15-1<卯早美と湊>
「それで、何があったのにゃ」
開口一番そう聞いて来るのは猫柳である。なぜこういった俺と卯早美の関係についてはこれほどまでに勘が働くのか甚だ疑問である。
「二人の関係だからな、黙って向こう行ってろ」
「なんで卯早美ちゃんと同じこと言うのにゃ~」
あれ以降、俺と卯早美の関係は着かず離れず一定の距離を保ちながらお互い関わり合わないようになった。それがお互いのためだと思ったからだ。
「でもにゃ、何があったのか知らないけど、卯早美ちゃんも湊ちゃんも、結局は同じこと考えていて同じ言動をしているのにゃ。これ以上気が合う仲がいるのか今一度考えてみるといいのにゃ」
確かに卯早美もこっちに接触をしてくることはない。そう考えると同じ考えを持てる者同士かもしれない。だけどこればかりはどうしようもないのである。
・・・そしてそんな状況が続いたある日、俺は何者かに拉致された。
・・・・・
その日、深夜に突然探偵事務所の扉が激しく叩かれ俺がそれに対応しようと扉を開けた瞬間、黒い覆面の奴らは俺を引きずり倒して手錠をかけ、頭から何か袋を被せたのである。
現時点でこんなことをやる必要のある者と言えば卯早美以外には思い当たらないのだが、はっきり言ってスマートさがない。卯早美がここまでやるぐらいならその場で問い詰めるか、一撃で俺をノックアウトして連れていくだろう。
それから俺はおそらく自動車のトランクに入れられるが、奴らが話し合う言語は日本語ではなく英語である。とりあえず俺は奴らの目的が分かるまで事態を静観することにする。
そして何時間走ったか、車が止まってエンジンが切られるとトランクから出された俺は埃っぽいところへと場所を移される。すると、音は小さいがいつもは寝過ごして見ていない朝のニュースが聞こえてきた。
かろうじて聞こえてくるニュースを聞けば、警察署の目の前にある探偵事務所が爆発炎上したとのことであり、どうやら俺の探偵事務所のことのようである。
それにしてもここまで来てまだ奴らの目的が分からない。状況的にここはそこそこ広い空間で俺を拉致した奴らはまだ俺と同じ空間にいることしかわからない。だが何時間立ったか、ずっと続いていた奴らの話声が止まったかと思うと聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「来たわよ」
「待っていた。でもその前に武器を預かろう」
その声は間違いなく卯早美の声である。そしてもう一人の声は俺を拉致した奴の声だが、どうやらこちらも女の声である。
「その前に顔を見せなさい」
卯早美のその言葉で頭から被されていた袋が取られて、俺は自分の置かれている状況がようやく明らかになる。元工場だろうか、ここは何もない広い空間であり壊れた壁から見える外の風景は森の中といったところだ。そして俺の目の前には外国人の女が一人と男が二人いて、さらにその先には卯早美とその背後を陣取るように外国人の男が二人いる。
それから卯早美が俺のことを確認すると二人の男たちが卯早美から拳銃と警察手帳、手錠を取り上げ、白い袋のようなものを卯早美の頭から被せるように着せるとその袋についているベルトを締める。どうやらあれは拘束衣のようで卯早美はそのまま俺のすぐ隣へと転がされる。
「もうこれでいいでしょう、こっちの男は開放しなさい」
「いや、ここまで来たんだこの男にも一緒に死んでもらう」
卯早美の言葉に女はニヤリと笑ってそう言った。復讐とはいったい何のことなのかわからないが、あまり好ましくない状況のようである。だが、それに卯早美はこの状況にも関わらず気丈に言ってのける。
「復讐?自業自得でしょう」
「黙れ!」
先ほどまで冷酷に卯早美を見下ろしていた女は急に豹変して卯早美のことを蹴りつける。卯早美はそれでも気丈に女を睨みつけるが、女は次に俺の前に立ってまるで品定めをするように俺のことを見下ろしてきたのである。




