潜伏の二年間、それぞれのロジック(後編)
初めての投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
短いです。
では、参ります!!
第2部(前半・中編):『潜伏の二年間、それぞれのロジック(後編)』
4. ドラキュラ&シルフィア・ログ:不死の盾と神速の風(視点:シルフィア)
ヒュロロロロ……ッ!
世界から完全に切り離された隔離セクター【奈落の真空】。
そこは、空気のデータ(気流アセット)がほとんど存在しない、息をすることすら拒絶された死の空間だった。
「……くっ、あ、あはは……。本当に、厳しい環境だね……」
ボク――シルフィアは、激しくゼーゼーと肩を上下させながら、何とかその場に跪かずに踏み止まっていた。
二年の歳月は、ボクの身体を少しだけ大人びたシルエットへと変えていたけれど、纏う風の衣は、この大気のない空間のせいで今にも消え入りそうに薄くなっている。
神々は、風の精霊(データ気流)を司るボクから「大気」を奪うことで、その翼をもぎ取ろうとしたんだ。
「おや、もう限界かい? シルフィア」
暗闇の奥から、まるで高級ホテルのラウンジにでもいるかのように優雅な声が響いた。
ドラキュラさんだ。彼は二年前と変わらない漆黒のタキシードを身に纏い、冷徹なまでの赤い瞳でボクを見つめている。
「ドラ、キュラさん……。どうして、そんなに平気そうなの……?」
「平気なわけがないだろう。ここの大気には、神々の放った『持続消去パッチ(デッド・ポインタ)』が常に充満している。吸い込むだけで、私の肉体データは内側から細胞単位で『初期化』され続けているからね」
ドラキュラさんがフッ、と自嘲気味に笑う。その瞬間、彼の白い指先がバリバリと音を立てて灰のように崩れ落ち、消滅した。
しかし――次の瞬間、消えた指先から真紅の魔力がドクドクと溢れ出し、一瞬にして元の完璧な指先へと「再構築」された。
二年間、ドラキュラさんがこの地獄で行ってきた修練。それは、神々の消去コード(デリート)を上回る速度で、自らの肉体を魔力によって無限に再生し続けることだった。
世界のファンタジー魔力の根源と自らの血のログを同期させ、どれだけ消されても『私はここに存在する』という強固な論理を確立した、神殺しの防御魔法――【真祖の不死魔法】。
「神々がどれだけ冷酷に私たちを『消去』しようとも、私の再生がそれを1ミリ秒でも上回れば、彼らは私を傷つけることすらできない。……さぁ、シルフィア。君の風を見せてごらん」
「うん……っ!」
ボクは立ち上がった。
大気がないなら、精霊がいないなら、ボク自身の魔力で、この空間の僅かな「データの隙間」に新しい風の数式を打ち込むだけだ。
ボクは目を閉じ、耳を澄ませた。
世界の処理速度の僅かな遅れ。神々の完璧なシステムにも、必ずミリ秒単位の「呼吸の隙間」がある。ボクはその隙間に向かって、自身の全魔力を尖らせて突き放した。
キィィィィィン――ッ!
ボクの身体が、一瞬にして光の帯と化し、真空の空間を縦横無尽に駆け抜けた。
残像すら残らない。それは、世界の描画エンジン(レンダリング)がボクの移動速度に追いつけず、位置座標の更新を強制的にスキップさせてしまうほどの絶対的な速度――【神速の風魔法】。
「はぁ……はぁ……! 捉えた、よ。世界の速度を……!」
光の速度でドラキュラさんの背後に回ったボクは、手にした風の刃を突きつけた。
「素晴らしい」
ドラキュラさんは振り返り、満足そうに目を細めた。
「神々のレーダーすらも置き去りにするその神速の風。そして、あらゆる消去を無効化する私の不死の肉体。この二年間で、私たちは神の盾と矛となった。……行こう、イサナギの待つ戦場へ」
真空の暗闇に、二年の孤独を耐え抜いた二人の強い意志が、静かにロードされていた。
5. アカリ・ログ:終焉の閃光、その臨界点(視点:アカリ)
ドォォォォォォン!!!!!
全てが結晶化した死の森【隔離セクター:白銀の特異点】。
その中心で、一際激しい爆発の光が弾けた。
「……ハァ、ハァ……。まだ、まだ足りない……!」
アカリは、自身の腕から溢れ出る仄白い閃光の魔力を見つめながら、悔しそうに唇を噛み切った。
20歳を迎えた彼女の瞳には、二年前のような気弱さは一切ない。ただ、仲間を守れなかったあの日の後悔と、神々への冷徹なまでの敵意だけが、その双眸を鋭く尖らせていた。
彼女の周囲にある結晶の木々は、彼女の放った破壊の余波だけで、分子構造を破壊されて粉々に消滅している。
アカリが持つ魔力の本質は、世界のシステムが最も嫌う「過剰な破壊」。
二年前、神々の完璧なパッチの前にその光を掻い消された彼女は、この二年間、自身の魔力をただ放出するのではなく、限界まで体内で「圧縮・濃縮」する訓練を続けていた。
「神様たちの防御がどれだけ完璧でも……それを一瞬で上回る『無限大』の熱量をぶつければ、システムごとサーバーを焼き切れるはず……!」
アカリは両手を胸の前で交差させ、体内の全魔導回路を逆流させた。
身体が、パチパチと音を立てて白いノイズに包まれる。皮膚が裂け、そこから純粋なエネルギーの光が漏れ出すほどの圧倒的な臨界点。
『警告。個体名【アカリ】のエネルギー出力が、本セクターの許容容量を超過。直ちに強制シャットダウンを行います』
上空から、神々の自動防衛システムが彼女を消去しようと、無数の青い光線を降らせてくる。
「シャットダウンなんて……させない……! これが、私の二年間……みんなを、イサナギを助けるための……光だぁぁぁッッッ!!」
アカリが両手を前方へと解き放った。
「【終焉の閃光魔法:極限臨界】!!」
ドバァァァァァァァン!!!!!
放たれたのは、ビームではない。空間そのものを白い白熱で塗り潰す、絶対的な破壊の奔流だった。
神々の降らせた消去光線も、セクターを管理するシステム構築の壁も、彼女の放った「過剰な光」の前には一瞬で融解し、ただの生データへと還元されていく。
光が収まった時、前方にあった結晶の森は跡形もなく消え去り、そこには遥か彼方の空まで見渡せる、巨大な「空白のクレーター」だけが残されていた。
「……できた」
アカリは、自身の両手を静かに見つめ、その手を固く握り締めた。
「待ってて、みんな。今度は、私がその包囲網を、全部焼き尽くしてあげるから」
彼女の内に宿る閃光は、絶望の闇を切り裂く、本当の希望の火へと進化していた。
6. プロメテウス・ログ:神の火のハッキング(視点:プロメテウス)
――システム・ログ。
『創世のオーブン、基幹ファイアウォールに未知のアクセスを検知。……プロトコル:タイタン。該当データは世界の原初に封印されたはずの【神の火】です』
「フッ……。神々よ、お前たちが人間に『知恵』と『火』を奪われた日の恐怖を、もう一度思い出させてやろう」
世界の最も深い奈落、神々のソースコードの裏側に潜む【隔離セクター:虚無の奈落】。
そこに、静かに佇む一人の男がいた。プロメテウスだ。
彼の身体は、無数のコードの鎖によって空間に縛り付けられていたが、その表情には微塵の動揺もなかった。彼の二年の歳月は、この縛られた状態で、神々の最高機密である「創世の火のシステム」を内側からハッキングすることだけに費やされていた。
プロメテウスが操る魔法。それは、世界のすべてのオブジェクトを構築・燃焼させる原初のエネルギー――【神の火】。
「天幻卿ヴァルガよ。お前は世界を延命させるために、仕様を削り、人々の時間を間引いた。だが、それはただの『手抜き(妥協)』だ。真のデベロッパーなら、コードの最適化を他人の犠牲で誤魔化してはならない」
プロメテウスの瞳に、静かな、しかし決して消えない烈火が灯る。
彼の周囲に巻き付いていた神々の消去の鎖が、彼の体温(魔力)の上昇によって、ジワジワと赤く焼け爛れ、ドロドロの液体となって溶け落ちていった。
神々がどれだけ強固なセキュリティ(ファイアウォール)を敷こうとも、プロメテウスの放つ【神の火】は、そのシステムそのものの「脆弱性」を内側から焼き融かす。
「イサナギ。お前が最後に世界のシステムを再構築する時、必ず膨大なエネルギーが必要になる。その時は――僕が、この命ごと、お前に世界のすべてを書き換える『原初の火』を託そう」
プロメテウスは鎖を完全に引き千切り、暗闇の奈落から、遥か頭上にある『創世のオーブン』へと視線を向けた。
彼の背中には、神々のシステムを裏側からすべて焼き尽くす、巨大な炎の翼が静かに広がっていた。
(第2部(前半・中編):『潜伏の二年間、それぞれのロジック(後編)』・完全終了)
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新作始めます。探偵物です。よろしくお願いします。
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