21 せつめい の ターン !
ちょっと説明長すぎる気もしますがオトモください。面倒だという意見があれば別途で『説明欄』の章でも書きます
「ニホン。異世界。……ピンとこない」
「外国では、ありませんのよね」
うんうん。と困惑するのも理解できるとアスカが頷いた。伸ばしっぱなしでボサボサの赤い髪の毛が床をなぞる。おそらくは長いあいだ切っていないのだろう。
大きな眼は鋭く、端正な顔つき。顔もスタイルも良いのにだらしがないなという第一印象であった。
「違うわね。けど似て非なるモノなだけでそういう考え方でいまは良いと思うわ。簡単に説明するとね、あたしは『制約』に違反することはできない。例えばクノール村に行ったりすることができない。だけどこのラボにいて星の危機を知って、なにかできることがないかを考えた。その結果が、ほかの世界の人間に代わりに行ってもらうこと」
「なおさらピンと来ない……」
「そもそもここに来てから奇天烈なことが起こりすぎて、大戦で文明のほとんどが失われたと言われているのに空の彼方にこのような場所があるだなんて……」
アリシアはそう言って椅子の下に手を回す。やはりそこにツリガネもなければ、透明な台もない。完全に空中浮遊をしている椅子だった。そしてそんなものは見たことも聞いたこともない。
「この施設については、正直あたしも説明できかねるわ」
「『制約』だから?」
「ぶっぶー」
そう言ってバツじるしを指で作った。
「あたしね。記憶がないの」
アスカの言葉に、カノンが頭を抱えた。
「いよいよこんがらがってきたからもういっそ簡単に紙にまとめてほしい……」
「あら。だらしないですわね、カノンさん」
涼しい顔で言ってのけるアリシアに苦虫を噛み潰したような顔を向けた。
「まあ残ってる記憶のことでも全部教えるのは難しいわねー。とりあえず、あたしは味方で、記憶なし。数年前に目が覚めたらここにいて、ラボの情報で星が危機にあると知った。だけどあたし自身は直接介入できないらしくて八方塞がりー。それで、異世界の人間を連れてきた。それが貴女たちの師匠で『桜木 春風』。それでアイツにクノール村に降りてもらって、現地の人たちに錬成術を指南してもらってカルマを退治してもらってた。ってな感じかしらね。ちなみに手っ取り早くアイツに退治を直接依頼しなかったのは自分たちの星は自分たちで守りたいからよ」
うむむむ。と、人の話を黙って聞くのが苦手なカノンが理解しようと一生懸命になっている横から、アリシアが口を開いた。
「では、結局のところお師匠さまがいなくなった理由は?」
あ。そういえば消える理由は書いてなかった。とカノンもアスカの方を見た。
「確実な答えは出せないわ。けど、どうやら日本に戻っているわけでもない。ここの情報ではクノール村から戻る途中で何らかの事故があってそこで消えたと推測できる。その原因の最たるものはカルマの異常発生と関連性が見られる、ということくらいね。だから急いで捜索をしているんだけど、不自然な点がいくつかあるわ」
「それは?」
アリシアの合いの手にアスカが頷いた。
「まず、アイツはあたしに『消える可能性』について話をしたことがなかった。それと、消えたあとに貴女たちをここに飛ばすこともあたしは聞いてなかったのよ」
「そもそもボクらはどうやってここに来たんだっていう」
「それはおそらく『転送錬成術』ね。太古の科学、錬成術との合わせ技によって生まれた技術よ。浄化されたカルマのコアをあなたたちが入手した場合に自動的に発動するように仕組まれていたみたいだわ」
もはや話を聞くだけで真偽のことなどどうでもいいとばかりに、ふたりは話を聞くのみであった。
「そして、そこで貴女たちには頼みたいことがある!」
突然、両手をパンと叩いてアスカが言った。
「星の危機を救うため、ハルの代わりにこの世界のカルマを討伐してもらいたい!」
「ええー……。いいですよ」
「ええ」
「うん、わかるやりたくない気持ちはすごくわかる。いきなり怪しげな空間にきて話吹き込まれてもホントかなーとか思うわよね、でも! 待って欲しいの! あたしとしては自分の身の潔白と信頼をまず勝ち取ってみせるからそのあとでじっくりと考えてもらって―――」
「いやだから、いいですよって」
「―――まじ? 疑わないの?」
なんだか話の内容でどっと疲れがでてきたという顔を隠さず、カノンがいう。
「いや、ここにきて最初はビックリしたし罠か詐欺でもあるんじゃないかとは思ったけど、ボクたちが倒れた時、必死になってくれたじゃないですか」
「……意識あったのね」
「少しだけ。それに、新しい師匠の手紙にも、記憶喪失の仲間を助けて欲しいって書いてあったしね」
「アイツめ……。ちょっとそれ見せてもらってもいいかしら?」
少し目頭を抑えながら、アスカが手を伸ばす。
「…………いいですけど。破かないでね」
なにを馬鹿なことを。と怪訝そうな顔でアスカは紙を受け取った。
そこには『おめでとう! ここに着いたということは、カルマを無事に討伐できたってことだろう。そしてここには記憶喪失の俺の仲間がひとりでいる。見かけによらずこころぼそい奴ですげえ面倒くさいやつだがずっとひとりぼっちだとシニタイとかいう構ってちゃんだから助けてあげてくれよな!』という文章が書かれていた。
「―――――シネ」
ぐしゃ!と、紙が握りつぶされた。
「だあああもう破かないでって!」
「破いてないわっ! 潰しただけよっ!!」
「変わんないよそれ!!」
ひさかたぶりの賑やかな会話が空の果て『ライブラ』で繰り広げられる。
驚かせないように少し黙っておきなさい。と注意を出されたシステム『マザー』の球体は、声に反応するように、どこか嬉しそうに光りの点滅を繰り返した。




