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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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22/31

国が違うと文化も違うの

 寝て起きたら、部屋に私を散々洗った女がいた。


 スズが「会話をしろ」と言っている。

 「バカ」の私に何の会話をしろと言うのか?

 スズが会話を考えてくれるらしい。


「おはよう、ございます?」


「おはようございます。お腹は空いていませんか?」


 はて、どこかで聞いたことのある言葉だ。

 私は自分のお腹が空いているかを確認する。


 ……多分、空いている?


「空いている?」


「料理を持ってきますね」


 またどこかで聞いた言葉を言ってから女は部屋を出ていった。


「あれ?」


 起きた時に両方の目を開けていたのだけど……右目が白く見える、気がする?


 左目を閉じてみると、左目は真っ暗で、瞼を開けている右目が白く見える。


 頭の中でスズが興奮した声を出した。


 (カミラの右目が光を感じているっ! 凄いよ! 凄い!)

 『凄いの?』

 (右目が見えるようになるかもしれない!)


 ふむ。

 とりあえず、良いことのようだ。

 右目に治癒魔法をかけ続けた結果がでたようだ(スズに毎回言われて)。

 そして、なぜか、すごく体が軽い。


 (長年の汚れが取れて、血行が良くなったんだよ!)


 スズはいつも難しい話しをする。

 私がわかるように言ってほしい。


 (カミラの体から汚いのが全部取れた)


 うん、汚いのはいけないね。

 離れないとダメだから。


 (血行は、体の中にある生きる『水』だね。血だよ)


 ふむ。

 血はいつも手から出ているから知っている。


 (そして、血はずっと体の中で動いているから、川の流れのように止まらないの。わかる?)


 そうか、私の体の中は動いてるんだ。

 血が凄い勢いで流れているんだね。


 (そう。血行が良いのは、血の流れが良いって意味。流れが良いと元気になる)


 それは凄い!

 ノアの血行? も良くなった?


 (良くなった、良くなった。毎日お風呂に入ろうね。温かいお湯が体に良いんだよ)


 カミラのボコボコな顔が少し歪んだ。

 口がへの字だ。

 お風呂は『苦行』だったらしい。


 カミラはノアを見ると、いつもの見慣れた頭ではなく、スズが言っていた『ちび坊主』頭だ。

 なんとなくノアの頭を触ってみる。


 ……しょりしょり。


 左目でじっくりと近づいて頭を見ると、水の色のナニカがしょりしょりとしている。

 スズが「ノアの髪の毛だよ」と教えてくれた。


 カミラは少し衝撃を受けた!

 ノアの髪色は『茶色』だと思い込んでいたのだ!

 こんなにキレイな水の色だったとはっ!


 しょりしょり、しょりしょり、しょりしょり。


「ん? カミラ?」


 カミラがノアの頭をしょりしょりとしすぎて起きてしまったらしい。


 そしてノアも戸惑っていた。

 カミラの茶色の髪の毛と眉毛が無いのだ。

 そら疑問系にもなる。

 寝起きだし。


「うん。ノアはお腹空いた?」


「たぶん、すいた」


 カミラはおもむろにノアの服をまくって、膨らんでいたはずのお腹を見ると……お腹がへこんでいた!


 服を元に戻して、スズに聞く。

 「ノアの膨らんだお腹はどこにいったの?」と。


 (多分、トマトが栄養があって、栄養失調が改善されたんだと思うよ)

 『難しい。もっとわかりやすく』

 (トマトのおかげでノアが成長した)


 そうか、とカミラは納得した。

 トマトは偉大だ(ちょっとスズの言葉をパクった)。


 「もっと箱庭のレベルをあげなければ」とカミラが決意した時に、部屋の扉が開いて女がなにかを持って入ってきた。

 女はソレを机の上に置いた。


「カミラ、こちらに来てください。食事は椅子に座ってするものです」


 ? そんなものカミラの常識には、無いっ!


 だが、スズが「普通はそうだね」と教えてくれたので、ノアと一緒に机に近づくと、女が椅子を少し机から離して座った。


「カミラとノアも座ってください」


 どうやら女のマネをすればいいようだ。

 カミラはノアの顔を見た。


「ノア、座れる?」


「やってみる」


 カミラより小さなノアは、椅子を引っ張ってから足を座面に引っ掛けて登り、見事に椅子に座ってみせた。

 カミラも挑戦してみる。

 椅子を引っ張って、座面に足で乗る。


 カミラは立派に椅子の上に立った。


 女は冷静にカミラに注意する。


「カミラ、椅子に座るんですよ。わかりますか? できますか?」


 カミラは女を見てからノアを見た。

 そして、チラチラと2人を見ながら体操座りになってから下に足を垂らした。


「まあ、いいでしょう。食事をする時は必ず椅子に座ってください」


 (食事とは食べる事。椅子に座るのは普通のこと)


 スズがいつもように教えてくれる。

 カミラがノアを見ると、ノアは女の言葉だけでわかったようだ。


 女がカミラとノアの前にうつわとスプーンを置いてくれた。

 カミラとノアがスープと思われるものに手を伸ばした時に、女に止められた。

 食べてはいけないのか?


「人は食事をする前に挨拶をします。この世の神に感謝を捧げてから、食べ始めます」


 スズ、難しいからわかるように教えて。


 (とりあえず食べものを食べる前には決まった言葉を口にするって覚えて)


 理解したカミラはノアに聞いた。


「ノア、意味はわかった?」


 ノアは少し困惑した表情だ。


「……わからない」


「あのね、食べものを食べる前に、決まった言葉を口にするらしいよ」


 ものすっごくスズの受け売りだが、それでノアは納得したらしい。


 だが、子育てをした事のない女は衝撃を受けていた。


 「そんなに噛み砕いて言わないと理解できないのか!?」と。


 ここから、女の子育てが始まった!


 かもしれない。

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