人里? こわい
朝食をした後は休憩の時間に『箱庭』をしなくては『倉庫』の容量が無いので、食べるとすぐになくなってしまう。
裏技的に「生産工場」に完成品が6品だけストックしておけるのだが、生産ができなくなるので結局は倉庫に仕舞う運命だ。
根が「バカ」で「真面目」なカミラだから『倉庫』を大きくする為にあまり儲からない麦の生産を頑張って、やっと『倉庫拡張アイテム』を手に入れて、倉庫の容量を『10』増やした。
これが、カミラが感じた初めての『達成感!』だったかもしれない。
子供は成長する生き物なのだ。
ちょっとした「化け物顔」でいい気持ちに包まれていると、お休みしていたノアがカミラを覗き込んできた。
今日は、よくよくノアと顔が近くなるものである。
「あるく?」
ノアは歩きたいようである。
「歩こうか」
2人は立ち上がり、手をしっかりと繋いでから道をゆっくりと歩き始めた。
今日は歩き初めて直ぐに馬車が遠くに見えたので、横にある草むらに2人で飛び込んで身を固くした。
馬車の近づいてくる音が大きくなって、砂埃を立てて2人の後ろを通り過ぎると、どんどんと馬車の音が遠くなっていった。
土が舞っているので、2人共スズに言われた通りに口に手を当てて土埃を遮っている。
目をキョロキョロと動かして、地面に土が落ちきると、2人共立ち上がり、カミラはスズに言われるがままにジョウロを出して手を洗い、水分補給をしっかりとした。
「もういらない」と思えば不思議にもジョウロは一瞬で消える。
まあ、もう慣れたが。
そして道を見て、誰もいないとわかると、カミラとノアは手を繋いで歩き出した。
頭の中でスズの声が聞こえる。
(人の住んでいる場所が近いかも)
カミラの胸がイヤな感じに高鳴った。
人がいる場所にはいい思い出が一つもない。
『ひとに、あいたく、ない』
スズはカミラの思いを汲み取った。
(じゃあ、夜にこっそりと歩こうか?)
『うん』
ノアの意見は聞かずに予定が決まった。
カミラの夜目が効くから出来る作戦である。
カミラの目に遠くで土埃が風に吹かれて舞い上がるのを見たが、馬車はこちら側には来なかった。
スズがカミラに教えてくれる。
(多分、村か町があると思う)
カミラは「村」はわかったが「まち」は知らなかった。
カミラはノアの手を強く握って足を止めた。
「大豆を食べよう」
「うん」
2人は道の脇の草むらに入り、水分補給をしてから大豆を食べてお腹をいっぱいにした。
(今日の夜は寝れないから、今、右目に治癒魔法をかけて)
スズに言われた通りにカミラは右目に治癒魔法をかけると、目の奥がムズムズとして動く感じがして口に力を入れると、フッと体の力が抜けて横に倒れて気絶した。
魔力枯渇だ。
ノアはいきなり横になったカミラの体温を確かめてから、カミラにぴっとりとひっついて、自らも寝た。
2人共、昼間の仮眠はバッチリである。
◇◇◇
2人は夕方に目が覚めたので排泄を行い、少し離れた場所の草の中に落ち着いて水分補給をすると、倉庫からパンを出して2人でがっついて食べ始めた。
パンを食べ終わって『箱庭』をしようとしたところで、目の前を馬車が凄い勢いで通り過ぎていった!
砂埃が凄くて、カミラとノアは2人で咳とくしゃみを盛大にした。
ちょうど日が暮れたので、砂埃を2人で払ってから、カミラはノアの右手をしっかりと握って歩き出した。
ノアは夜目が効くわけではないので、デコボコの道に足を少し引きずりながらも、昼間と同じゆっくりとした速さで歩くカミラと一緒に行く為にしっかりと右手を握った。
少し曲がりくねった道を抜けると、目の前の木々がなくなり、パッと開けた土地に出た。
左手側が開けていて、カミラの目には建物も見えるので緊張して歩き続けて、長く思える時の中、息を潜めて歩き続けると人の話し声が聞こえて、ぎくっと心臓が跳ねたが、目の前の道だけを見て歩き続けて、やっと木々の間の道に入ってホッとしたが、明日も人に見つからないように行くには、人里離れた場所まで行かなければいけない。
なんとか距離を歩き、疲れて脇の草むらに入ってから身を横にした。
ノアも一緒に。
ノアは暗闇を歩き続けて、カミラと繋いでいる手だけが頼りだったから、カミラに抱きしめられて、ホッとして、意識を失うように眠りについた。
カミラも気疲れですぐ寝ようとしたが、スズに「右目に治癒魔法!」と言われて、治癒魔法を右目にかけると、奥の方がもにょもにょと動く感じがしてから、気絶した。
スズは真っ暗闇で「よくできました」と手をぽんぽんとしようとして、手が無い事に気がつき、しょんぼりとした。
◇◇◇
カミラは大きな馬車の音で目が覚めた。
腕の中が温かいなぁと思ったら、ノアがカミラの胸元に顔を押し付けていた。
珍しいと思ったら、ものすごく空気が悪くて、砂埃に目が痛くなったので目を閉じて呼吸を浅くした。
昨日、通り過ぎた村? から馬車がたくさん出発しているようだった。
馬車の音と砂埃が落ち着いて静かになると、2人はゆっくりと起き上がって、カミラはジョウロを取り出して、2人で目を洗い、ついでに顔も洗って、口の中もすすいだ。
カミラが、サラリと道の左右を見ると、静かなもので、ノアの右手をしっかりと掴んでから道を歩き始めた。




