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もう少しだけ

「それでねっママが今度、楓くん家に連れてきてって!楓くんが良かったらだけど...どうかな?」


帰り道、飛鳥はそう言って恥ずかしそうに楓を見上げた。

そう言われた楓はそんな飛鳥を見て立ち止まった。


飛鳥も立ち止まり「楓くん?」と不思議そうに楓を見た。

楓は飛鳥の方に向き直り、真剣な表情で言った。


「ごめん、行けない」


「えっ...と、あ、部活とか忙しい?バイト?あ、ごめんねっ!勝手に舞い上がっちゃって!全然大丈夫!楓くんの都合のいい日でーーーーーーーーー」


飛鳥がそう言い、楓は「飛鳥ちゃん」と呟いた。

飛鳥は「..ん?」と苦笑して楓を見上げた。


「俺、飛鳥ちゃんを裏切った。だから行けない。ごめん」


楓の言葉を聞き、飛鳥は「...え、う、裏切った...?裏切ったって、どういうこと...?」と言った。


「...他の女の子の手、握った。抱きしめた。ごめん」


「えっ........そ、それは....その、あっ、ノリとか、流れとか、そういうこと...!?だったらそんなの忘れるし、わざわざ言わなくても大丈夫...だから!」


飛鳥の笑みを見て、楓は首を横に振った。



「違う。ごめん、俺..その人のこと好きなんだ。だから、別れて欲しい」



楓がそう言った瞬間、飛鳥は「えっ...」と呟き、みるみる目が赤くなった。


「勝手なこと言って本当にごめん。でも、このまま飛鳥ちゃんと付き合い続けることできない」


楓は少し俯きながら言った。


「えっと...その人も、楓くんのことが好きなの....?付き合うの..?」


そう言われ、楓は先日のことを思い出した。

あの日の菜穂の言動、表情。

光を好きかと聞いたときの反応ーーーーーーーーー。


「...分かんない。でも、付き合うことはないと思う」


楓が言うと、飛鳥は「えっ」と呟き、泣きながら言った。


「だ、だったら...だったら、楓くんがその人を好きでもいいよ...!好きでいいから、まだ私の傍にいてっ...!」


「これ以上そんなことできないよ....」


「これ以上って...もしかして...私と付き合ったのは、私を好きだからじゃない...?楓くんの心には、ずっとその人がいた..?」


飛鳥は泣きながらハッとしたような表情で言った。

楓はただ黙って飛鳥を見から目を逸らした。


「...ごめん」


楓の言葉を聞き、飛鳥の目から更に涙が溢れた。


「...ううん、大丈夫。だって私が楓くんを好きになったんだもん...謝らなくていいんだよ。それでも私は、楓くんが好き」


飛鳥はそう言うと、背伸びをして楓の唇にキスをした。

楓は目を見開き、飛鳥の顔を見下ろした。


「...楓くんが好き。楓くんの心の中にその人がいてもいい。今は私を好きじゃなくてもいい。だから...時間をください。絶対、いつか私を好きになってもらえるように頑張るから..!だから今は..別れるなんて言わないで...!もう少しだけ..もう少しだけ彼女でいさせて....」


泣きながらそう言ってしゃがみこむ飛鳥を見て、楓は何も言えなくなってしまった。


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