14-2<推理小説>
若干の殺気を放つ猫柳を前に俺は落ち着き払って口を開く。
「どうした。それにしても事件が解決してよかったな。あれなら卯早美の言っていた通り有罪にできるかもな」
「そうにゃ、その話にゃ。どうやったら研究者が数年かけて明らかにすることができたトリックを、湊ちゃんが話を聞いたその場で明らかにできるのにゃ」
「偶然だな。ひねくれた事件には俺みたいなひねくれた探偵のあてずっぽうの推理が当たるんだろう」
まさか前世のおかげで知ってますとは口が裂けても言えたものではない。
「それにしても卯早美はどうしたんだ?」
「卯早美ちゃんは関係ないのにゃ。これはにゃあの問題にゃ」
俺と仲のいい卯早美に気を使って一人で問い詰めようということなのかもしれないが、猫柳が気づくぐらいだったら卯早美だって気づいている。そうなると卯早美の動きがない方がこれからを考えると少し怖い。
「それで、どうなのにゃ」
なかなか困ったことにはなったが、まだ言い訳ができないわけでもない。それこそ猫柳ぐらいであれば言いくるめるぐらいのブツがあるにはあるのだ。
「仕方ないな。とりあえず言っとくが、あれが分かったのは偶然だぞ。想像でものを言ったら当たっただけだ」
「三人周りで死んでて全員偶然で死んだと言っているぐらい無理があるのにゃ」
猫柳はそういうが、俺はそんな猫柳になん十冊ものノートの束を渡してやる。
「なんにゃ、これは」
「とりあえず読んでみろ」
猫柳に渡したノート、それには俺が前世で記憶した実際に起こった事件や推理小説や漫画・アニメで使われたトリックなどが書かれている。
そして一通り目を通した猫柳は未だ警戒したまま俺のことを見る。まあ、殺人の計画書みたいなのがノートにびっしり書かれていればそりゃあそうなる。
「これは、一体どういうことにゃ」
「以前から推理小説を書くのが趣味でな、ちょうど今回起きたような毒殺事件を書こうと思ってたところなんだ。今までに何冊か本を出してもいるぞ」
前世の趣味を失った俺は、探偵業の合間にその趣味で得た知識を基にして何冊もの推理小説を書いていた。収入を考えればどっちが本業かわからないほどである。だが、それでも猫柳の警戒の目は解かれない。しかし、そこへ俺は猫柳をさらに押していく。
「斎藤大輔って聞いたことないか?」
「知っては、いるのにゃ」
元の世界での俺の本名、こちらの世界では俺が書く小説のペンネーム。
当然のことながら俺が書く推理小説の大半は目新しいものが多い。それもそのはず、元の世界であればこれから先の時代に起こる事件や誰かが書くトリックを今の時代に俺が書いているのだ。
そんなこともあり作家としての俺はそれなりに存在を知られている。しかし探偵という仕事の傍ら顔を出さないこともあり俺がその作家だと知っているものは出版社の者以外には存在しないのである。
ここまで来ると流石の猫柳も肩を楽にして、さっきまで出ていた若干の殺気も消え去る。何とか言いくるめることができたようでこれでこの件は解決としていいだろう。
「それで、答えにならないか」
「とりあえず、今日のところはこれで帰るのにゃ」
刑事としては俺の言うことが本当かどうかの裏付け作業に入るといったところだろう。あと俺がやることとしては、出版社の連中が猫柳の警察手帳の前にどこまで俺のことを明かしてくれるかわからないので猫柳が来たら協力するように電話するだけである。




