神とはナニか?
「隊長っ! 神とは何ですか!?」
女・アネッサが隊長室にノックをしないまま飛び込んで、勢いのままに質問をした。
少し驚いた隊長は、一緒にいた副官と事務員と固まり『神とはナニか?』という、とても漠然として、幾つもの答えや解釈がある中で、1番普通の答えを口にした。
「神とは人の心の側に常にあるものだ。それは神の恩寵『スキル』の存在が証明している」
「……お答え、もっとも、ですぅー」
隊長室の入り口で「やっと、話が通じた」と涙を浮かべるアネッサに事情を聞く、副官と隊長。
要約すると。
『子供達は神を知らない』
『食前に何故、神に感謝を捧げるのか? 食べものを食べる為になのか?』
『子供達は親がいなくて、子供を殺している大人の男から食べものを貰っていた』
『アネッサは「それが神のお恵みだ」と言ってしまった』
アネッサはめそめそして「天罰が落ちますぅ」と泣いている。
だが『この情報は有用だ』と隊長は感じていた。
幼い子供ですら悪人・犯罪者から食事を貰っていた事実に『元エイワール王国』で現在も行われている『奴隷』制度の実態がわかるのではないか? と。
「私がその子供達と話をしよう。いや、アネッサもジーニス(副官)も来なさい」
隊長と副官とアネッサは立ち上がった。
そして、その原因になった事をアネッサに聞いた。
「それで、アネッサ。子供達はお腹が空いていて、神に感謝を捧げてから、食事をさせたのかい?」
『奴隷』とは『主人』の許しなく何もできないと言う情報は回ってきている。
実態は判明していないが。
この国には『奴隷がいない』ので。
アネッサが気がついたように「あっ!」と声を出した。
隊長は少し嫌な予感がしたので、アネッサを眉を歪めて見つめた。
「子供たちの前に置いたまま、食べるのを止めさせましたぁ」
アネッサはまた泣き出しそうだ。
『骨と皮の子供達が、料理を前にして食べられないでいる』情景が浮かんできた。
可哀想すぎる。
大人たちは足を急がせた。
◇◇◇
そして、足早にたどり着いた部屋では子供達がベッドで横になっていた。
机の上を見ると『冷めたスープ』が2つ置いてあった。
アネッサは後悔で目が潤んだ。
2人はお腹を空かせて我慢をしている。
ベッドで横になって体力を温存している。
アネッサは「他国に餓死する子供いる」事実を知った気になって、骨と皮だけの、親から食事を貰った事のない、死にそうな子供達を前に料理をチラつかせておいて「食べさせなかった」事実に、罪悪感で押しつぶされそうになっていた。
「ごめんなざい〜!」
子供達が横になっているベッドの蓋に顔を伏せて、アネッサはマジ泣きした。
マジ泣きする大人を初めて見たカミラとノアは、よくわからない行動と大声に怯えて、ベッドの隅に避難した。
騒ぐ子供の側は(命が)危ないと知っていたから。
騒ぐ大人の側も(命が)危ないのか!?
無言で立っている男2人も怖い。
1人はお風呂でお世話になったが、もう1人が大きすぎて怖い。(隊長はムキムキマッチョ)
怯えるカミラの頭の中でスズが「多分、大丈夫だよー」と言っていたが「多分」の怖さをカミラは初めて知った。
「(多分)大丈夫」は「(絶対)大丈夫」ではないのだから。
実は「(絶対)大丈夫」も世間では『大丈夫じゃない』のだが、カミラがその事実を知るのは、まだまだ後である。
◇◇◇
泣いてぐずぐずとしているアネッサを放置していても子供達の腹は膨らまない。
アネッサを無視する事にした隊長は、怯えてひっついている子供2人に優しく話しかけた。
「やあ、はじめまして」
カミラは体が大きい隊長が怖かったが、情報収集の為にスズが「この男と会話しろ」と言うので、震える声を出した。
「は、はじめ、まして?」
の、意味を知らないが。
隊長は鋭く意味を汲み取った。(子供好き)
「はじめましてはね、初めて会いましたね、と言う挨拶だよ。挨拶は知っているかい?」
カミラは知っている挨拶? を言った。
「ありがとう?」
隊長はニコリと笑った。
「それは『感謝の言葉』だね。嬉しい事があった時に人に言うんだ。感謝した人がいたんだね?」
カミラは作り笑い半分、本気の笑顔半分の男が怖かった。
初めて見る生き物だ。
回らない頭でなんとか、男の言葉の意味を汲み取った。
ありがとう=感謝の言葉だと。
「うん『じじい』」
カミラの突然の暴言に隊長は驚いて目を見開いた。
「自分は子供から見て『じじい?』」かと。
「じ、じじい?」
わからない事は聞いてみることが基本だ。
カミラは懐かしの『じじい』を思い出すと怖さが和らいだ。
「ふく、くれた」
隊長は心の中でホッとした。
自分はこの子達に服をあげていない=じじいじゃない
「そうかい。よかったねぇ。ねぇ、お腹は空いてないかい?」
カミラはやっぱり聞き覚えのある言葉だと思った。
そして思い出す。
ここにきてから「お腹が空いているか」を3度も聞かれたと。
だから素直に言葉にした。
「お腹、空いてない、よ」
隊長は作り笑いの裏で「ん?」と疑問に感じた。
この子達は「お腹が空いている」はずだ、と。
隊長の長年のカンが言っていた。
「これを無視してはいけない」と。
「じゃあ、お腹はいっぱいかい?」
スズが悲鳴を上げた!
だが、悲鳴を上げる前にカミラの口を閉じさせないといけなかった。
「うん、いっぱい」
隊長は笑顔の裏で思い出した。
この子供達が赤い「ナニカ」を山裾で食べていたのを。
「ナニを、食べたんだい?」
スズの「話すな!」の声がカミラの口を閉じさせた。
すると、なんとなく口にしていた言葉が出なくなり、目の前の男から『圧』を感じた。
地下強制労働で空気を読んできただけある。
「ナニを、食べたんだい?」
頭の中で大人なスズが咄嗟に「草!」と言った。
「く、くさ」
「ドコに草があるんだい?」
スズが「カバン!」と言う。
「かばん」
隊長がベッドの横に置いてある背負いカバンを無言で開けると、空の水袋と変わったサンダルが入っているだけだった。
「草は、無いよ?」
なんだか、カミラとスズは男に心理的に追い詰められていた。




