどね、この劇、結構重要な役割なのよ。


というより、ここまでの旅で彼らに色々自力っぽく対処させてきたのにもちゃんと理由があるしね。

じゃないとあんな面倒な事してないよって話。


一つは、彼らが帰国した後に亜人を敵として風聴されては困るんよ。

だってさ、この後は普通に国交を開く事が決まっているんだから。

見た目は少し違えども、良い奴も悪い奴もいる人間と同じ存在って事を広める広告塔になってくれれば、馬鹿な偏見を持つ奴も減るだろ。


もう一つは、おそらく吟遊詩人、そして我らがやんごとなき姫なんかが、勇者に旅がどんな物だったかを聞くだろう?

完全にヤラセだけど、アイツらからしたら体験して来た現実じゃん?それがドラマを産むってね。


俺らから見れば茶番も良いところなんだけども、これからの為に必要なんだよ。


…もし彼らが想定より遥かに愚かで、相対した敵をそのまま敵としてしか受け入れられない様な馬鹿ならば、姫が帰る気になった後に俺が対処する。


おっと。

黒副団長が漏れちゃった。

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