表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝比奈玲まだ恋をしらない  作者: あぐり りょう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/40

Very dangerous!

昼は有名クラシカルホテルで済ませた。


目的の一つである、東照宮へつづく石段を登っている最中だった。

慣れない靴に足を取られ、ユリが怪我をした。

ユリは

「大丈夫」と言い張っていた。

景が抱き上げ、拓けた場所にあるベンチに下ろし、

「ここまでだ」と宣言した。

ユリと景、二人を残し、さゆりと玲は参拝を続けることになった。

「ユリ姉さん、大丈夫かな?」

と心配そうにしたが、

「景さんが付いてます。余計な人は寄って来ない。安心しなさい」

と玲が言い、納得する。

「それはそうと。部長の事、『景さん』って言うんですね」

「あぁ、プライベートですからね。プライベートまで仕事を持ち込みたくない」

「そっか」

「キミの事も名前で呼びましょうか?」

「ざんねん。こっちは花代を貰っているんで仕事でーす」

と笑う。


鳴き龍の所では柏手を打って

「うわー。響く。耳が痛いですね」

と笑い、彫刻の細かさに感動する。


そして一度二人の元へ戻る。

「さっきより、顔色良くなりましたね!」

軽い調子で言いながら、テキパキとユリの状態を確認する。


そして、言いにくそうに、

「眠り猫、奥の院なんです。限定キーホルダー欲しいし、行ってきてもいいですか?お兄さん」


振り返って景に確認する。

「あぁ、ゆっくり行って来なさい」


それだけで通じる。


「姉さん、キーホルダーいります?」


「ありがとう。

でも他の猫はチャッピーが嫌がるから……」

少し困ったように笑って、首を振る。

「そうですか。30分で戻ります」


「オマエは?」

「俺も久しぶりに健康な運動してきます」


玲が軽く肩を回す。

そのまま二人で離れていく。

「健康な運動以外に運動ってあります?」

純粋な疑問のように聞いてくるさゆりに、

玲はニヤリと笑いながら

「オトナの運動?」

と意味あり気に答える。

「エッチー!」


甲高い声が、境内に響く。


奥の院受付で拝観料を払う。

そのまま見過ごし通り過ぎるさゆりに玲が腕を掴むそして、ちょっと上を指さし、

「さゆりちゃん、ココですよ」

「眠り猫」

「……」

ちょっとだけポカンと見上げ、

「おもったより小さい」

と呟いた。


そしてそこからまた階段が続く。

結構な段数を登る。

若いさゆりは気にしていない。

玲はもう少しジムに通う時間を作ろうかと考えるぐらいにはキツかった。


最終段を登り、参拝する。

さゆりは目当てのキーホルダーを購入する。


見晴らしは素晴らしかった。


降りてきて、時計を確認する。

予定時間より少しはやかった。

違うベンチで少し休憩しようと思っていた時、

さゆりが、

「姉さん達いない所で経費の精算いいですか?」

「あぁ、そうだな。今がいいな」

その言葉で封筒に入れた領収書類を玲に渡してくる。

中身を確認すると、納得いかない領収書がでてきた。


「さゆりちゃん。

ウチの上司は、そりゃ何だって払いますよ?」


玲は抑えた声で言う。


「でも、これは必要経費か?」

差し出された、領収書。


品代、

ランジェリー他。

結構いい値段だ。


「ラッピング代です」


即答。

迷いはない。


「いや、普通持っているものでしょう?」


朝比奈は少しだけ、視線を上げる。

先日の夜を思い出すように。


——違う。

首を振る。


「コレは、常識の範囲内を超えている」

きっぱりと。

「却下」


間を置かない。

空気が、少しだけ冷える。


「……」


さゆりは、黙る。

一瞬だけ。


それから、小さく息を吐く。


「じゃあ」

声を落とす。

「朝比奈さんは、お婆ちゃんパンツって、見たことあります?」

「……は?」

理解が、遅れる。

さゆりは暗い目でさらにこう続ける。

「多分、どんなに昂っても」


目を逸らさない。


「一瞬で、終わりますよ」

「除草剤並に枯れます」

笑う。


目だけが、笑っていない。

「それでも、要らないって言います?」


短くて、

重い、

沈黙。


「……」


朝比奈が、視線を落とす。

やっと、繋がる。

「……そういうことですか」


小さく、息を吐く。


「……承認します」


諦めたわけではない。

理解しただけだ。

それで、十分だった。


少し冷えた空気と距離。


そこへ通りかかった海外からきた観光客が近寄ってくる。


“Hey, you two. Having a good time? Japan is really fascinating. We especially enjoyed this place. You should definitely check it out too.”

「やあ、君たち。楽しい時間を過ごしてるかい?

日本は本当に魅力的だね。僕たちは特にここがすごく楽しかったよ。

君たちもぜひ行ってみるといい」


そう言って、

一枚のチラシを渡してきた。


「Very dangerous!しかし、サイコー!」


陽気に笑いながら、去っていく。


手元には、鬼怒川ラインくだりのチラシ。


水飛沫を上げながら進む小舟。

笑っている観光客達。


「コレ、すごく楽しそう」

さゆりが、素直に目を輝かせる。


「危険、らしいですよ?」

玲が、小さく笑う。


「外国人観光客が、

わざわざ“Very dangerous”って言うぐらいには」


「えぇー、逆に気になる」

チラシを覗き込みながら、楽しそうに言う。


その横で、玲は少しだけ目を細めた。

——こういう顔を、

するのか。

ふと、そんな事を思う。


時間通りに二人の元へ戻る。

「姉さん、猫。思ってたより、大分小さかった」

さゆりが、肩を竦める。

笑いが、こぼれる。


そして、一枚の紙を差し出す。

「コレ、観光客の人に貰ったんです」


雑に書かれた、案内のようなもの。


「ベリーデンジャー。しかし、最高!って。

時間があれば、行ってみたいんですが……」


視線が、景に向く。

「予定、どうです?」

「今なら、まだ間に合うでしょう」

玲が続ける。


そして、景が

「行こうか」

これで決まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ