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世界で1番

あれから1週間。

【今日一緒に帰れる?】と菜穂からメッセージが来た。


嬉しい気持ちと、怖い気持ちが半々。

久しぶりに菜穂に会えると思った嬉しさと、振られるんじゃないかという恐怖。もしくは、俺じゃない"他の人"を好きだと言われるような気がした。


「光くん」


下駄箱で声が聞こえ、振り返ると菜穂が微笑んで光を見上げていた。


やっぱり可愛いなあ。

好きだなあ。

誰にも渡したくないなあ。


菜穂が"俺じゃない誰か"を好きなんて嫌だなあ…



******



「…なんか、久しぶりだね」


光が微笑むと、菜穂は「だね」と苦笑した。

そう言って2人は歩き出した。


「…菜穂、俺から話してもいいかな」


河川敷まで無言で歩いて、光はそう言って立ち止まった。

菜穂は「うん…」と苦笑し、河原にあるベンチに座った。

犬の散歩をする人がいたり、ランニングをする人がいたり、ふざけながら帰る学生がいたり。


景色はいつも通りなのに、今日はまるで違う場所のように思えた。

隣にいる菜穂が遠くて、知り合ったばかりの人のように思えた。

またこんな風に2人で並んで歩くことができるように、ただそれだけでいい。


"好き"だなんて言ってくれなくてもいい。

ずっと触れられなくてもいい。


ワガママは言わないから、ただ俺の隣にいて欲しい。

言いたいことはたくさんあるのに、目頭がずっと熱くて、頭が回らなくて。


「…菜穂。今回のこと、本当にごめん」


光はそう言って菜穂に頭を下げた。


菜穂は「えっ、いやいや…!謝らないで…!光くんは何も悪くないよ…!」と焦った表情で光を見た。

光はゆっくりと顔を上げる。


「…悪くないとも言い切れないし、少なとも俺は間違ってた。だから…楓の言う通りだった。俺は菜穂のこと疑うばっかりで、菜穂の気持ちなんか考えもしなかった。菜穂が泣いてることに気づいたのに傷つけた。本当にごめん」


「ううん…そもそも、私が相談しなかったから。光くんからしたら、信頼されてないと思っても仕方がないと思うし…それに、光くんは色んなことみんなに言われて、分かんなくなって当然だよ。光くんは間違ってなんかない。だから…もう謝らないで」


菜穂はそう言って宥めるように光の肩に手を置いた。


「菜穂…ありがとう。だけど俺、悔しかった」


光に言われ、菜穂は首を傾げた。


「俺が1番に菜穂のこと分かってあげたいって思ってた。俺が1番菜穂を見ていたかった。いつだって俺が菜穂を助けたかった。なのに…いつも菜穂を苦しめてるのは俺で、いつも菜穂を笑わせるのは楓で…ものすごく悔しくて、嫉妬して…」


光はそう言いながら俯いた。菜穂は"楓"という言葉が耳に届き、胸が苦しくなった。


「…彼氏なのに、守ってあげられなくてごめん。信じてあげられなくてごめん。不安になったり、嫉妬してばっかで…自分の気持ちばっかりで、情けなくてごめん…!また間違えることもあるかも知れない。傷つけちゃうこともあるかも知れない。でも…!菜穂が1番に信頼してくれるように頑張るから…菜穂を1番笑わせられるようになるから…!だからもう一度、俺のこと信じてもらえないかな」


光はそう言うと顔を上げ、菜穂の手を握った。菜穂は眉をひそめた。



「俺は世界で1番、菜穂のことが大好きです」



そう言った光の目には涙が浮かんでいた。



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