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王国騎士団副団長の憂鬱  作者: まつり
お姫様がさらわれて勇者が旅立った、らしい
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勇者は正義ってやつをやりたい、らしい

やっべー…マズイことになったわ。


地域の配送をめちゃくちゃにしてるっつー狼の群れは、俺らが勇者の進路を開けるために避けてしまったやつなんだって。


普段と違う位置に野生動物の群れがあったら危なくて仕方ねーわな。


あっはっは。

やっちゃったね、こりゃ。

…笑い事じゃねーか。


うーん、狼は縄張り意識がつえー動物だからなぁ。

そろそろ元の位置へと戻って来てっかも。

そうなると速さこそ正義な商人達は、配送に出ちゃってる可能性まであるじゃん。


まーた勇者を先回りしないといけねーのか。

商人を隣町へ戻さねーとお使いの内容がなくなっちまう。

こんなに部下を右往左往させてたら、来年には俺が職を探して右往左往することになりかねねーって。


あいつらに無償でなんか貰えるって成功体験を積ませたくないからって、俺ら仕事が増えるもどうなのよ、とも思うけどね?


まー…今回も前回も突貫工事のハリボテ案だからしゃーねーか。


他に数十分の会議でいい案が出せるなら出してるって話やね。


うまくいかねー時は本当にうまくいかねーのな。


商人ってのは兵士の命令だからっつって、はいはい素直に従ってくれる訳はねーんだなぁ、こりゃ。


奴らは金か利益でしか動かねー。

そういう生き物だ。

それを否定するつもりは勿論ないよ。


今回の場合は単純に納期を意味なく遅らせろって言っているのと同じだから当然反発されるよ。


だから一つ、交渉材料を持って行かせた。

金での交渉だと歯が立たねぇからな。

文官にペンで勝てないように、商人に金勘定で勝てる訳がないだろ?


俺らが握ってんのは剣。

剣なのだ!


早馬の部下が戻ってくると、想定通りに途中にある盗賊の根城をどうにかして欲しいと伝言を預かってきた。


流石は商人さん、話も早い。


他国ということを目をつぶれば、治安維持は俺らの仕事。

専門業種だもんで、今更悪党を斬っても罪悪感なんて蚊ほども沸かん。


こっちの仕事だからこそ、向こうへの貸しにもならない丁度いいお願いやね。


他国に協力して貰ってる以上は、お宅の領内に盗賊がいますよ、だから早く片付けてって言ってますよ。


なんて報告をこの国の王にするメンタルを持ち合わせてはないのよ。


よっしゃ、サーチアンドデストロイ!

殲滅!だ!


盗賊は30人規模といった所。

そこそこの大所帯だったが、こっちは200人いんのよ。

向こうは素人相手に暴力を使ってきた、素人に毛が生えた奴ら。


こっちはなぁ、小さい頃からこつこつと、やりたくもねー戦闘訓練を後ろの方で腕組みしてる親父達に見張られながら、血反吐を撒き散らしながら鍛えて来たプロよ。


負ける訳がない。


数も7倍こっちの方が多いしね。


この状況で俺らに勝てる様な奴が盗賊にいるなら、いくらでも払ってやるからウチで働いて欲しい。


マジで。

俺の代わりに副団長とかやって欲しい。


ボッコボコになった盗賊を目の当たりしたからではないと思うが、商人も交渉通り文句一つ言わず大人しく戻ってくれた。


勇者も無事この国まで辿り着き、やはり帯剣したまま王城へと伺い、タダで船に乗せてくれと無茶苦茶を言っていた。


しれっとその場に居合わさせて貰ったのだが、いやぁ鍛えられたわ。


腹筋とか。


君らね、俺たちが先回りしてなかったら門で首を刎ねられても文句言えないからね。

ウチの王城の門番がアレだっただけだからね。


いやー先回りした甲斐もあったわ。

打ち合わせ通り勇者をお使いにいかせられて一安心。


なーんて思ってたら、勇者が町から町への移動途中に盗賊のアジトの方へと進路を変えた。

今は俺らが潰したから、元アジトだけども。


おそらく酒場かどこかで盗賊の噂でも聞いたんじゃね?

世直し旅だと思っている彼らは、道すがら盗賊退治と洒落込もうって訳だ。


やめてよーもー!


結構スマートに解決したと思って、奴らのお使いの間ゆっくり風呂でも行ってこようってさぁ、用意を始めたばっかりだってーのにまたいらん仕事を増やしやがって。


大体4人で30人規模の盗賊団を何とかできると思っているのか。

盗賊と兵士の数が7倍あるから余裕だねって言ってたのに、勇者と盗賊の人数差も7倍あるんよ。


素人に毛が生えた盗賊と、素人勇者達。

勝ち目なんてねーって。


無理だって。


君ら猟師なんだから、罠とか張って狩ってたんでしょ?普段さー。

逆に罠が張られているアジトに入り込んで、地の利も人数差も負けていて勝てる訳ないよ。


まぁ、もう退治してるから関係ないか。

空っぽのアジトを探検してくおくれ。

もしかしたらお化けとか見られるかもよ。

ほら、最近そこで人、死んじゃってるから。


…ん?


あ、閃いた。

アイデアが降って来た。


ふわっとした推測しか出来てない勇者の実力をきちんと測るチャンスなんじゃね?これってさ。


ここで俺と兵士で待ち構えて戦ってみたら、どんぐらいやれるかなんて分かるじゃん。

え?部下を危ない目に合わせるのかって?

いやいや、猟師に遅れをとるような奴はそいつが悪い。


結構やれるならこの先フォローの仕方も変わるぜ?

本当にヤバそうな時以外ゆったりしてて良くなるぜ?


盗賊らしいさなんであってないようなもんだし、俺らが鎧を脱いで先回りして、アジトに残された盗賊の服を身に纏えば普通に荒くれた盗賊に見えるだろ。


臭いがね、本当にしんどいだろうけど。


この先の仕事に関わるからさ、割り切るって着るしかねぇなぁ。

おい、そこの後輩。

盗賊の服を汚そうに摘んで匂いを嗅ぐんじゃない!

心が折れちゃうでしょ!


あーあ、部下にこんな指示をしなくてならないのが悲しいわ。

優しい副団長としてやっていこうと思ってさ、パワハラとかセクハラにも気をつけてやって来た訳よ。


この件に関わってから無茶をさせてるわ…。

俺も一緒にやってるからさ、あんま怒んないでね。

つーかよー!全部あの姫のせいなんだから、恨むならそっちを恨んで欲しい!


あ、みんなー、顔も隠してくれー。

後の任務で接触する可能性があるからさー。

全部終わった後に顔を合わせるかもしれないよー。


さ、勇者を待ちましょか。


あー、おい。

怪我なんかしてもつまらんからよ、こんなことで。

不意打ちを警戒しような。

普通に考えて相手のアジトに正面から乗り込む馬鹿なんて…。

居たわ。

おったわ。


バンって正面から入って来たわ。

ある意味不意打ちだわ。

想定外だもん。


「この辺りで暴れている盗賊団はお前達だな!俺達が成敗してやる!」


こいつらの辞書に、忍ぶと言う字はないの?

効率とか、作戦とか、戦術とか、安全とかの字もないの?

そういや常識とか、礼儀とかは間違いなくねーな。


…そんなに無いなら辞書そのものが無いのと変わらないじゃん。


いい加減さ、色々疑問に思ってくれてもいいんたぜ?

なんか上手いこと旅が進むなって。

都合良くね?って。


ほら見て?彼らに合わせてこっちも4人なんだよ?

たった4人では盗賊団とは言えないよ?

不良がたむろしてるだけだよ?


この人数ではこの辺りで暴れているなんて認識をされる程の悪事を働いてるなら、めちゃくちゃ力が才能があるよ?


そんなことが出来てしまう程の盗賊がいるならさ、勇者なんかより全然厄介なんだけど。


分かってる?

分かってないよなぁ…。

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