門番と初めての冒険者ギルド
初めての投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
では、参ります!!
少年期編・登竜章『要塞都市の門番と、初めての冒険者ギルド』
第1章:正門の検問
グラン・ガルダの正門前。 鉄の鎧で全身を固めた、ヴァルガ直属の「中央正規兵」の門番たちが、並んでいる旅人や商人の荷物を厳しくチェックしていた。その目は冷酷で、少しでも不審な点があれば、すぐに奥の監獄へと連行していく。
「次! ……おい、そこの子供たちと……何だ、その妙な組み合わせは」
髭面の頑固そうな門番長が、僕たちを上から下まで値踏みするように睨みつけた。 僕の後ろには、身の丈ほどもある大鎚を背負ったゴルドンと、圧倒的な美女のオーラを放つノワールが立っている。どう見ても普通の旅人ではない。
「こんにちは、門番さん。僕たちは辺境のオアシスから、中央都市の学術院を目指して旅をしている、しがない志願兵(学生)です」
僕は丁寧な口調(営業スマイル)で、僕とレイラのオアシスの通行証を差し出した。
「オアシスのガキか……。それはいい。だが、後ろのその……ちんちくりんの老人と、そこの黒髪の女は何だ? 見慣れない顔だな。身分証を出せ」
門番長の手が、腰の魔力サーベルへと伸びる。周囲の空気の緊張感が一気に跳ね上がった。 ゴルドンが不快そうに大鎚の手すりに手をかけようとするのを、僕は目で制した。ここで暴れたら、ヴァルガの思うツボ(バグ認定)だ。
「彼らは、道中の渓谷で僕たちが雇った『護衛のハンター』です。エイルの街の近くで魔物の群れに襲われまして……彼らがいなければ、僕たちは今頃、魔物の胃袋の中でした。……ね、ノワールさん?」
僕は後ろのノワールに話を振った。 ノワールは一歩前に出ると、その紫紺の瞳で門番長をじっと見つめ、ふっと冷ややかな、だけど極上の笑みを浮かべた。
「ええ、その通りよ、門番の騎士様。我らはこの子たちの安全を保証するために、はるか東の荒野からついて来たの。……あいにく、道中の戦闘でギルドプレートを紛失してしまってね。今からこの街のギルドで『再発行(新規編集)』手続きを行うところなのだけれど……。まさか、グラン・ガルダの優秀な兵隊様が、未来ある子供たちを守った親切なハンターを、門前払いするなんて野蛮なことはしないわよね?」
ノワールが放つ、目に見えない【宙】の幻素の精神プレッシャー。 それは、暴威ではなく、相手の脳内のタイムラインを一時的に遅延させるような、絶対的な格の高さ(オーラ)だった。
「う、うぐ……。ま、まあ、オアシスの通行証が本物である以上、その護衛を無下に突っぱねる理由は、ない、が……」
門番長は、ノワールの美貌と、その背後から感じる「底知れない魔力の気配」に完全に気圧され、額に冷や汗を流していた。
「ですが、門番さん。お仕事の手間をかけさせてしまったお詫びに……これ、道中で手に入れた、ちょっとした『お疲れ様(差し入れ)』です。良ければ、夜番の時にでも皆さんでどうぞ」
僕は【収納1】の片隅から、キバの村で大量の『魔力の乾し肉』を極限まで凝縮して作った、あの【特製ヒール・ジャーキー(濃縮キューブ)】を数粒、門番長の手にそっと握らせた。
「あん? 何だこの干し肉の塊は……。モグ、……!? ……ッ、な、何だこれはぁっ!?」
門番長が一口齧った瞬間、その目が飛び出んばかりに見開かれた。 【料理レベル3】の効果。極限まで濃縮された肉の旨味と、薬草の【風・水】のマナが、連日の厳しい検問業務でクタクタに疲れていた門番長の肉体を、一瞬で「全回復」させたのだ。
「腰の痛みが……慢性的な寝不足の頭痛が、一瞬で吹き飛んだ……!? これは、中央の高級な聖水以上のシロモノではないか!」
「エイルの街の特産品を、僕の魔法で少し『濃縮』したものなんです。街に入ったら、すぐにギルドへ直行しますので、どうかお通しいただけますか?」
僕はニヤリと笑った。
「お、おう……! 通ってよし! ゲホン、いや、素晴らしい護衛を雇ったものだな、少年! ギルドの手続き、遅れるんじゃないぞ!」
門番長は態度を180度反転させ、嬉しそうにジャーキーを懐に仕舞いながら、僕たちに道を譲った。
「やったね、イサナギ! さすが、イサナギの料理のエンハンス効果(恩返し)は最高だわ!」 レイラが小声でパチパチと拍手する。
「ハッハッハ! 少年、飯の力で要塞の門を破るとは、お前さん、本当にいい度胸(演出)をしておるわ!」 ゴルドンも愉快そうに髭を揺らし、僕たちはついに、巨大な要塞都市『グラン・ガルダ』の石畳へと足を踏み入れたのだった。
第2章:初めての冒険者ギルド(仮)
グラン・ガルダの街並みは、エイルの街の数十倍の規模を誇っていた。 石造りの立派な建物が並び、多くの人間や亜人たちが行き交っている。しかし、街の中央に見える巨大な『ヴァルガの尖塔』からは、やはりあの不快な黒いノイズが、微かに、だけど確実に街全体の幻素のタイムラインを蝕んでいるのが見えた。
「まずは、あそこね」
ノワールが指差した先には、大きな剣と盾が交差した紋章が掲げられた、ひと際頑丈な3階建ての建物があった。 ――要塞都市グラン・ガルダ・冒険者ギルド支部。
重厚な木製の扉を押し開けると、中は熱気と、酒と、鉄の匂いで満ち溢れていた。 何十人もの大人のハンターや魔術師たちが、壁に貼られた依頼書を見つめ、あるいは酒場で大声を上げて騒いでいる。
「おいおい……妙なガキんちょと、ドワーフの爺さん……それに、とんでもねぇ上玉(美女)が入ってきたぞ」
僕たちが入場した瞬間、ギルド内の騒がしい空気が一瞬だけ止まり、無数の視線が僕たちへと集中した。特に、黒髪の美女となったノワールの姿には、並み居る荒くれ者たちが一様にゴクリと唾を呑んでいた。
「気にせず進むよ。フロント(受付)へ行こう」
僕は周囲の視線をカット(無視)し、一番奥にある、綺麗な大理石の受付カウンターへと向かった。 そこには、眼鏡をかけた、いかにも仕事が速そうなエルフの女性受付嬢・セリアさんが、書類をめくりながら僕たちを待っていた。
「いらっしゃいませ。グラン・ガルダ支部へようこそ。……オアシスの通行証をお持ちの少年少女と、そちらの……少し規格外の同行者様方ですね?」
セリアさんは眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、僕たちのマナの残光を一瞬で見抜いたようだった。さすがは要塞都市のギルド受付、エイルの街のマーサさんとはまた違う、「業界のプロ(進行管理)」のオーラがある。
「はい。こちらのゴルドンさんと、ノワールさんの冒険者登録(新規キャラクター作成)をお願いしたくて来ました」
「登録ですね、畏まりました。当ギルドは、実力主義(成果ベース)の組織です。新規登録の際は、身元保証人がいない場合、簡単な『実技試験』、あるいは登録料として一人あたり銀貨10枚を頂戴しておりますが……」
セリアさんが淡々とシステムを説明する。 銀貨20枚。バルカンさんの街で手に入れた報酬の残りで払えないことはない。だけど、これからの長い旅の予算を考えると、ここで大金を消費するのは痛い。
「実技試験なら、ワシが喜んで受けてやるぞ! ギルドの腕自慢を全員、この大鎚で叩き潰してやれば文句はなかろう!」 ゴルドンが身の丈ほどもある大土鎚をドスン!と床に置き、やる気満々で胸を張る。
「ちょっと、ゴルドン! ここでギルドの床を壊したら、賠償金(バグ修正費)で破産しちゃうわよ!」 レイラが慌てて止める。
「ふむ……。我の実力をそのまま出力すれば、この建物ごと、この街の『システム』が崩壊しかねんが……。それでも良いかしら、受付のお嬢さん?」 ノワールが妖艶に微笑みながら、指先に極小の【宙】のブラックホールのような歪みをチリチリと発生させる。
(危ない、危ない! 二人とも実力の解像度が高すぎて、初級のテスト(チュートリアル)に出したらゲームバランスが崩壊する!)
「セリアさん、待ってください。実技試験の内容を、僕が『提案』してもいいですか? 荒っぽい戦闘の代わりに……当ギルドの『未解決の技術的バグ(未達成の難関依頼)』を、僕たちの固有スキルで一つ、その場で解決してみせます。それで二人の実力の証明に代えさせていただけないでしょうか?」
僕はカウンターに身を乗り出し、セリアさんの目を真っ直ぐに見つめた。
「……面白い提案ですね。単なる武力ではなく、ギルドの利益(バグ修正)をもって実力を証明する、と。……良いでしょう。ちょうど、当ギルドの厨房と物資管理部において、数週間前から『誰も解決できない、厄介な最高難度の案件』が一つ、放置されています」
セリアさんは眼鏡をクイと上げると、カウンターの奥から、一枚の真っ黒に汚れた依頼書を引き出してきた。
第3章:ギルドのバグ(最高難度依頼)を『エディット』せよ
セリアさんが提示した依頼書の内容は、一見すると戦闘ではない、だけど職人泣かせの「最悪の嫌がらせ」だった。
『中央都市の高級貴族より委託された、最高級の【風・地】の混成魔鉱石『天風の涙(およそ50キロ)』の精製、および、その魔力を劣化させずに運搬可能な『超高濃度マナ食糧』への加工。 問題点:ヴァルガのノイズの影響により、鉱石のマナが超不規則に変異。触れるだけで周囲の食材をカチカチの石に変え、いかなる空間収納に入れても、マナが衝突して中身を木っ端微塵に爆発させるため、運搬不可能。期日は明朝まで』
「な、何じゃこれは……! 『天風の涙』といえば、ただでさえ【風】の揮発性と【地】の固着性が喧嘩しやすい、最悪にデリケートな鉱石じゃぞ! それがノイズでバグっておるなら、加工しようとした瞬間に、大爆発を起こすのがオチじゃ!」
ゴルドンが依頼書を見るなり、ドワーフの専門知識で即座に無理だと断言した。
「空間収納に入れると爆発する、か。典型的な、オブジェクトの『当たり判定の重複(衝突バグ)』だね」
僕はフッと不敵な笑みを浮かべた。 普通の空間収納は、外側の世界の空間の網目を引き伸ばして使っている。だから、ノイズでバグった超高濃度の魔力オブジェクトを入れると、外側の網目と干渉して『エラー(大爆発)』を起こす。
だけど、僕の【収納1(買い物カゴ・30L)】は、僕の精神の余白にただ『入れるだけ』。外側の世界の設定なんて、最初から一切利用していない。
「セリアさん、その『天風の涙』と、加工用の厨房をこちらへ。僕の【料理レベル3】と、僕たちのチームワークで、明朝と言わず、今からの『15分(数フレーム)』で完璧に仕上げてみせます」
「はぁ!? ガキが何を大言壮語を叩いてやがる!」 「あの依頼は、中央のAランク魔術師たちですら匙を投げた呪いの石だぞ!」
酒場にいたハンターたちが、僕の言葉を聞いて一斉に嘲笑の声を上げた。 けれど、セリアさんだけは、僕の瞳の奥にある「計算」を見抜き、静かに頷いた。
「分かりました。ギルドの裏手にある特別厨房へ案内します。……もし失敗すれば、登録はおろか、莫大な損害賠償を請求しますが……よろしいですね?」
「望むところです。……よし、チームのみんな、初の『共同編集』、行くよ!」
「うん、イサナギ!」 「おう! 少年、ワシの【地】の魔力で、そのバグ石のガワを抑え込んでやるわい!」 『我は空間のレイヤーを安定させよう。さぁ、始めなさい、調律師』
僕たちは、どよめくハンターたちを背に、ギルドの特別厨房へと向かった。
第4章:15コマの超圧縮・連携
厨房の頑丈な鉄格子の奥。 そこに鎮座していたのは、不気味な黄緑色と赤茶色のマナを不規則にパチパチと放ち、周囲の空気を歪めている、ラグビーボールほどの大きさの魔鉱石『天風の涙』だった。その近くにある調理器具は、鉱石の放つノイズによって、すべて灰色に結晶化してしまっていた。
「ひどいノイズ……! タイムラインが完全に滅茶苦茶だわ!」 レイラが杖を構えて身構える。
「よし、全員、僕の『タイムシート(指示)』通りに動いて! 1コマのズレも許されないよ!」
僕は鉄剣を引き抜き、正面に構えた。 新しく昇格した【剣スキル2:中割りの極意】、そして一瞬の超加速【加速1(フレーム・ダブリング)】。これを、料理スキルと完全に同期させる。
「ゴルドンさん、まずは鉱石の【地】の暴走を抑えて! 3コマ(0.2秒)だけ!」
「おう! ――アース・バインド!!」 ゴルドンが大土鎚を床に突き立てると、大地の健やかなマナが鉱石の周囲を包み込み、結晶化のノイズが一瞬だけピタリと停止した。
「レイラ、次の2コマで【風】の揮発成分を、僕の用意した大麦粉のボウルへ誘導して!」
「まかせて! ――ウインド・シンクロ!!」 レイラの放つ風のマナが、鉱石から漏れ出す黄緑色の純粋な風のエネルギーだけを綺麗に抽出し、まな板の上の大麦粉へと完璧に「中割り(ブレンド)」していく。
「ノワールさん、最後の1コマ、この空間全体の『オブジェクトの当たり判定(宙の幻素)』を、僕のカゴのサイズに固定して!」
『了解したわ、我らがマスター。――シャドウ・レイヤー』 ノワールの漆黒の髪がフワリと浮き上がり、厨房の周囲の空間が、一時的に外側の世界から完全に切り離された「透明なセル画(独立レイヤー)」へと変換された。
ノイズの供給源が完全に遮断され、バグった鉱石のコアが、むき出しの純粋なマナの塊となって宙に浮く。
「今だ……! 特殊派生スキル――【加速1】起動!!!」
ドクン!!! 僕の世界が30コマの超高解像度へと跳ね上がる。 スローモーションの世界の中で、僕は鉄剣を振るい、鉱石の不純物の結び目(バグの根源)を、【剣スキル2】の超精密な軌道で木っ端微塵に粉砕した。
そして、間髪入れずに【料理レベル3】の『濃縮プロセス』を発動。 粉砕された最高級の魔力成分と、レイラがブレンドした大麦粉、そして【収納1】に残っていたオアシスのリンゴの果汁を一気に大釜の中で攪拌し、僕の精神の30リットルの仮想圧力鍋(収納)へと放り込んだ。
(30コマの超加速の中で、一気に……『超圧縮・レンダリング(書き出し)』!!!)
水分を極限まで飛ばし、マナの衝突を僕の精神の余白で完全に調停する。
【加速1】の効果が切れる。 世界が元の15コマへと戻り、僕の足元に、一粒の、美しく透き通った『黄金色のマナ・マカロン』が、コロンと転がり出た。
50キロあった呪いの鉱石は、すべての魔力を劣化させることなく、わずか直径3センチの「極上の魔力菓子」へと、完璧にエディット(濃縮)されていた。
「……できた(ポップアップ)」
僕はその黄金のマカロンを手のひらに載せ、額の汗を拭いながら微笑んだ。
厨房の扉を開け、僕たちが受付カウンターへと戻ると、そこには結果を心配そうに待っていたセリアさんと、僕たちを嘲笑していたハンターたちが、今か今かと待ち構えていた。
「少年……まさか、諦めて手ぶらで戻ってきたのですか?」 セリアさんが眼鏡の奥の目を細める。
「いいえ。セリアさん、ご依頼の『天風の涙』の精製、および超高濃度マナ食糧への加工……完了しました」
僕はポケットから、あの黄金色に輝く『マナ・マカロン』を、ポンとカウンターの上に置いた。
「は……? 何ですか、その小さなお菓子は。鉱石は一体どこへ――」
セリアさんがマカロンに触れようとした、まさにその瞬間。 マカロンの内部から、かつてないほど純粋で、どこまでも澄み切った【風】と【地】の美しい幻素のハーモニー(音楽)が、ギルド全体へと放射状に広がっていった。 ギルド中のハンターたちの武器や魔道具が、そのあまりにも純度の高いマナに共鳴し、チリチリと美しい音を立てて震え始める。
「な……なな、何というマナの密度……!? 鉱石の不純物が、完全に消え去っている……! しかも、これほど高密度のエネルギーが、空間を一切歪めることなく、この小さなお菓子の中に『固定』されているなんて……!!」
セリアさんの仕事用の眼鏡が、驚愕のあまり鼻先へとズレ落ちた。 酒場のハンターたちも、その圧倒的な「奇跡の証明」の前に、ぐうの音も出ずに口をアングリと開けて固まっていた。
「これなら……いかなるマジックバッグに入れても、外側の世界と干渉して爆発することはありません。運搬も、ポケットに入れるだけで1秒で終わります」
僕はニヤリと笑い、自分の【収納1】をパチンと鳴らしてみせた。カゴの容量は30リットル。この小さなマカロン1粒なんて、容量の0.001%も使っていない。
セリアさんは震える手でマカロンを特殊な魔力天秤に載せ、その数値を確認すると、深く、深くため息をつき、それから僕たちに向かって、プロとしての最大の敬意を込めて深く頭を下げた。
「……完璧、いえ、ギルドの歴史上、最も美しい『バグ修正(依頼達成)』です。お見それしました、旅の若き調律師様」
セリアさんはすぐに奥から、二枚の、鈍い黄金色の光を放つ特製のプレートを持ってきた。
「当ギルドの規約に基づき、ゴルドン様、およびノワール様の『最高位・Bランク冒険者』としての新規登録を認め、身分証明書を発行いたします。……それと、今回の難関依頼の達成報酬として、金貨30枚をお受け取りください」
「おお! 黄金のプレートじゃ! これで大手を振って街の酒が飲めるわい!」 ゴルドンが嬉しそうにプレートを受け取り、胸に飾る。
「ふふ、ありがとう、セリアさん。これで我も、この人間の世界の正式な『登場人物』になれたわけね」 ノワールも満足そうに、美しい指先でプレートを弄んだ。
13歳の春。 魔法は15コマに戻り、収納は30リットルの買い物カゴのまま。 前途多難で、世界はバグだらけだけど――僕たちは要塞都市の門を飯の力で開き、ギルドの最高難度のバグを僕たちのチームワーク(アニメーション)で完璧に修正してみせた。
「やったね、イサナギ! これで全員分の身分証が揃ったわ! 明日はいよいよ、ヴァルガのいる中央都市へ向けて、最後の準備ね!」
レイラが僕の手を握り、嬉しそうに飛び跳ねる。
「あぁ。どんなに世界がノイズで歪んでいようとも、僕たちのカゴと、15コマの剣、そしてこの最高の仲間たちが揃っていれば……どんな困難も、最高に面白い『新カット』に変えてみせるさ」
僕は懐に増えた金貨30枚の重みを感じながら、新しく加わったゴルドン、ノワール、そして大好きなレイラと共に、活気に満ちた要塞都市の宿へと向かって、確かな1コマを歩み進めるのだった。
「ちょっと、イサナギ! 見て見て、あっちの屋台! すっごく綺麗なガラス細工の小瓶が並んでるわ!」
レイラが僕の腕を引っ張りながら、きらきらと目を輝かせて石畳の通りを指差す。
大要塞都市『グラン・ガルダ』。 冒険者ギルドでゴルドンさんとノワールさんの身分証を無事に発行してもらい、当面の軍資金となる金貨30枚を手に入れた僕たちは、張り詰めていた旅の緊張のフレームを、今は心地よく弛めていた。
中央都市への正門を潜るまでは、まだ少し時間がある。 ならば、この巨大な街を隅々まで『詮索』し、世界の支配者ヴァルガの結界の構造を調べつつ、旅の物資を補給するのが今の僕たちの最優先事項だった。
何より、オアシスを出てからというもの、生と死の境界線を彷徨うような戦いばかりだったのだ。たまにはこうして、幼馴染の女の子や、新しく増えた仲間たちと賑やかな日常のカット(シーン)を楽しむのも悪くない。
「ハッハッハ! 流石は要塞都市じゃ、活気がエイルの街とは段違いじゃな! おい少年、あっちの露店から、ワシの【地】のマナをゴリゴリと刺激する、とんでもなく美味そうな匂いが漂ってきておるぞ!」
ゴルドンが身の丈ほどもある大土鎚を背負ったまま、短い足を忙しなく動かして、道の真ん中にある大きな屋台へと突進していく。
『ふむ……人間の市場というのは、これほどまでに雑多な幻素が混ざり合っているのだな。見ているだけで、我が【宙】の認識レイヤーがパチパチと書き換わりそうだわ』
漆黒の髪をなびかせ、紫紺の瞳を面白そうに細めながら歩く美女――人間の姿に化けた伝説の幻獣ノワールも、僕の隣で異世界の文化を大いに楽しんでいるようだった。
「よし、みんな! 金貨30枚の予算もあることだし、今日はこの街の市場をじっくり回って、掘り出し物を探したり、美味しいものを食べ歩きしよう!」
僕がそう宣言すると、僕たちの小さなパーティーから、わっと弾けるような歓声が上がった。
13歳の春。 魔法は15コマに戻り、収納は30リットルの買い物カゴのまま。 だけど、工夫と仲間次第で、世界はいくらでもカラフルにエディットできる。僕たちの、要塞都市での楽しい「詮索タイム」が、ここからスタートした。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
区切りが悪くてまたまた、長めでごめんなさい




