スキル思い込みをぶっ壊せ
初めての投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
では、参ります!!
少年期編・日常章『要塞都市の市場詮索と、30リットルの宝探し』
第1章:串焼き屋台の「コマ間引き(時短)」と、幻の果実
「へい、いらっしゃい! 寄ってきな、美味い『岩トカゲ(ロック・リザード)のスパイス串焼き』だよ! 炭火でじっくり焼き上げてるから、噛めば噛むほど大地の旨味が溢れ出す味さ!」
威勢のいいドワーフの肉屋の親方が、もうもうと立ち上る煙の中で、大量の肉串を網の上でひっくり返していた。
「これじゃ! ワシの胃袋が求めていたのは、まさにこの泥臭い大地のマナじゃ! 親方、とりあえずそこにある串を、ワシのこの両手で持てるだけおくれ!」
ゴルドンがカウンターに銀貨を叩きつける。
「毎度あり! ……だけど、そこの爺さん、悪いが今ちょうど火力が落ちちまってな。この岩トカゲの肉は、芯まで【火】の幻素を浸透させないとガチガチに硬いまんまなんだ。完全に焼き上がるまで、あと15分は待ってもらうぜ?」
親方が困ったように、消えかかった炭火をうちわで煽ぐ。 15分。アニメーション制作で言えば、1カットのレンダリングに数時間を待たされるような、実にじれったい「タイムラグ」だ。
「15分も待てないよ。親方、ちょっとその網の『タイムライン』、僕に預けてもいいかい?」
僕は一歩前に出ると、腰の鉄剣を抜き放ち――包丁の代わりに、網の上の肉串の前に構えた。
「おいおい少年、調理場に剣を持ち出すなんて危ねぇな――」
「起動――【魔力追生・15フレーム】」
親方の制止の声が響く前に、僕の視界は15分割のグリッドへと切り替わっていた。 網の上の肉串、そしてその下に燻る炭火のマナの対流が、半透明の残像となって僕の脳内に上映される。
1コマ目。剣先から僕の微弱な魔力を、炭火の【火】の幻素へと滑り込ませる。 2コマ目。炭火のマナの結び目を、魔力の振動で「タメ」のポーズに変え、一気に熱量を解放する。 3コマ目。鉄剣の平を使って、網の上の空気を高速で『中割り(間引き)』し、熱風を肉の芯へとストレートに叩き込む。
シュバババババババッ!!!
僕の放った15コマの正確無駄ない風切り。 それは、肉を切り刻んでいるのではない。空気の流れを極限まで効率化し、15分かかる焼きの工程を、わずか『3秒(45フレーム)』へと強制短縮する、僕の【料理レベル3】を複合した特殊エディットだった。
ジュワァァァァァァァァ!!! という、猛烈な小気味よい音と共に、岩トカゲの肉から極上の黄金色の脂が弾け飛ぶ。不純な煙は一瞬で吹き飛び、そこには完璧に芯まで火が通り、ぷりぷりと柔らかそうに焼き上がった、極上のスパイス串焼きが完成していた。
「な、なな、なんだってんだぁっ!? 一瞬で肉が完璧に焼き上がっちまった……!? それに、このスパイスの焦げ目の均一さ……ワシが何十年もかけて到達した職人の焼き加減を、子供の剣の素振りが一瞬で超えちまったぞ!?」
肉屋の親方が、アゴが外れんばかりに驚いて硬直している。
「ハッハッハ! さすがは少年じゃ、仕事が早い! いただきますじゃ!」
ゴルドンは焼き立ての串焼きを一本ひったくると、豪快に口へと放り込んだ。
「――むぐ、ごくり。美味いっっ!! 硬いはずのトカゲの皮が、パリッと軽快な音を立て、中は信じられないほどジューシーじゃ! 【地】のマナが、一気にお腹の中に流れ込んでくるわい!」
「私も一本いただくわ。……あら、本当に美味しい。少年のこの『料理のカット編集』、いつ見ても見事な作画だわね」 ノワールも上品に串を齧りながら、紫紺の瞳を満足そうに細める。
「はい、レイラの分だよ。冷めないうちに食べて」 「わぁ、ありがとう、イサナギ! ……んんっ! スパイスがピリッとして、旅の疲れが一気に吹き飛んじゃう!」
僕たちは屋台の親方に多めの銀貨を支払い、驚きに震える親方に見送られながら、次の露店へと向かった。食べ歩きの楽しさは、日常のフレームを最高に豊かにしてくれる。
第2章:怪しい露店と、30リットルの「宝探し(デバッグ)」
市場の奥へと進むと、そこは古びた布の上に、出所不明のガラクタや古い魔道具が雑然と並べられた『ジャンク市』のエリアだった。 中央都市の近くということもあり、遺跡からの発掘品や、バグった魔鉱石の廃棄物が、安値で叩き売られている。
「寄ってきな、そこのお嬢ちゃんに、別嬪さん。こっちは古い魔法帝国の遺跡から出た、本物の『魔力の宝飾品』だよ。どれでも銀貨3枚でいいさ」
片目を眼帯で覆った、いかにも胡散臭い商人の男が、僕たちに向かって声をかけてきた。
レイラが、その布の上に置かれた、一つの小さな『錆びついた真鍮のブレスレット』の前で足を止めた。 「……イサナギ、これ、何だか不思議な感じがするの。マナの光が、すごく小さくて、今にも消えちゃいそうなんだけど……すごく優しい【水】の幻素を感じるわ」
レイラは聖女見習いとしての直感で、そのガラクタの中に眠る「本質」を感じ取ったようだった。
「ほう、お嬢ちゃんはお目が高い。それは古い水神の神殿の遺物さ。まぁ、今は完全にマナが抜けて、ただの錆びた鉄くず同然だけどな」 商人がニヤニヤと笑う。
僕はそのブレスレットを手に取り、僕の【収納1(買い物カゴ・30L)】の特性を使って、その『構造』を詮索してみた。
(収納1の真の力は、ただ『入れるだけ』じゃない。入れたものの『ボリューム(体積)』と『マナの衝突』を、僕の脳内で完全に3Dプレビューできることだ)
僕はブレスレットを、手のひらの上で一時的に【収納1】の仮想レイヤーへと部分格納した。 脳内のタイムシートに、ブレスレットの内部構造が透過図となって浮かび上がる。
(……なるほど。これはただマナが抜けているんじゃない。ヴァルガの放つ天のノイズによって、内部の『魔力回路の接続』が、無理やり反転させられているんだ。だから、外側の世界からは『ただの錆びた鉄くず』に見える。3Dモデルのテクスチャが反転して、真っ黒に表示されている状態だな)
バグを修正すれば、これは本来の、極めて高純度な【水】の結界魔道具へと生まれ変わる。
「親方、この錆びたブレスレットと、そっちの隅っこにある『カチカチに固まった用途不明の魔鉱石の破片』。これ、2つまとめて銀貨3枚でどうだい?」
僕は、その隣に転がっていた、重さ5キロほどの、誰も見向きもしない真っ黒な岩の破片を指差した。 その岩の破片の内部にも、僕の【収納1】のプレビューには、濃厚な【地】と【宙】のピュアなマナの核がはっきりと見えていたのだ。
「あん? そのただの重い石っころもか? けっ、物好きなガキだ。いいぜ、どうせゴミ同然だ、銀貨3枚で持っていきな!」
商人は、使えないガラクタが高く売れたとばかりに、嬉しそうに銀貨を受け取った。
「よし、取引成立だ。……【収納1】――入れるだけ!」
僕は錆びたブレスレットと、5キロの黒い岩塊を、空間の歪みへと放り込んだ。 30リットルのカゴの容量。5キロの岩塊を入れても、まだ全体の3分の1も埋まっていない。残りの容量(余白)は20リットル以上ある。
「イサナギ、それ、どうするの?」 レイラが不思議そうに顔を覗き込む。
「今から、この場所で『デバッグ(仕上げ)』をするよ。……レイラ、僕の鉄剣の柄に、君の【水】のマナを少しだけ同調させてくれるかい?」
「ええ、分かったわ!」 レイラが僕の手に自身の暖かな手を重ね、清らかな水のマナを僕の回路へと流し込む。
「起動――【剣スキル2:中割りの極意】」
15コマの世界。 僕は【収納1】の内部レイヤーを開放し、ブレスレットの『反転した魔力回路』の真ん中に、僕とレイラの合体マナの刃を正確に滑り込ませた。 力で叩き割るのではない。回路のバグの隙間(中割り)に滑り込ませて、元の正しい接続へと「反転を再反転」させるのだ。
カチッ。
僕の脳内で、システムのエラーコードが消滅する音が響いた。
「出す(ポップアップ)――!!」
空間から再び引き出されたブレスレットは、先ほどまでの錆びついた真鍮の姿から完全に一変していた。 錆は一瞬で剥がれ落ち、そこには、まるで晴天の海を切り取ったかのような、目も眩むほど美しい『蒼海石』の結晶が散りばめられた、純銀の美しいバングルへと生まれ変わっていたのだ。
周囲の【水】の幻素が、嬉しそうにブレスレットの周りでキラキラとダンスを踊る。
「う、わぁぁ……! すっごく、綺麗……! マナの光が、温かく波打ってるわ!」 レイラが両手を口に当てて感動の声を上げる。
「はい、レイラ。君が見つけてくれた『本物』の姿だよ。旅の御守りとして、持っていて」 僕はレイラの細い手首に、そのバングルを優しく嵌めてあげた。
「ありがとう、イサナギ……! 私、一生大切にするね!」 レイラは顔を真っ赤にしながら、本当に嬉しそうにバングルを抱きしめた。
それを見ていた眼帯の商人は、自分が手放したガラクタが国宝級の魔道具へと化けたことに気づき、白目を剥いてその場にひっくり返っていた。
「ハッハッハ! ざまぁないわい! 少年の目は、どんな高名な鑑定士よりも確かだからな!」 ゴルドンが豪快に笑い、ノワールも『ふふ、見事な目利きだわ』と僕の頭を優しく撫でてくれた。
第3章:30リットル(買い物カゴ)の「限界パッキング」
市場の詮索も終盤に差し掛かり、僕たちは旅の必需品である「保存食のバルク買い」を行うために、中央の穀物広場へとやってきていた。 これから中央都市への長い長い道のりが始まる。ゴルドンという大食漢が増えた以上、干し肉や大麦、乾燥野菜といった物資は、あればあるほど良い。
「へい、そこのお連れさん方! うちの特製大麦と乾燥キノコ、まとめ買いなら通常銀貨10枚のところを、今なら銀貨7枚で大袋丸ごと譲るよ! 重さは合わせておよそ30キロ、体積にすれば45リットルってところだ!」
恰幅の良い商人が、パンパンに詰まった巨大な麻袋をドン!と提示してきた。 確かに安い。品質も上等だ。……だけど、ここでもう一つの「物理的エラー」が発生する。
「45リットル……。イサナギ、私たちの【収納1】は、あと20リットルくらいしか『余白』がないわよね……?」 レイラが心配そうに僕の顔を見る。
「うむ……。流石の少年の一入れるだけ』でも、カゴのサイズそのものを超える質量は、物理的に弾かれてしまうのう。ワシが背負っていくか?」 ゴルドンが腕をまくる。
「いいえ、ゴルドンさん。背負う必要はありません。……カゴのサイズが45リットルの荷物より小さいなら、中に入れるものの『時間軸(鮮度)』と『物質の隙間(余白)』を、僕のスキルで完全に『パッキング(圧縮)』すればいいんです」
僕はニヤリと笑うと、商人に銀貨7枚を支払い、その巨大な麻袋を引き取った。
「親方、ちょっとここの日陰を借りるよ。……【収納1】――部分レイヤー展開!」
僕は30リットルのカゴの歪みを、大袋の『口』の周囲にだけ発生させた。 そして、【料理レベル3】の『食材管理エディット』を起動する。
大麦と乾燥キノコ。これらはそのまま入れれば、粒と粒の間に大量の「空気(無駄なポリゴン)」が含まれている。だから体積が45リットルにも膨れ上がってしまうのだ。 ならば、僕の15コマの魔力を使って、その食材の隙間にある空気をすべて『中割り(間引き)』し、食材の分子構造を傷つけないギリギリの密度まで「超高密度パッキング」してしまえばいい。
(前世のアニメ制作で言うなら、バラバラの素材を、劣化なしの最高画質で『一つのZIPファイル』に圧縮する作業だ!)
「いくぞ……――【魔力圧縮・マテリアル・エディット】!!」
僕の精神の中で、15コマのフレームが高速で回転する。 大袋の中の大麦の一粒一粒が、僕の魔力の圧力によって、その鮮度と旨味を完全に閉じ込めたまま、元のサイズの「3分の1」の体積へと、綺麗に整列していく。キノコの旨味成分も、大麦の表面の極小の隙間へと、パズルのように完璧にはまり込んでいく。
ジジジジジジジ……。
麻袋が、まるで魔法のようにみるみるとしぼんでいき、最終的には、元のサイズの半分以下――およそ15リットルサイズの、カチカチに引き締まった「高密度魔力食糧袋」へと姿を変えた。
「よ、よし……これなら余裕で入る! ――格納!」
空間の歪みの中に、15リットルに圧縮された大袋が、すんなりと吸い込まれていった。 30リットルのカゴの余白の中に、まだ数リットル分の余裕を残したまま、すべての物資のパッキングが完全に完了したのだ。
「な、なな、なんだあいつは……!? 45リットルの大袋を、揉んだだけで半分以下の大きさにして、空間の裂け目に仕舞い込んじまったぞ……!?」
穀物商人が、狐につままれたような顔で頭を抱えている。
「ハッハッハ! 見たか親方! これがワシらの自慢のマスター(調律師)じゃ!」 ゴルドンが自分のことのように鼻を高くする。
『ふむ。空間の体積そのものを変えるのではなく、中身の密度を編集して世界の設定に適合させるとはな。相変わらず、我の想像の枠を軽々と超えてくる少年だわ』
ノワールが美しく微笑み、僕の工夫を大いに絶賛してくれた。
物資の補給も完璧。掘り出し物のデバッグも完了。 要塞都市『グラン・ガルダ』の市場は、僕たちに最高の日常のカット(思い出)と、これからの旅を支える最高の『アセット(資材)』をもたらしてくれたのだった。
第4章:夕暮れのカフェと、中央都市へのタイムライン
市場の詮索を終える頃には、要塞都市の巨大な白亜の城壁の向こうに、真っ赤な夕日が沈みかけていた。 街のあちこちの街灯に【火】の幻素の灯りがともり、昼間の喧騒とは違う、どこか幻想的な夜の背景が広がり始めている。
僕たちは市場の片隅にある、テラス席のある小さなカフェに陣取り、冷たい果実水を飲みながら一息ついていた。
「本当に楽しい時間だったね、イサナギ」 レイラが、手首でキラキラと美しい蒼い光を放つバングルを愛おしそうに見つめながら、僕に微笑みかける。
「あぁ。街をじっくり詮索できたおかげで、中央都市へ続く道の衛兵の配置や、街全体を流れるノイズの『波形』も大体掴めた。それに、何よりみんなで美味しいものを食べられたのが最高だったよ」
僕は【収納1】の底に綺麗に収まった、15リットルの高密度食糧袋と、最初に手に入れたあの『黒い岩の破片』の感触を確かめた。 あの黒い岩の破片――あれはただの岩じゃない。今夜宿に戻ったら、ゴルドンさんの【地】の魔力を借りて、中にある『最高純度の地のコア』を引き出す予定だ。そうすれば、ゴルドンさんの大土鎚をさらに強力に『アプデ(強化エディット)』できるはずだった。
「少年、ワシは今日、お前さんと旅を続けて本当に良かったと思うたわい。こんなにワクワクする『編集(冒険)』は、地底の都にいた頃にも経験したことがないわ」 ゴルドンが果実水を豪快に飲み干し、プハァと息を吐く。
『ええ。あの支配者ヴァルガは、世界を己の思い通りに書き換えようとしている。けれど……少年の描くこの泥臭くも温かいタイムライン(世界)の方が、遥かに美しい。我は、この影の命を賭けて、最後までお前たちの美術(背景)を守り抜くと誓おう』
ノワールが紫紺の瞳を真剣に輝かせ、僕たちを見つめた。
13歳の春。 僕の魔法は15コマに戻り、収納のカゴは小さいまま。 けれど、要塞都市グラン・ガルダの市場で過ごしたこの豊かな日常のフレームは、僕たちの絆をさらに強固なものへとビルドアップしてくれた。
武器は揃った。仲間たちのグラフィック(グラフィック・実力)も完璧だ。 明日はついに、この要塞の正門を越え、あの世界の支配者ヴァルガの待つ、すべてのノイズの根源――中央都市への大決戦へと、僕たちは最高のアニメーション(旅路)を紡ぎ出すのだった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。




