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王国騎士団副団長の憂鬱  作者: まつり
お姫様がさらわれて勇者が旅立った、らしい
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2/17

勇者が旅立った、らしい

話せば話すほど、すんなりと進んでいく戦後処理。


助かるったらないわ。

助かるったらない。


会話がスムーズこの上ないから、この騒ぎの流れが見えてきたわ。


魔王って名乗りはしたけれど、別に悪魔の王でも魔物の王でもなんでもなく、亜人の王って話なんだって。


んで、元々は国単位じゃなくって、部族単位でまとまっていた奴らを国として一つにまとめようと奔走したのがこの魔王さんよ。


経済的にだとか、武力的にだとか、まとまらないと飲み込まれる未来しかないから、必要な事ではあったろうと想像はつくよ。


まとまったはいいが、よそにも国として認めさせる必要もあると。


んでだ、魔王さんは元々有力部族の息子なんだとかで、なんかの金持ちが集まるパーティに出た事があったと。


んで、そこで我がやんごとなき姫と会ったことがあったんだって。

そこで仲良くなって…嘘だろ?あの姫と仲良く?

コツとか教えてくれねぇかなぁ。


あ、やっぱいいや。

今更仲良くされたらアレルギーとか出そうだし。


なんだっけ。

あ、そうそう。

んで、大国の政治の真ん中にいる姫を頼って、手紙で今回の件を相談してたんだって。

だから…そっか、誘拐じゃなくって狂言誘拐だったっつー話やね。


凄いですね姫様。

優しい婆やが泣いてしまいますよ。

俺も泣きたいですし、団長は心労で死んでしまいますよ。

王様は着実に頭髪がね、あの、えー、やんごとなくなってきてますよ。


今回件で言えば、他国の姫を攫って政治的声明を発するとか、やってる事は完全にテロリストと言って良い魔王たち。


話すと気のいい奴らも多く、文化が違うから珍しい品や特産は豊富に見える。

あちらで必要だがこちらでは需要がないものあるだろうし、逆もまた然り。

やり取りをするメリットはめちゃくちゃある。


全部が終わったあとに、カバーストーリーを上手く流布出来たならば、民衆はそこまで不快感を示さないだろうし、アリ寄りのアリ。


ここの酒、マジで震えるほど美味かったし。

それだけでもなんとか、俺の分だけでいいから確保してくんねぇかな。


しかしまぁ、こっから先は文官の仕事かね。


今でさえ修行僧の様に書類の山奥で暮らしている仙人達の仕事を増やすのは本意ではないけども、俺らも全然本意じゃないからさ、仕事をぶん投げても怒らないで頂きたい所存です。


怒らないで、俺らの申請とか経費のアレコレだとか、なんとか厳しくしないで頂きたい。

それは八つ当たりというものですよ。


兵士は剣を握ると強いが、ペンを握るとそこらの女学生にも劣るんだもの。


そんなこんなの報告書を移動中にまとめたりして、疲れきって帰国。


王にそんな話をしてたらさ、軍が不在の間になにやら別の小さな問題が起きてんだって。


やってらんねぇ…。

顔には出さないけどそう思ったさ。

王国の犬だからって不満はあるワンよ!


だけどなんか解決済みらしい。


小さな農村で神のお告げを受けた勇者とやらが、救国の旅、ひいては拐われた姫を救う旅に出るって宣言しにきたんだって。


たった4人で。


あっはっは!あったまがおっかしいの?


事実は救国と言われるほど逼迫しちゃいないのよ、勇者様。

誘拐されたという事実だけを聞いて飛び出しちゃったんだろうかね。


いやしかし門番もよく通したな。

なんか顔だけは異常に整ってたから、どっかの劇団員かなんかだと思ったんだって。


あのさ、普通にクビになっちゃうんじゃないの。

部隊が違うから俺にはわからないけどさぁ。


…俺なら斬り飛ばしてるかもしんない。

馬鹿を通すな馬鹿野郎って。


王はバッキバキの目をした神だのなんだのを言い出して城乗り込んで来た異常者を、やっすい剣としょっぽい金を渡してあしらったんだって。


なんでそんな穏当に終わらせたかって?

王様の言葉をそのまま伝えてやろう。


「じゃって、帯剣したままだったからの。」


あっぶな!

マジでそんな奴ら通すなよ!


とは言っても平和な国じゃあね、こんな輩なんて城では日常茶飯事、慣れたもんよ。

教会のお偉いさんがあーだこーだと金を引き出そうとするのに比べればなんて事ない。


あれは毎回壮絶だもの。


この間など、ボロボロの孤児を沢山連れて来て現状を嘆くミュージカルを開催しやがった。


御涙頂戴もののよく出来た劇だったが、率いる教会長の指に光るどデカい宝石の付いた指輪を売れば解決出来そうな事に途中で気がついてしまったので、笑いそうになるのを我慢するので忙しくってストーリーは覚えてないけど。


思い出し笑いを堪えている俺に、王様からのありがたいお言葉。


「副団長よ、もしあの勇者とやらが姫を助けられたとするならば、それはドラマチックだろうか。」


…ほう、流石王様。


たとえヤラセだとしても、演劇なんかを見てドラマチックだなんだって、騒いでる姫様なんだから大丈夫なんじゃないっすかね、知らんけど。


門番が門番しないぐらいのイケメンらしいし。

いけるいける。

やっちゃえやっちゃえ。


え?そんな強くなさそうだったの?

え?誰かが助けて魔王の元まで辿り着かせる必要があるって?


まぁ、たしかにそうすりゃあ…姫は素直に帰宅して、国家を樹立しようと忙しく働いている最中のさ、将来国交を結ぼうとしている美味しいお酒を作る彼らに、これ以上の迷惑は最小限で済むかもしれんね。


はぁ、成程ね。

助けるのは俺だよなぁ…。

俺っていうか、俺の部隊?

出張から帰ってきたらまた出張。


了解です、マイロード。

王国の犬だワンからワン。

噛み殺してやろうか!


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