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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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無慈悲な決定

 2人は同時に疑問を口にした。


 「水だな」「水ですね」


 隊長が可能性だけは言う。


「冬に山越えで『雪』を水の代わりにしたのは?」


「ありえますね。山賊達もソレで生き残ったと言っていたらしいですから」


「人は3日、水を飲まんと死ぬぞ」


「隊長、私はあの女児に何かあると、ほぼ確信しているのですよ。潜在的な『敵』であるとも言えます。ここで厳しく見極めなければ後悔します」


 続けて、副官から無慈悲な提案がされた。


 子供好きな隊長は凄く苦しそうな顔をしたが、最後には提案に同意した。


 そして、この『無慈悲な案件』は表沙汰に出来ないので、隊長と副官だけの秘密になる。


 2人の仕事が少しの間、滞るが、事務官に頑張ってもらおうと決めた。


 ◇◇◇


 カミラが気絶から目を覚ますと辺りは真っ暗だったが、暗闇が見えるカミラには薄っすらと室内が見えた。


 そして、部屋の中に自分とノア以外の大人が寝ていた。


 カミラは部屋が変わっていたのに気がついたけれど、トイレに行きたかったので部屋の扉を静かに開けると、真っ暗な廊下が続いていた。


 その時、後ろから声をかけられた。


「どうした? トイレか?」


 胸が飛び出しそうなほど、ドキッー! としたが、昼間に聞いた声だったので、緊張したまま声が出なかった。


 昼間の怖い男がいる。


 何も言わない、いや、言えないカミラに男は何を思ったのかカミラの手を握って歩き出した。


 男も暗闇が見えるのかと思い必死に歩くと、1つの扉を開けて「トイレ、するんだろ?」と言われてトイレの部屋の中がなぜか光った!

 眩しさに何度か瞬きすると、男がどこか面白くなさそうに扉にもたれかかっている。


 カミラはとりあえず排泄してしまおうと穴にまたがり用をたしたが、男がジッと見ている気配がして落ち着かなかった。

 いや、誰かと一緒に横で排泄するのは慣れているのだが。


 カミラは昼間に教わった通りに葉っぱで股間を清めてから穴に落として立ち上がり服を整えるとトイレを出た。


 だが、男は不思議そうにした。


「どうした? 手を洗わないのか?」


 カミラがどうしたらいいのか、なにか間違っているのかを考えている間に男は結論を出したようだ。


 男がカミラの手を引いて壁の出っ張りの上に手を出すと、なぜか水が出てきた!?


 男がカミラの両手を後ろから掴んで水出る下に両手を合わせてゴシゴシとさせると「覚えたか?」と聞いてくる。


「あ、あい」


 排泄の後は手を洗えとスズにも言われていたから理解したが、男が怖かったのでなんとか返事をすると変な声が出たが、男は納得したらしくどこからか出した布で濡れた手を拭いてくれると、また手を引かれるままにノアが寝ている部屋へと返された。


「寝れるか?」


 男が聞いてきたので「あい」と返事をして、ノアの温もりを感じていたが、眠気がこずに『箱庭』でもしようかな? と思ったところをスズの声が遮った。


 「右目、治癒魔法!」と。


 そうしてスズに言われるがままに右目に治癒魔法をかけてから気絶した。


 それを静かに男が暗闇から見ていた。


 ◇◇◇


 次にカミラが目を開けると、目の前にノアの顔があった。


「カミラ、はいせつ、いこう」


「そ、そうだね」


 2人が寝床から起き上がると、大人の男がいて驚いたが、ノアをお風呂に入れてくれた男だった。


「トイレに行きますか? 案内しますよ」


 トイレは『排泄』と覚えていたので肯定した。


「は、はい」


 昨日の怖い男よりはマシだったので、クセでノアと手を繋いで男の後ろを歩いた。

 スズが頭の中で「ノアに排泄はトイレだと教えろ」と言われたので、カミラはノアに「トイレ」を教えた。


 前を向いて歩いている男は不自然なまでの無表情のまま歩いていた。


 そして、トイレに着くと、昨日の怖い男ように扉を開けて立っていてノアとカミラが排泄するのを見た後に、カミラがノアに「ここで手を洗うんだよ」と教えると、ノアは手を洗った後にその水を飲み始めた。

 カミラもここから「水を飲んでもいいかな?」と、思っていたら、後ろからすごい勢いで引っ張られて、ノアとカミラはひっくり返りそうになったのを男に支えられた。


「そこの水を飲んではいけませんよ」


 少し背中がゾッとするような声だったので慌ててノアを庇って男を見ると、昨日のお風呂の時と違って表情が無いのを「怖い」と思って返事した。


「はい」


 カミラが手を洗うのを見届けた男は、持っていた布でノアとカミラの手を拭いてくれて、カミラは少し混乱した。


 この『風呂の男』は「怖い」男なのか「優しい」男なのか、カミラにはわからなかった。


 そして、部屋に戻ると部屋の扉は閉められて、男は室内に有る椅子を扉の横に置くとカミラ達をジッと見ていた。


 その視線が気味悪く感じて、目を逸らすと『箱庭』の倉庫からトマトを出そうとしたら、スズに「ダメ!」と怒鳴るように言われて頭がぐわんとして床に座ったのをノアが心配してなのかぴっとりと抱きついてきた。


 心の中でなぜトマトを出してはいけないのかを聞くと、私のスキルを「ノア以外には見られてはいけない」と言われた。


 『【じじい】の時はよかったのに?』

 (あれは【じじい】を部屋の外に追い出しだでしょ? 見られてないよ)

 『パンを置いてきたのに?』

 (見られてないし、この後にまた会えるかはわからないから)

 『じゃあ「風呂の男」を部屋の外に追い出したらトマトを食べていいの?』

 (少し待ってみて。昨日みたいにスープを持ってきてくれるかもしれないから)


 スズとの会話を終わらせたカミラは引っ付いているノアに「大丈夫だよ」言い聞かせてから、寝床に2人で横になった。


「カミラ、たべものは?」


「もしかしたら、スープがあるかもーー」


 と、カミラが言ったところで「風呂の男」が「食事はありませんよ」と言った。


 驚いたカミラが男を見ると、暗い感情を見せない『お兄さん』のようなような目と合って、慌てて視線から顔を逸らした。


 スズが頭の中で「この世界の大人はみんなクズかよっ!」と怒鳴っていた。

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