玩具とイチゴ
その後、楓は気まずさに耐えられず散歩と称して家を出て適当に近所を歩いていた。
橋の近くのベンチにいた楓が顔を上げると、橋に湊と同級生らしき女の子がいた。
遠くて話し声は聞こえないが、何か喋って湊が女の子に笑顔でハグをして、また何か喋ってからキスをしていた。
楓は「うあっ...またかよ」と呟きスマホに視線を落とした。
すると女の子に手を振り、湊は振り返って楓に手を振った。
楓が「え」と呟くと、湊は楓に歩み寄って来た。
「こんな何もないとこで何してんのー?逃避?」
湊は笑いながらそう言い、楓の隣に腰を下ろした。
「はっ!?」
楓が少し驚いた表情で湊を見ると、湊はクスっと笑った。
「さっきの楓兄と光兄の話、聞いちゃった~」
言われ、楓は「お前さあ...」と呆れた表情。
「いやいや、聞かれたくない話ならあんな壁の薄い部屋で喋っちゃだめだよ~?」
「流石に隣の部屋で聞こえるわけないだろ。そんなでかい声で喋ってないわ」と楓。
「あ、バレた?ちょーっと聞こえてきたから廊下に出て聞いてた」
湊はそう言って舌を出した。楓は溜息をつく。
「まあまあいいじゃん。楓兄だって俺がチューしてたの盗み聞きしてたでしょ?おあいこってことで」
「バカか。お前が勝手に聞かせてきたんだろ。てか人聞き悪っ。お前マセ過ぎなんだよ」
「えーだって兄ちゃんたちがダラダラつらそーな話してたから、俺は気軽にチューしたくなっちゃった♡」
「ふざけんなっ」
「ふは、何て言うかさあ、要は2人ともそのナホ先輩?にチューしたいって話でしょ???」
湊はそう言いながら手に持っていたジュースを飲んだ。
楓は呆れた表情で言う。
「いや、要し過ぎだから。てか要されてもないしっ。なんだよその結論」
「えーだってそうでしょっ。光兄と楓兄が同じ子が好きで、その子は光兄と付き合ってて、でもあの様子だと光兄相当不安になってたし~~楓兄の言い訳必死だったし~~、んー、その子と楓兄の間に何かあったんだなー?」
「こわコイツ...。いや、何もないから。てか好きじゃないから」
「好きじゃないならあんな話する意味あったの?それとも光兄に疑われるようなことしたの?光兄が束縛してるだけ?その子がフラフラしてるだけ?楓兄がちょっかいかけてるだけ??そうには見えなかったけど~~~????」
「うるさいな。事はもっと複雑なんだよっ」
「複雑って。早いもん勝ちじゃないんだし、欲しいなら欲しいって言えばいいのに。光兄と楓兄っていつもそうだよね。自分の欲しい物我慢して欲しいって言わないで譲り合ったり、相手が欲しいって気づいてるのに話し合おうともしないで何事もなかったように自然にどっちかの物になってたりさあ。バカだなーって思ってるけど」
湊にそう言われ、楓は「は??何の話してんだよ..」と呟く。
「おもちゃとかイチゴの話っ!光兄が元々持ってたさあ、ほらあの新幹線の玩具、楓兄も欲しがってるのバレバレだったのに欲しいって言えなくて、でも光兄がいない時は楽しそうにその玩具で遊んでててさあ。光兄が戻ってきたら何もしてません☆みたいな顔して別の玩具で遊んでたでしょー??光兄もそのことに気づいてるのに、渡したくないからって黙ってたし。逆も同じ。光兄、ケーキのイチゴ食べたかったのに楓兄が知らない間に食べちゃってさ、素直に文句言えばいいのに楓兄のこと責めないで見てんの。めーっちゃ食べたかったんだろうなって、悔しそうな顔してたな~~~~~」
湊に言われ、楓は「お前何でそんな小さい時から達観してんだよ...」と呟いた。
「そりゃそーでしょ、俺末っ子だもん。甘やかされて早16年!新幹線の玩具も、ケーキのイチゴも、兄ちゃんたちは我慢して欲しいって言えないまま指咥えてる間、俺は欲しいって口に出してお母さんに買ってもらってたのー。お母さんは知らないんじゃないかな、光兄と楓兄が同じ玩具を欲しがってたことも、イチゴを欲しがってたことも。そりゃそーだよ、2人ともお母さんに欲しいって伝えてないんだからさ。もらえるもんももらえないって」
湊は平然とそう言い、楓の方を見た。
「とはいえ?光兄が楓兄に彼女とられて悲しむのも可哀想だし、最終的に決めるのはそのナホ先輩だし、2人が納得する方法なんてないわけだね。ま、楓兄も彼女いるんでしょ?じゃあまあ、その子と仲良くやってれば?好きになれるといいね~~~」
湊はそう言うと立ち上がり、「んじゃねー」と言って家の方向に歩いて行った。




