好きなのかも知れない
無言で楓の背中を見送った菜穂はその場に立ち尽くし、ただ目を見開いていた。
ただ、胸が苦しくなった。
ただ、つらくなった。
ただ、見ていたくなった。
ただ、目を離せなかった。
菜穂は眉をひそめ、だんだん呼吸が乱れてきた。
だめだ、1人じゃいられないーーー。
私はもう、頼っていいんだ。
菜穂はそんなことを考え、来た道を引き返してただひたすらに走った。
どうしたらいいか分からない。
口に出していいのかどうかも分からない。
だけど、口に出さなきゃだめな気もした。
菜穂は目的地に辿り着くと、スマホを出して電話を掛けた。
「もしもーし。どうしたのー?」
遥の声を聞き、菜穂は安堵したように「はるちゃん…!」と言った。
「ん?どうしたの?はは、珍しくない?こんな時間に電話掛けてくるとか」
遥は微笑み、優しい声で言った。
「どうしてもはるちゃんに話したいことがあって…それで今ね…はるちゃん家の前にいるの…!時間があったらちょっとだけでいいから会えないかな…!」
菜穂がそう言うと、電話後しに遥がクスッと笑う声が聞こえた。
「嬉しい〜〜!菜穂が頼ってくれたあ。もちろんいいよ!何時間でも喋ろっ」
言われ、菜穂は嬉しそうに微笑んだ。
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そしてそのまま遥は外に出てきて「お、菜穂〜」と言いながら菜穂に歩み寄ってきた。
菜穂はすぐにスマホをポケットにしまい、勢いよく遥に抱きついた。
遥は「うおっ」と言って驚いた表情を浮かべたあと「どうした…?!」と言いながら腕を回し、菜穂を見た。
菜穂は遥にぎゅっと抱きつき「はるちゃん…!私…どうしよう…!」と呟いた。
「えっ…?!?!?」
その後、ベンチに移動した2人。
遥は目を見開いて菜穂を見た。
先程のやりとり、今までのことを話した菜穂は「うん…」と苦笑した。
「まじかあ、桐山兄弟やるなあ…ってそんなこと言ってる場合じゃないか。でも、その話がしたくて走ってきたわけじゃないんじゃない?それで、菜穂がどう思ったかってことが本題だったりする?」
遥はそう言って小さく微笑んだ。
菜穂はゆっくりと頷き、「私…」と小さく呟いた。
「私…楓と会うと安心する。楓と話すと楽しい。楓に彼女ができたって聞いて寂しい。それで…今日楓と話して…ぎゅってされて…その後色々言われてね…」
菜穂は言いづらそうに俯き、ゆっくりと顔を上げて遥を見た。
「私…楓のことが好きなのかも知れない」
言われた遥は小さく微笑んだ。
「うん」
「楓が…私のことをどう思ってるかは…想像だし、私の勘違いかも知れないって言うか…楓には彼女がいるし、勘違いだと思うけど…でも、もしそうだとしたらって考えた時、胸がこう…きゅんってなって、心臓がもう、壊れそうな感じになってね。だからその…自分でもはっきりとは分からないんだけど…」
「うん。でも、別に答えを急がなきゃいけない理由もないんだし、今はそれでいいんじゃないのかな。それに、私はだよ?私は、勘違いじゃないと思うな」
遥がそう言うと、菜穂は勢いよく顔を上げて遥の顔を見た。
「まあ、あんなこと言われたらグッ!と、きゅん!ときちゃうよね〜〜分かる分かる。私に言ってるんじゃないのに私も楓っちのことカッコイイ〜!!!って思っちゃったもん」
遥はそう言って笑った。
菜穂は「うん…」と苦笑した。
遥は「まあでも」と続ける。
「でも、桐山の気持ちも分かるよ。彼氏っていう立場だったからこそ、ちゃんと知りたいって思ったんだなって。不安になって当然だよ。それだけ桐山が菜穂のこと好きってことでしょ?だから桐山と話して、楓っちとも話して、ちゃんと答え出しなよ」
遥はそう言って微笑み、菜穂の肩に手を置いた。




