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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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11/12

カミラがいなくなるのは、ノアはいやだ

 しばらく歩くと道幅が大きくなっている事に気がついたカミラは、出来るだけ道の端を歩いて進んだ。


 物凄い砂の匂いがして乾燥している。

 轍の後で草も生えていないようだ。


 道の脇にある草が少し萎れていたが、ノアと2人で隠れて、カミラはジョウロを出してノアに水分補給をさせてから自分もたらふく水を飲んだ。


 2人共、ホッと息を吐いて、カミラが取り出したパンをゆっくりと味わいながら食べ始めた。

 パンをこんなに穏やかな気持ちで食べるのは初めてだ。


 基本的に静かな2人は、朝からの騒がしさに気疲れしているだけで、少し現実逃避をしていたのだが。


 少し気力が回復したので、排泄をしてから道に出て、2人で手を繋いで歩き始めた。


 いつもより少し緊張しながら。


 2人で黙々と歩き続けると、太陽が高く上がり昼を知らせてきたので、大豆を食べる為に道の脇にある草むらの中に入り、水分補給をして倉庫から大豆を出してノアと分け合い食べ始めた。


 もぐもぐとゆっくりと大豆を噛み締めていると、嫌な音が聞こえてきて、咄嗟に立ち上がり、ノアを引きずるように草の奥にある森に近づき、ノアを座らせてからその上に覆い被さった。


 すると、直ぐ後ろで砂埃が、ブワッと舞い上がった!


 下にいる小さなノアをぎゅっと抱きしめて、砂を被らないようにしていると、馬車の音は遠ざかっていった。


 スズがカミラに話しかけた。


 (もしかしたら、この先に『大きな街』があるのかもしれない。昼間に歩くと人に会うかもしれない。どうする? 夜に歩く?)

 『大きな街、ってなに?』


 スズは悩んでから話し出した。


 (多分、村が10個入るぐらいの人の多いところ)

 『はいりたく、ない!』


 珍しく、強い口調でカミラが心で叫んだ。


 (夜に頑張って歩ける?)


 カミラは、ノアから離れて、向かい合うように座った。

 ノアは表情の無い顔だが、スズの険しい顔には少し困惑したように見えた。


「ノア、ここからさきには、人がいっぱいいる」


 カミラは真面目な顔をしているつもりだが、デコボコの表情のわからない顔だ。

 片目だけが強い光を宿している。


「うん」


 ノアが返事をする。


「ノア、は、人にあいたい?」


「よく、わからない」


 本当にノアは理解していない顔だ。

 もともとノアは人を怖がってはいない。

 怖がっていたらカミラについてこなかっただろう。

 人を疑ってもいない。


 カミラは自分の主観でノアに話しかける。


「私を殴る人が、いるかも、しれない」


 ノアは「それは、いやだな」と思った。

 ノアは幼すぎて心が成長していないから、人の美醜が気にならない。

 気にしていたら「化け物」と言われた顔を持つカミラと一緒に行動などしていない。


 スズはカミラの味方だ。

 ちょっとだけアドバイスする。


「私の、手? みたいに、ひどく? する、人がいる、かも? しれない」


 「はい、そこでノアに手を見せてー」とスズが言った。

 カミラの溶けて指の第一関節が無い指を。


 そこで初めて気がついたようにノアが自分の手を見た後に、カミラの手と見比べて、カミラの手と自分の手を横に並べる。

 若干、ノアの手が大きい。

 カミラの手は全体的に、薬品のせいで溶けているので。


「ノア、の、手? が、おかしい?」


 人より自分の方がおかしいと思うのは普通である。

 幼いノアでは普通だ。


 カミラは否定する。


「ノアは、ふつう。私の手がおかしい」


 そこで初めてノアがショックを受けた顔をした。

 普通ではなかった「かあちゃん」がいなくなったのを思い出したのだ。


「カミラ、が、いなくなる?」


 ノアは実はカミラが大好きだった。

 『血の繋がった他人』ではなく『かあちゃん』との関係になりたかった。

 なれている、と、思っていた。

 が「なんかあやしい」と思いだした。


「こわい、人に、見つかると、そうなる、かも、しれない」


 ノアはキリッとした顔をした。

 ノアが初めて「カミラを、まもる」と決意した瞬間だった。


「どうしたら、見つからない?」


「夜、に、歩く」


 カミラが他人に見つかりたくなかっただけだが。

 ノアは「夜に歩けば、カミラと一緒にいられる」と解釈した。


「うん。夜に歩くよ」


 少しすれ違いながらも、2人の意見は一致した。


 そして、スズに言われるがままに、森の中に入り、馬車の砂埃が入ってこない場所へと移動してからノアと横になり、カミラにノアが正面からしっかりと抱きついてきた。


 ノアより大きなカミラはノアを包み込むように優しく抱き寄せて眠ろうとしたが、頭の中にスズの「治癒魔法を右目にかける!」と言う言葉が響いて、右目に治癒魔法をかけると、やっぱり目の奥がウズウズと動く感じがした後に、コテンと意識を失った。


 ノアはカミラが寝ても、カミラの匂いがする脇に鼻を近づけて、思う存分に匂いを嗅ぐと安心して眠りについた。


 カミラもノアもまだまだ栄養失調なので、たくさん寝れるのである。


 スズは真っ暗闇なカミラの中で「街までの距離はどれくらいか?」を考えていた。

 「小さい2人が一晩で人の領域から見つからずに歩き続けられるのか?」と。


 とにかくやらねばならないが、道は轍でデコボコ道だし、カミラは夜目が効くけれど、ノアに無理はさせられない。


 全ては寝て起きてからのことだが。

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