聖女は聖女、らしい
こっちも片付けなきゃなーってことでわざわざ隣国への出張よ。
次馬車に乗る時にゃ休暇の旅だと思ってたのになんなんだよ馬鹿野郎。
令嬢は軌道に乗りそうって事で今のタイミングしかなかったんだけども…放って置くってのはいつも不安だよなぁ。
まぁ俺がいたところで別に何も出来ないんだけどね。
昇進する度におんなじこと思ってた気がするわ。
自分で動いた方が気が楽だよなー。
遥々やって来て、先乗りして調査していた部下と合流。
調べておいて貰った調査書を読んだんだけども…。
なんと聖女様とやらはマジで聖女だった。
ごめんね性女なんじゃねーの、とか思って。
孤児出身の彼女は教会で働いている。
内容は慈善活動が多いね。
見た目のいい女が一生懸命働くってのは話題になるじゃん?そんであの娘は聖女の生まれ変わりじゃ!とか言い出したじーさんとかがいたんだって。
んで、そんな噂を聞いたお偉いさんが視察に来た際に、聖女様は王子に見染められたんだって。
まぁ、遠目に見てみたけど、確かにありゃあ可愛いわ。
豊かな髪にでっかいおっぱい。
一目惚れする奴が出るのも納得だね。
一目惚れした奴がこの国の将来を背負ってるのには納得してないけどな。
んー、王子と聖女のカップル誕生の話は、報告を読む限り市民の間でもなかなかに意見が割れてるっぽいなー。
孤児から王妃へのサクセスストーリーとしてみたらめっちゃロマンティックな話だから、応援している人がいんのも分かるよ。
俺だって政治とか関係なけりゃあそう思ったかもな。
だけども、意外にウチの王子って頭おかしいんちゃうって意見も多いみたいやね。
婚約自体も有名な話だったから、それを破棄してまで別の女の尻を追っかけてる訳だから。
ははは、両方正解。
聖女目線から見たらロマンティックな話さ。
王子は頭がおかしいけどってだけで。
まー…つまりは聖女様。
なーんにも悪く無かった。
聖女を自称すらしていなかったもん。
言われて恐縮するような人間性を持った、ただ善良なシスターだったんだよ。
確定情報ではなく推察があると書かれてはいたけども、王子自身が孤児である聖女とくっつく為の言い訳として御触れあそばせているのかもねって話すらある。
自作自演。
聖女と称される神に選ばれた女の子だったら、身分差を飛び越えさせることも出来るだろうと、そんな作為を感じるって。
結果!
聖女はただ優しく美しいたわわな女の人、それだけだ。
王子が一目惚れにお狂いあそばせて、様々な思惑が絡んだ婚約を一方的に破棄した事がヤバいだけ。
それを主導した毒婦なんて存在しなかった。
良かったよ、この国で俺の…あーと、出番は無さそうで。
いや、まだ分からねーか。
ボンクラ王子の親父さんがまともだとは限らねーもんなぁ。
とにかく聖女を観察した奴の感想としては、王子の求婚に困惑しているのも見てとれるし、それを自慢して回る様な人格でも無いんだってさ。
つーことは、話を広めたのも王子かー。
っていうかさ、王子。
乗り換え成功してないのに婚約破棄したのか。
男としては評価したるわ。
潔いよ。
聖女はふつーのいい女。
王妃に必要な政治力も統治能力もないけど、自分で動き回って平和を思う慈愛に満ちた教会所属の女。
しかも王子に気持ちがないなら、解決はそんなに難しい事じゃあない。
さ、方針その3。
俺の案じゃねーけども。
令嬢に押し付けるのは却下になったけれど、人助けが好きで、今でもふらふらとそこかしこに迷惑をかけながら慈善家活動をしている変わり者がいる。
そいつと一緒に旅に出させようってね。
自称神託持ち。
おまけにイケメン。
国として行動を追って監視していたらしいんだけどさ、あの勇者、心根はマジで勇者なんよ。
常識の欠如と、実力の不足以外は非の打ち所がないと思うよ、実際。
友達にだったらなりたいもん、俺も。
そんな奴だし、行動原理が近いからさ、彼の旅に着いて行けばいい。
大変だろうけどやり甲斐はあるさ。
勇者の処遇については各国で協議も進んでいて、ある程度は見て見ぬフリをして自由にさせようって話にもなってるしね。
ん?
なんでって?
なんかあった時に旗印にしやすいからだよ?
怖いよねぇ大人って。
本人は知らないけれど、国々で公認の勇者になってんだよ。
悪い事する訳じゃないし。
たまに迷惑は掛けるけど、盗賊を討伐したり、重い荷物を運んだり、おばあちゃんの話し相手になったりさ、国の手がまわらない細々した癒しに利用されているんだって。
民が安心する為の装置だねぇ。
ガス抜きを些細な税金で雇えるなら、利用しない方が為政者失格だものね。
アイドルよアイドル。
走って戦えるアイドル。
つーわけで呼び出したら、のこのことやって来てくれた。
感謝!
「あんた…王国の副団長さんだったか。困り事があって僕に助けて欲しいと。」
手紙で呼び出した勇者がやってきてくれた。
タメ口ききやがってクソガキが!こちとら貴族様やぞ。
不敬で首を飛ばしてやろうか!
なーんてね、別にいいよ。
なんか成長の過程を見ていたからか怒る気になれねー。
親心ってやつかな。
ま、助かるよ、来てくれてさ。
聖女様とご対面と行こうか。
教会には話は通してあるし、目ん玉が飛び出るくらいのお布施を届けてあるからね、問題も起きないだろう。
気が合うと思うよ、おっぱいも大きいし。
それにさ、少なくともやりたい事は合致しているから。
とっとと意気投合して旅立ってけろ。
そしたら王子も少しは落ち着くでしょう。
マトモに戻るか、首チョンパかは先にならないと分からない事だけれど。
しっかし、勇者パーティに聖女が加わるのは王様からオッケー出てる…つーか王様からの指示だけどさー。
正直俺は100%賛成ではないんよなぁ。
…後で面倒な事にならないといいけど。
影響力増すぞ?こいつら。
王様より人気者になったって知らんからな、俺は。
嫉妬すんなよ?
…はぁ、帰ろ。
3ヶ月もかかっちったよ。
色々話を通さなきゃならんかったし。
あーあ。
上手く店が回ってりゃいいなぁ。
変なことになってたらどうしよう。




