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朝比奈玲はまだ恋をしらない  作者: あぐり りょう


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結花(さゆり)は強羅温泉の大浴場で女子会する

朝、目が覚めると隣のベッドで朝比奈が寝ていた。

こちらに背を向けて、表情は見えない


いつもと違う部屋。


そうだ。

仕事で強羅に来ていた。

昨日、面倒で行かなかった大浴場に行きたい。

端末で時間を確認する。

朝食までたっぷり時間がある。

行ける!


荷物は、昨日控え用に頂いた部屋から、朝比奈さんが持って来てくれた。


ちょっと気になっていた、高級なシャンプー&トリートメントの一回分のお試しサイズを買った。

これを使ってみよう。

楽しみが増えていく。


そうだ!姉さんも行くかもしれない。

多分、激重彼氏の鷹司氏の処にいるだろう。


そんな事を考えながら温泉セットを作る。

隣を起こさないように、ソロリと抜け出す。


廊下に出て、早足で向かう。

そして、


コン、ココン。

軽いリズムでノックする。


まだ寝ているかな?と諦めかけた時、姉さんの彼氏が出てきた。

上にシャツを羽織ったまま、ボタンは止まっていない。


胸筋を見せびらかすスタイルか、と感心した。

彼氏は不機嫌な顔で

「どうした?」

と聞いてくる。

「姉さん、起きてたら大浴場行かないかな?

って誘いに来ました」

「……」


「姉さん?」

「はーい。ちょっとだけ待って。私、荷物どうしたかしら?」

と言いながら、はっと気がついたらしい。

「どうしよう。隣にあります……」


姉さんは震えるように隣りの部屋を見る。


なんかあったな。

と思うが、気にせず言う。

「じゃあ、ちょっとお隣さんに聞いてみましょう!」


お隣のドアもコン、ココンと軽くノックする。


寝ていたら、残念だけど姉さんは留守番だ。

「はい」

すぐに葵さんが応答する。

「おはようございます。朝早くすみません。

あの、ユリ姉さんの荷物を受け取りにきました」

「あぁ、少しお待ちください」

そう言って襖の奥へ向かう。

もう一人のお姉さん、馨さんの声も聞こえる。

「おはよう。さゆりちゃん」

ひょっこり顔を出す馨さんと、

荷物を持って来てくれた葵さんに挨拶する。

「おはようございます。朝からお騒がせしました」

「良いけど、その荷物。どこか行くの?」

馨が、聞いてくる。

「はい。ウチの姉さんと大浴場に行きます。ありがとうございました」

そう言って帰ろうとした時、

「葵ちゃーん!大浴場だって。行こうよ!」

お隣さんも、参加する事になった。


ユリ姉さんを連れ出し、お隣りさんも引き連れて、

最上階にある大浴場を目指す。


泉質と眺めが自慢と書いてあった。

「楽しみですね」

と言いながら歩く。


ユリ姉さんだけ、顔を赤くしながらギクシャク動く。

だがユリ姉さんがおかしいのは、いつもの事だと納得する。


「ここ、個室露天風呂も結構広かったけど、大浴場もあるんだね」

そう言いながら馨さん達も、女湯の暖簾をくぐる。


早朝の為、他のお客さんは来ていない。

一番風呂だ。

ラッキーと思いながら、服を脱ぐ。


隣りの籠を使うユリ姉さんは、浴衣一枚で何もつけていない。


旅館の、浴衣で寝乱れないの凄い。

和装の時は、女性の日以外は

基本的にこのヒトはノーブラノーパンだ。


お隣りさん達も勢いよく脱ぐ。

馨さんも、葵さんも隠さないスタイルで、浴室を開ける。


私達も浴室に入る。


綺麗に並べてある椅子、洗面器を手に取る。


浸かる前に軽く身体を洗う。

皆隣りあって座る。


そして、

「わぁ!眺め良いですね!お湯もちょっとヌルっとして肌に良さそう」

箱根の山から見る朝陽。

「山際は、少し明かりて、紫だちたる、雲のほそく、

たなびきたるって、これかぁ…」

「うん。ちょっと時期はズレるけど、夜明けからだんだん陽が差してきて美しい」

横で馨さんが、応えてくれる。


「そう、思います。いつもは朝まで宴会だと目が眩しー!って感じしかしないですから」


「さゆりちゃんは、まだ学生さん?」

葵さんが聞いてくる。

「はい、3年生です」

「関西だと学年って『年』じゃなくて、『回』って言うのよ」

「へぇー面白い。地域によって違うんですね」

「あの、失礼な事聞くけど、就職活動はどう?どこかインターン受けてる?」

「それが、ウチの学校からだとOBが中々いなくて。

難しいんですよね」

「そう。何系?」

「中々絞り込めていけません。希望と言うよりは、入れる所探す感じかな。4年になったら説明会あるから、焦るんですけど」


学歴フィルターは仕方ない。

希望しても、最初を通過する事が難関なのだ。


馨が笑いながら、

「ウチでよかったらさ。さゆりちゃん、もうすぐ募集するインターンに来る?」


悪戯坊主のような目で見る。


「わあ。お姉さんところかぁ。本社京都ですか?東京ですか?」

「一応どっちも本社だけど、メインは京都かな」

「そうですか。ありがとうございます!」

「じゃあ、」


「でも、ごめんなさい。実力で入れない所は、多分続きません。ほら、背伸びばっかりだと足攣るじゃないですか…。自分で、なんとか頑張ります」


「うん、いいね。その考え方好きだわ」

「残念でしたね、馨様」

「葵ちゃん!振られたー」

と葵さんに抱きつく。


その手が怪しく動く。

気がしたが、考えない。

こちらをボーっと見ているユリ姉さんに近寄る。

「姉さん、今日帰りは着物でかえりますか?

襦袢変え持って来てますか?」

とコソっと聞く。

「着物で…」

と答えながら、ハッとした表情になる。


「昨日のウチに洗濯するの。忘れてた」

「どうしよう、いまから乾燥間に合うかな?」


いつもは卒のない姉さんでも、今回は負担が大きかったようで、重要な事を忘れていたようだ。


「襦袢、昨日のそのまま着てもいいよね。帰るだけだし」

と納得した顔したユリ姉さんにお隣りさんが、

申し訳無さそうに言う。


「ごめんね、襦袢。着れる状態じゃないんだ…」

オワタ。


「服は多分、姉さんのが細いから。

置き屋まで私の予備を着てもらって、私は自分の服着ればいいんですがね、問題が、一つ…」


スカートは良い。最悪ノーパンでも。

風で捲り上がるか、大開脚で転ばない限り。

問題は、

「姉さん、ブラ持ってます?」

全員が凍りついた。

「持って…。ナイ」

「デスよねー。知ってました」

私の今から着る予定のブラを姉さんに…。

だめだ。

「ブラはサイズが違うから無理ゲー」

思わず溢れた本音。


「デカイや多少小さいぐらいは、なんとかなるんですよ」

「でもね、アンダー細くて、トップが2カップぐらい違うのは、無理じゃないですか?」

そう言って姉さんの胸を掴む。


「ひゃっ」

と固まって動かない。


「アンダー、そのままで、胸、育ってませんか?」

「私、太った?」

最近美味しいご飯食べてるからねー。

と呑気に笑い始めた。


「葵ちゃん、羨ましい!」

「馨様、ダメです」

そして今度は葵がユリの胸を掴み計る


「ダメですね。我々のでも合わない」

「トップはいいですが、アンダーが違います」

「何食べて生活されているんですか?」

「最近は良いもの食べてます…」


まだ薄物の季節なので、

ブラ無しだと若い男共が死亡する未来が見える。

しかも、それはちょっと私も面白くない。


「そう言えば、最近家で怪奇現象が、あって…」

ユリ姉さんが悩ましい顔する。


色っぽい。ありがとうございます。


「どうしたの?」

面白いそうに、馨が聞く。


「じつは、ウチ。洗濯すると、下着が無くなるんです」

「下着泥棒?」

「いえ、外干しはしていなくて。ドラム式の洗濯機で」

「予約で洗濯乾燥セットして。仕事に行くと、帰ってくると畳まれていて。下着だけ無くなるんです」

「それは、持っている数が減るの?」

「いえ、増えるんです。しかも、材質も変わっていて」

堪えきれないように、葵が笑い出す。

「なんか布?の面積が減って、レースとか、花とか、リボンが、増えて」

「たまには良いんです。毎日は私、綿100%がよくて」

「ブフっ」

と馨が吹き出す。

「かっ、かたちは?」

「もちろん、深履きです」

冷えるでしょ?と小首を傾げる。


「そうだね。ひっ、冷えは女の敵だものね」

もう、笑いで息できていない。

私は姉さんに慣れている。

「姉さん、それは、もう。そのまま着ても大丈夫です。増えてるなら良い事です」

「後ね、冷蔵庫の中身も増えるの」

なにそれ。

「良いな!中身増える冷蔵庫最高。家にも欲しい!」

本音がでる。

「今度差し入れるね。キャベツ買ってくると、翌日レタスときゅうりとトマトが増えてて。カレーしようかなって野菜買うと、もうお肉が入っているの」

怖い。

と本気で言っている。


葵さんが、

「るっ瑠璃さん、ふふふ。良い子の所には、人が見ていない隙に妖精さんが現れます。有名な話です」

顔を覆いながら続ける。

「逆にちょっと減るお宅もあります。借りていく妖精さんの話」


それで納得したのか、うんうん。

頷く姉さん。


これで今までどうやって、生きてこれたのか。


その後、もうすぐ朝食の時間になるのでみんなで脱衣所に入ると……。

ユリの籠に脱いだものはなく、真新しい下着のセットと清楚なワンピースが入っていた。


困惑した顔で、こう言う。

「ね?これなの。妖精さん、ここまでついて来て大丈夫かしら…」

妖精の心配をしている。


私は、呆気に取られたが、


お隣りさんは沈黙した。

「妖精さんも、旅行します。偶々行き先が同じです……」

と葵さんは、馨さんの背中に顔を当て、ユリ姉さんに言い聞かせながら自分のセリフに咽せていた。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマーク・評価・感想をいただけると嬉しいです。

スピンオフ、景とユリ(瑠璃)の恋愛模様

「彼のたいせつな、…。」連載開始しました。こちらもどうぞよろしくお願いします

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