2 汽車ぽっぽの道中
こういうシーンって大事だと思うのです。短いですが、翌日10時ごろには、すこしながめのバトルシーンを投稿予定
首都アトラスへは汽車でいく。大戦時代になんとか生き残ったレールと車両を修復して、石炭とアルマをエネルギーとして動いている。この車両のどこかにもいくつか『木符』が備え付けられているという話で、なんとも便利な道具なわけだ。
ゆったりとした汽車の旅は山を越えて田園風景の流れる田舎から観光旅行に最適な滝や谷や白い山々、色とりどりの草花、大地――――なんて楽しい景色が広がっているというのに、その窓の外側を見ることはかなわない。
そう。見ようとすればその瞬間に、首をグッ!っと掴まれてガッ!っと引き戻されちゃうのである。首痛い。
「あ! 滝だよ! すごいすごい!」
同車両に乗り合わせた子どもの嬉々とした声に「えーほんとにー? すごーい」と思わず2,3席離れた座席から声を返してみようとするもかなわない。やはり首を掴まれた。
「集中、です」
「ふぁい」
さきほどから声に怒気と威圧がこもっている。
何度か繰り返した茶番のようなやり取りのはずが本気モードのお怒りである。おそろしや。
それというのも出発前に貴族の家族と親子ゲンカをかましてきたことが発端らしく、当たらないでほしいなーとは思うところであるのだが、実のところ確かにこの勉強は己のためでもあるゆえに一応は感謝してるのである。
うん。感謝してるよ。勉強はしないけど。……だめか。だめですね。はい集中します睨まないでごめんなさい。
ちらりと机に並べられた『世界の歴史』に眼を通す。陰と陽。カルマとアルマ。そしてカルマ兵器の暴走による国の滅亡。それから始まる内乱と、血なまぐさい話が満載であるが、これが我らが世界の内情である。いまでこそ平和であるが、遠くの景色には戦争の爪痕が色濃く残るし、ほかの大陸なんてもっとひどい有様だと聞く。『ライブラ』からですら見れないらしいし、そうとうやばいのでは。
そんな汽車での勉強会を終えて、数時間の旅が終わる。
首都、アトラス。
世界を復興させるために設立された『世界再生協会』。そのなかに作られた組織『錬成師協会』の年に一度の試験を受けるため、彼女たちは降り立った。
「アトラスー。アトラスー。お降りの際は〜、荷物のおとり忘れをなさらぬように〜。……ん? お客さん、首あかいよ? 大丈夫かい?」
「……カルマとは……であり……木符で……御大樹を……うえっっぷ」
「ほら、はやく降りて! あ、大丈夫ですわ。お気遣い感謝いたします」
「あ、ああ。いってらっしゃい」
ぶつぶつと死んだ目のままに歩く褐色の少女に恐れつつ、車掌は乗客を見送った。




