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8コマ世界の不条理(お約束のラグ)

初めての投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。


では、参ります!!

第1章:8コマ世界の不条理(お約束のラグ)

「――ちょっと待ってイサナギ! さっきからあなたの歩き方、完全に『作画崩壊した格闘ゲームの待ちガイル』みたいになってるわよ!?」

地底の『旧データ廃棄迷宮レガシー・ダンジョン』へと続く、ジメジメとした暗黒の縦穴を下りきった直後。

レイラが私の腕を掴みながら、信じられないものを見るような目で悲鳴を上げた。

「あ、あはは……。ごめんレイラ。さっき動力炉から脱出する時、みんなを巻き込まないようにって、無意識に【剣スキル3:60コマ(超高解像度・タイム・オーバードライブ)】の超ブーストを全開のまま維持ホールドしちゃったじゃない? ……そのツケ(レンダリング・エラー)が、今になって一気にドロップ(一括請求)してきたみたいなんだ……」

そう、僕の脳内を流れる通常の15コマの基本グリッド。それが今や、10年前の格安低スペック端末で3D超大作ゲームを無理やり起動した時のように、ガッタガタの『8コマ(超・低フレームレート)』まで致命的に低下していた。

「イサナギ、冗談抜きで重症さ! ほら、右手を前に出してみて!」

シルフィアに言われるがまま、私が右手を前に突き出そうとすると――。

1コマ目:手は腰の位置。

2コマ目:突如、空間がパチンと飛んで、すでに手は1メートル前方に完全静止している。

「中割りのグラフィック(移動の軌跡)が1コマも存在しないわ……! 瞬間移動っていうか、ただのパラパラ漫画の失敗作よこれ!」

ノワールが呆れたように私の額をペシッと叩く。そのノワールの手の動きすら、僕の8コマの視界の中では「静止画A」から「静止画B」への不連続なワープにしか見えない。

「クク……。さらに悪いことに、少年、お前のその『8コマ状態の歩行モーション』のせいで、周囲の背景(物理演算)までバグに巻き込まれているぞ」

ドラキュラが呆れたように足元を指差した。

見れば、私が歩くたびに、地面の赤錆びた鉄板が「ズガガガガガ!」と不気味な衝突音(埋まりバグ)を立て、私のスニーカーのつま先が、地底のグラフィックの隙間にミリ単位で埋まったり浮いたりしている。

歩行速度は通常の3分の1。おまけに、1歩進むたびに「右足が左足を透過する」という、独立開発者が深夜3時に見たら卒倒するレベルの致命的な描画エラー(クリッピング)が発生していた。

「あ、アハハハ! 待て少年、そのまま動くな! 今のお前のグラフィックのまま、この我の『世界最速の風』をコンポジットしたら、一体どうなるか試してみようじゃないか!」

シルフィアが悪ノリして、私の背中に微弱な突風を当てた瞬間――。

――ピピピピピピピピピピピピピッッッ!!!!!

「うわああああっ!? 身体の当たり判定ヒットボックスが四方八方に超高速で大増殖(バグ分裂)してるゥゥゥッ!?」

私のグラフィックが、残像どころか「ポリゴンのトゲトゲ」となって空間全体にウニのように巨大膨張し、処理落ちの限界を迎えたようにその場で完全にフリーズした。

「シルフィア、何バカなことやってるのよぉぉぉっ! マスターがハングアップ(強制終了)しちゃうでしょ!?」

「す、すまん! ギャグのつもりだったんだが、予想以上に今の少年のシステム(仕様)が脆弱すぎて……!」

「プロメテウス、イサナギを回収だ」

「承知――。我がマスターを『安全アセット』として一括ホールドする」

背後に控える黒鉄の巨神プロメテウスが、その巨大な手のひらで、トゲトゲに変形したままフリーズしている私の身体をフワッと優しく持ち上げた。機神の圧倒的なルート権限(セキュリティ保護)に包まれたことで、私のポリゴンは辛うじて元の13歳の姿へとリフレッシュ(再レンダリング)された。

「……ハァ、ハァ。ありがとう、プロメテウス。……みんな、本当にごめん。マナの残量はさっきプロメテウスをレストアした時の『限界突破チャージ(200%)』がそのまま満タンで残っているんだけど……この8コマの処理落ちバグだけは、システムの内部リブートが終わるまで、どうしても治らないみたいだ」

「マナが満タンなのは不幸中の幸いね。これなら、コア・データの回復サイクル(リフレッシュレート)が最短で回るはずだわ。……逆算シミュレートしてみたけど、このまま大人しく安全なレイヤーで『休息(待機)』していれば、丸リアルタイムで『1日間』時間が経てば、通常の15コマに自動リブートされるはずよ!」

レイラが水の文字盤タイム・カウンターをパチパチと弾きながら、ホッとしたように微笑んだ。

「1日か……。よし、ギルティナをデバッグして中央動力炉の支配権は取り戻したし、ヴァルガの迎撃プログラム(アプデ)がここまで降りてくるにはまだ数時間のタイム・ラグがある。……みんな、不本意だけど――『とりあえず、今回は一度撤退(一時の安全エスケープ)だ!』」

私はプロメテウスの手のひらの上で、カクカクとした8コマの挙動で力強く親指を立て(サムズアップ)、私たちは廃棄フォルダのさらに奥、監視の目が届かないドワーフの古い物置小屋セーフティ・セクターへと、お約束の「一時戦術的撤退」を決行するのだった。

第2章:物置小屋の24時間と、カゴの超ダイエット

「システム・ログ:緊急パッチの適用および連続錬金術のペナルティにより、イサナギの【収納1(買い物カゴ)】の最大容量は、残り『10リットル』にロックされています」

「10リットルって……。ちょっとしたお出かけ用のトートバッグ(サブバッグ)サイズじゃない……」

セーフティ・セクターの古い物置小屋の床に座り込み、ノワールが私の背中のカゴを見て、今度は本気で心配そうな声を上げた。

いつもなら、世界中のありとあらゆるガラクタや超巨大な料理、果ては鉄鋼アセットまで何でも丸ごと飲み込んでいたあの万能の買い物カゴが、今は完全に「巾着袋」のようにギュッと縮こまり、内部空間がミリミリと限界の悲鳴を上げている。

「あはは……。中身を確認リストアップしてみるね。……ええと、【完全治癒薬エリクサー】が2本、レイラの予備の法衣、あとセピア大陸の市場で買った『よく分からない謎のバナナ』が3本……。うん、これで10リットル中、9.9リットルが完全に埋まってる(パンパンだ)ね!」

「ちょっと待って、その『謎のバナナ』って何よ!? そんな不要アセット、今すぐゴミデリートにポイしなさいよ!」

レイラが鋭く突っ込む。

「ダメだよレイラ! これはただのバナナじゃないんだ、セピア大陸の固有データで、食べると30秒間だけ『お尻の肉の物理防御力が5倍になる』っていう、隠れたネタアセットなんだから! いつか何かの身代わり(物理衝突)の時に役に立つかもしれないだろ!?」

「そんな一発ギャグみたいなバグアセット、一生役に立たないわよ!」

「クク……。まぁ良いではないか。カゴの中身が余っていれば、これ以上のバグで既存のアイテムが消去ロストされることはないとルール(仕様書)に書いてあったからな。……それより少年、脳内のクロック数はどうだ?」

ドラキュラがドラム缶の椅子に腰掛け、トマトジュース(代用の血)をストローで上品にすすりながら問いかける。

私は脳内のタイムシートをチェックした。

『回復プロセス:85%……90%……95%……』

「……あ! きた! キュイィィィィィンって脳の中でファンの回転音が聞こえた!」

次の瞬間、僕の視界を覆っていたあの不連続なカクつきが、視覚効果モーションブラーと共に一気に滑らかなフルカラーのストリームへと復元されていく。

1コマ、2コマと不自然に飛んでいた世界が、完璧に同期シンクロされた『通常の15コマ』へと完全リブートしたのだ!

「治った……! 手のグラフィックも、歩行モーションのクリッピング(埋まりバグ)も100%全快だ! カゴの容量はまだ20L減少(残り40L)のロック状態だけど、中身のバナナもエリクサーも無事! ――みんな、本当にお待たせ!」

私が勢いよく立ち上がり、鉄剣をシャキーンと抜刀すると、物置小屋の中に爽快な風のレンダリング効果音が響き渡った。

「さぁ、今度こそ『3度目の正直の、その先』だ! 旧データ廃棄迷宮の最深部に囚われているドワーフのゴルドンさん、そして光の小僧ルミエルを救い出しにいこう! 【ゴルドン・ルミエル救出作戦】、今度こそ本当に出撃ロードだァァァッッ!!」

「「「オオオオオオオオオオッッッ!!!」」」

プロメテウスを先頭に、僕たち6人のパーティ・アセットは、フルカラーの調律マナをこれでもかと輝かせながら、地底迷宮の真の攻略ラインへと勢いよく飛び出していった!

第3章:地底のバグ雑魚エネミーと、15コマのコンテ無双

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

廃棄迷宮の中層セクター。そこは、要塞都市バージョン2.0の開発段階で「ボツになったデザインアセット」が、不気味に壁や天井からツギハギで突き出している、カオスなグリッド空間だった。

赤錆びた歯車と白磁のセキュリティ・パネルがグチャグチャに融合した通路を走っていると、前方から、不快な電子警告音が鳴り響いた。

『――警告。不正アセットの接近を感知。……防衛プログラム:[リブラ・セキュリティ・パピヨン(Ver 2.0・雑魚)] を大量生成スポーンします』

パチパチパチパチバチバチッッッ!!!!!

前方からフェードインしてきたのは、なんと顔の部分が「天秤の形」をした、体長2メートルを超える不気味な白磁の巨大な『アブ(昆虫型エネミー)』の群れ――総勢、約50匹(大量スタック)。

彼らは羽を狂ったように羽ばたかせながら、お尻のインジェクターから、蛍光ブルーのプラズマ毒弾を容赦なく乱射ガトリングしてきた。

「うわっ、グラフィックが最高に気持ち悪いうえに、数だけは無駄にハイエンド(大量)だな!」

僕は鉄剣を構え、15コマの感覚を極限まで研ぎ澄ます。

「アハハハ! こんな重い(動きの遅い)雑魚データども、我の風の解像度フレームレートの敵じゃないよ! ――ソニック・スライサー(超音速風刃)!!」

シルフィアが先陣を切り、音速を超える風の刃を全方位に一括エクスポート(放射)した。

風の刃に触れたパピヨンどもは、「バグッ!?」「エラー!?」と不気味な悲鳴を上げながら、次々と空中ではじけ飛び、ただのポリゴンのドロップアセットへと変換されていく。

「私も負けていられないわ! ――アクア・レーザー・ストリーム!!」

レイラが蒼海石の杖を前方へ突き出すと、超高圧の水流がレーザーとなって一閃し、雑魚どもの天秤の顔面を正確に一刀両断スライスしていく。

「クク……我が夜の帳の、最高の養分ソースにしてくれよう。 ――シャドウ・ファング(影の吸血牙)!」

ドラキュラがマントを翻すと、大量の影の蝙蝠がパピヨンどものシステム内部へ直接吸血マナ・ドレインを敢行し、奴らのHPバーを秒単位で枯渇ドロップさせていく。

「オオオオオオオオッッ!! ――機神正拳プロメテウス・ストライク!!」

さらに、洗脳から解けたプロメテウスが、その巨大な黒鉄の拳に純粋な『深紅の烈火』を纏わせ、残ったパピヨンどもの集団へとストレートパンチを叩き込んだ。

――ドバガァァァァァァァァァァァンッッッッッ!!!!!

「ギャグッ!?」「仕様変更デリートォォォッ!?」

パピヨンどもは、プロメテウスの「バージョン1.0の本物の炎」による絶対デバッグを受け、爆発的な炎の波濤の中で一網打尽(一括デリート)にされ、一瞬にして全滅した。

戦闘時間、わずか15秒(225コマ)。

完璧に最適化された僕たちのパーティ・コンポジション(連携)の前には、ヴァルガの最新の雑魚プログラムなど、ただの「経験値データ」に過ぎなかった。

「ふふ、さすがは私のマスターたちね。これならこの先の四天王がどんなクソ仕様(罠)を仕掛けてきて――」

ノワールが満足げに髪をかき上げた、その瞬間だった。

キィィィィィィィィィィィン!!!!!

空間全体のグリッドが、再び不気味な『蛍光ピンクの警告色』へと一瞬で強制書き換え(オーバーライド)された。

「……あらら? 見つかっちゃったみたいだね、不要アセットのゴミクズども。私の可愛い防衛バグ(パピヨン)たちを、ずいぶんと乱暴にデバッグ(処理)してくれたじゃないか」

頭上のボツデータの天井レイヤー(隙間)から、軽薄で、同時に鳥肌が立つほど冷酷な『声』が響き渡った。

純白のきらびやかな「道化師ピエロの衣装」を纏い、顔の左半分に「天秤の仮面」を貼り付けた男。その手に握られているのは、世界のオブジェクトを自由にねじ曲げるための、巨大な万年筆型の魔導具。

『天幻卿直属・四天王』が一角、[特級仕様策定官チーフ・プランナー] ルミエル。

(……待って、ルミエル!? 光の小僧のルミエルが、なんで四天王の側にいるんだ……っ!?)

「アハハハ! 驚いたかい、イサナギ? ――そう、私はヴァルガ様より、この廃棄迷宮の『仕様変更(改悪)』を任された、新しいルミエルさ! 3年前の古いバックアップなんて、とっくに初期化フォーマットされて、今の私は完璧な『バージョン2.0仕様』としてリビルド(洗脳)されているんだよ!」

ルミエルが万年筆を虚空に走らせ、私たちの足元のグリッドへと向けて突き立てた。

『――システム強制命令。地形アセットの『超・軟質化(底なし沼バグ)』へ仕様変更。……全員一緒に、世界の一番深いゴミ箱(奈落)へ落ちちゃいなさい!』

ズブズブズブズブズブズブズブッッッッッ!!!!!

「うわああああっ!? 足元の鉄板が、お粥(泥沼)みたいにフニャフニャになって沈んでいくゥゥゥッ!?」

私が叫んだ瞬間には、僕たち6人の足元、いや、直径100メートル全体の物理演算(衝突判定)が完全に消失(無効化)し、私たちは底なしの「蛍光ピンクのバグの奈落」へと、真っ逆さまに強制落下ドロップアウトさせられ始めたのだった!

第4章:身代わりの聖女と、奇跡の即席インジェクション

「エスケープ・ゲート(緊急転移陣)――起動!!!」

落下しながら、レイラが必死に蒼海石の杖を虚空へと叩きつける。

しかし、ルミエルの『空間軟質化コード(ピンクの霧)』が、私たちの転移魔法のパケットを激しく妨害ジャミングし、魔法陣の光がチカチカと不規則にエラー点滅を起こすだけで、一向に転送の処理エクスポートが実行されない。

「ダメ……っ! 奈落の落下速度が速すぎて、座標の固定レンダリングが追いつかないわ……! 誰かが、この落下のエネルギー(物理ベクトルの第一波)をその場に引き受ける『盾(身代わり)』にならないと、全員のデータが奈落の底で破棄イレースされちゃう……っ!」

レイラがボロボロと大粒の涙を流しながら叫ぶ。

「クッ……! 我が、我がこの真祖の肉体を盾に――」

ドラキュラが前に出ようとするが、ルミエルの絶対仕様変更(ピンクの霧)に触れた瞬間、彼の漆黒の翼のポリゴンが「フニャフニャの風船」のように軟質化(ギャグ変形)してしまい、全く力が入らない。

「アハハハ! 無駄だよ、吸血鬼の王様! このレイヤーの物理ルールは、すべて私が『策定プランニング』しているんだ! 君たちの古いデータなんて、ただの消しゴムで消される運命なのさ!」

上空の安全なレイヤーから、ルミエルが万年筆を指揮棒のように振り回して高笑いする。

(終わった……。また、僕のディレクションが遅れて、全員が奈落のゴミ箱へ――)

私が絶望の1コマに脳内を支配されそうになった、その刹那。

「――いいえ、終わらせない。……何度だって、私はあなたのアシスタント(盾)になるって誓ったんだから、イサナギ!」

ドンッ!!! と、激しく背中を突き飛ばされた。

「レイラ――っ!?」

僕の目の前に躍り出たのは、金髪の法衣を限界までなびかせ、自らの全HPデータ、全マナ、そして自らの『存在オブジェクト・グラフィック』そのものを触媒にして、私たちの真下に巨大な青い水の絶対障壁を展開した、レイラだった。

「聖なる水の結界よ、落下の全エネルギーを我が肉体へと強制一括転送サクリファイス・マージして――『身代わりの聖域シールド・バースト』!!!!!」

ズガァァァァァァァァァァァァンッッッッッッッッッッッ!!!!!

奈落の底から突き上げてくる、世界を破棄するための絶対消滅エネルギー(ピンクのバグ熱線)が、正面からレイラの青い結界へと激突した。

結界の表面から、バリバリバリ!と凄まじいエラー放電が発生し、レイラの細い身体の各部位が、みるみるうちに「黒いバグのノイズ(エラー・グリッド)」で覆い尽くされていく。

「あ、あ、う、ううう……っっ!!」

レイラの美しい指先が、ドレスの裾が、ルミエルの消滅コードによってミリミリと削り取られ、彼女のHPバーが、信じられないほどの速度でゼロに向かって垂直落下ドロップしていく。

「レイラ!!! やめて、戻って、レイラ――っ!!!」

私は叫び、手を伸ばそうとするが、レイラが放つ決死の身代わりマナの暴風に阻まれて、1センチも近づくことができない。

(ノワールに続いて、今度はレイラまで……僕の目の前で、2度も同じ身代わりのデリートを許すなんて、そんな無能なディレクター(調律師)、僕は絶対に認めない……認めないぞォォォォォォォォォッッッッッ!!!)

私の脳内の15コマのグリッドが、怒りと執念で真っ赤にオーバーヒート(限界突破)する。

(どうすればいい!? カゴの中のエリクサーを直接飲ませようにも、彼女は今、奈落の消滅熱線のヒットボックス(当たり判定)のド真ん中にいるんだ! 瓶をカゴから取り出して、彼女の口元まで移動させる時間フレームなんて、1コマも残されていない!)

その時、私の脳裏に、あの緊急パッチ(下方修正)によって大幅に使い勝手が悪くなったはずの、新スキルの仕様書パッチノートが、黄金の稲妻となってフラッシュバックした。

『錬金術レベル3(緊急パッチ後):物質の構成コードを脳内で完全再現し、新規オブジェクトを画面に出力する。触媒(材料)があれば、カゴの最大容量が『20リットル』一時減少する』

(……そうだ。カゴの中にエリクサーがあるなら……その場での錬金術で、レイラの『体内(胃の中)』の座標へ、エリクサーの液体データそのものを直接『新規フェードイン(強制インジェクション)』させてやればいいんだ!!!)

パッチによってカゴの容量がさらに20Lロックされようと、そんなの知ったことか! 目の前のレイラが消滅デリートするくらいなら、カゴの容量なんて残りゼロ(限界突破)になったって構わない!

「カゴの中に残っている最後の『完全治癒薬エリクサー』の1本を――材料(触媒)として脳内エディタにセットアップ!!!」

ドクン!!! 世界が超スローモーションの15コマへと突入する。

レイラのHPバーが残り『1%』を指し、彼女のグラフィックが世界から完全に消去デリートされるまで、あとわずか『1コマ(0.01秒)』。

「特殊派生スキル――【その場での錬金術リアルタイム・インジェクション】、起動ォォォォォォォォォッッッッ精ッ!!!」

1コマ目。カゴの中のエリクサーの液体データを丸ごと複製コピペ

3コマ目。生成の『出力ターゲット座標』を、レイラの外側ではなく、彼女の肉体データの中心核――『体内(胃の内部)』へと直接指定。

6コマ目。パッチのペナルティを甘んじて受け、カゴの最大容量をさらに『20リットル』強制ロック(減少)する!

(これでカゴの空き容量は完全にゼロのロック状態(限界)……だけど、書き出し(エクスポート)速度は3倍だ! レイラの体内に、直接レンダリングしろォォォォォォッッッッッ!!!!!)

パァァァァァァァァァァァンッッッッッッッッッッ精ッ!!!!!

レイラの衣服の隙間、そして彼女の口元から、オーロラのような七色の絶対治癒の光が、内側(体内)から爆発的に溢れ出した。

『――ッ!? な、何をしたんだい、イサナギィィィッ!? 彼女の肉体データが、消滅の直前で強引に『上書き保存(100%全回復)』されているだと……っ!?』

上空のルミエルが、その天秤の仮面をガタガタと震わせて絶叫した。

レイラの体内で直接エミュレート(強制生成)されたエリクサーの神話級パワーは、消滅熱線によって削り取られていた彼女の全ポリゴンを、1コマの遅延ラグもなく、瞬時に100%完全に修復・完全復元させたのだ。

「――え? あ、私……身体が、一瞬で熱くなって……傷が……消えていく……っ!?」

レイラが驚愕に目を見開く。

「レイラ、今だ!!! みんなの手を握って!!!」

レイラが全回復したことで、彼女の『身代わりの結界』の出力も限界を超えて跳ね上がり、ルミエルの奈落消滅熱線を一瞬だけ完全にホールド(停止)した。そのわずかな『画面の空白フレーム』。

「撤退する時に――僕たちのすべてのフレームレートを、極限まで加速ブーストさせる!!!」

「システム最大出力――【剣スキル3:60コマ(超高解像度・タイム・オーバードライブ)】、起動セットアップ!!!!!」

ドクン!!!!!!!!!!

世界が、1秒間に60枚の超高密度なキーフレームへと完全同期シンクロする。

ルミエルの奈落の罠が、再び結界を破って迫ってくる1コマ、2コマ、3コマ……。そのすべての細分化されたフレームの隙間を縫うように、僕たちの緊急転移陣エスケープ・リンクの処理速度が、通常の4倍の速度で超高速レンダリング(エクスポート)されていく。

「今度こそ……全員一緒に、画面のエスケープへフェードアウトするんだぁぁぁォォォォォォッッッッッ Courrier !!!」

私が叫び終えた瞬間、僕たちの肉体は60コマの圧倒的な不連続ジャンプ(光の残光)となって、蛍光ピンクに崩壊する奈落のセクターから、完全に、そして無事に、消え去る(エスケープする)ことに成功したのだった!

第5章:リテイクへの布石と、逆転のコンテ(プロットの完成)

ザザァァァァァァ……。

再び僕たちがフェードイン(リブート)したのは、都市の最外周のさらに奥、古いドワーフの廃棄フォルダのさらに隅にある、小さな隠れ家セクターだった。

周囲には赤錆びた工具が転がり、大気は薄暗いけれど、先ほどのような絶望的なバグの気配はどこにもない。

「ハァ、ハァ、ハァ……っ! コ、コマ数が……また8コマに落ちていく……っ」

私は地面に膝をつき、激しい眩暈に襲われながらも、カカカとカクつく視界の中で真っ先にレイラの姿を探した。

隣には、傷一つない、みずみずしい金髪を輝かせた本物のレイラが、しっかりと私の手を握り返して座っていた。

「イサナギ……! 私、生きているわ。……あなたのあの『その場での錬金術』のおかげで、消滅デリートの寸前で救われたのね……っ!」

レイラが涙をボロボロとこぼしながら、私の胸へと強く飛び込んできた。

「良かった……。本当に良かった、レイラ……。誰も失わずに、戻ってこれて……本当に良かった……っ」

私は左腕で彼女の細い背中をぎゅっと抱きしめ、心の底から安堵の涙を流した。

「少年、よくやった。……あの極限の1コマの中で、聖女の体内に直接霊薬をエミュレート(強制生成)するなど、我の何千年の夜の歴史ログの中でも、見たこともない超絶エディットだったぞ」

ドラキュラが左半身のポリゴンを誇らしげに閃かせながら、私の頭をガシガシと手荒く撫でた。

「マスター、私のデータ修復のために、カゴの容量がかなり無茶なロック状態ペナルティになっているわね。大丈夫?」

ノワールが私の背中の、今や限界まで小さくフリーズしている買い物カゴを心配そうに見つめる。

現在のカゴの最大容量は、度重なる錬金術3のバグペナルティにより、一時的に『残り0リットル(完全ロック)』という、おもちゃのバケツサイズまで激しくクラッシュ(制限)されていた。

「あはは……。うん、しばらくの間、大きなアイテム(アセット)はカゴの中に収納できないし、脳内もまた8コマに落ちちゃったけれど……そんなの、みんながこうして無事に戻ってきてくれたことに比べたら、1コマ分のラグみたいなものさ!」

私は小さくなったカゴをポンと叩き、それから要塞都市のさらに地底深く、あのルミエルが待ち受ける地底迷宮の最深部を真っ直ぐに見据えた。

「あと1日。カゴの容量と、僕の脳内フレームレートが元通りにリブートするまでの24時間の間、僕たちのマナと作戦を極限まで『最適化レンダリング』する。……そして、明日。4度目の正直の突入タイムラインで――ルミエルの洗脳コードを根底からデバッグして、ゴルドンさんたちを全員救い出して、この世界の時間を3年前のあの最高のフルカラーへと『一括復元グランド・レストア』してやるんだ!」

13歳の春。世界バージョン2.0、度重なる撤退を経て、私たちは廃棄フォルダの底から、今、最高に熱いフレームレートで力強く立ち上がった。

大切な仲間たちの笑顔と、僕の脳内のハサミ(調律師の力)があれば、ヴァルガのどんな改悪仕様アップデートだって、必ず15コマの最高のハッピーエンドへと導いてみせる――その確固たる決意と共に、僕たちの飽くなき冒険は、次なる大逆転の最終決戦リベンジ・フレームへと向かって、最高にスリリングに動き出すのだった!


みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

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