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好きなのかも知れない

無言で楓の背中を見送った菜穂はその場に立ち尽くし、ただ目を見開いていた。


ただ、胸が苦しくなった。

ただ、つらくなった。

ただ、見ていたくなった。

ただ、目を離せなかった。


菜穂は眉をひそめ、だんだん呼吸が乱れてきた。


だめだ、1人じゃいられないーーー。

私はもう、頼っていいんだ。

菜穂はそんなことを考え、来た道を引き返してただひたすらに走った。


どうしたらいいか分からない。


口に出していいのかどうかも分からない。

だけど、口に出さなきゃだめな気もした。

菜穂は目的地に辿り着くと、スマホを出して電話を掛けた。



「もしもーし。どうしたのー?」


遥の声を聞き、菜穂は安堵したように「はるちゃん…!」と言った。


「ん?どうしたの?はは、珍しくない?こんな時間に電話掛けてくるとか」


遥は微笑み、優しい声で言った。


「どうしてもはるちゃんに話したいことがあって…それで今ね…はるちゃん家の前にいるの…!時間があったらちょっとだけでいいから会えないかな…!」


菜穂がそう言うと、電話後しに遥がクスッと笑う声が聞こえた。


「嬉しい〜〜!菜穂が頼ってくれたあ。もちろんいいよ!何時間でも喋ろっ」


言われ、菜穂は嬉しそうに微笑んだ。



******



そしてそのまま遥は外に出てきて「お、菜穂〜」と言いながら菜穂に歩み寄ってきた。

菜穂はすぐにスマホをポケットにしまい、勢いよく遥に抱きついた。


遥は「うおっ」と言って驚いた表情を浮かべたあと「どうした…?!」と言いながら腕を回し、菜穂を見た。

菜穂は遥にぎゅっと抱きつき「はるちゃん…!私…どうしよう…!」と呟いた。


「えっ…?!?!?」


その後、ベンチに移動した2人。

遥は目を見開いて菜穂を見た。

先程のやりとり、今までのことを話した菜穂は「うん…」と苦笑した。


「まじかあ、桐山兄弟やるなあ…ってそんなこと言ってる場合じゃないか。でも、その話がしたくて走ってきたわけじゃないんじゃない?それで、菜穂がどう思ったかってことが本題だったりする?」


遥はそう言って小さく微笑んだ。

菜穂はゆっくりと頷き、「私…」と小さく呟いた。


「私…楓と会うと安心する。楓と話すと楽しい。楓に彼女ができたって聞いて寂しい。それで…今日楓と話して…ぎゅってされて…その後色々言われてね…」


菜穂は言いづらそうに俯き、ゆっくりと顔を上げて遥を見た。




「私…楓のことが好きなのかも知れない」




言われた遥は小さく微笑んだ。


「うん」


「楓が…私のことをどう思ってるかは…想像だし、私の勘違いかも知れないって言うか…楓には彼女がいるし、勘違いだと思うけど…でも、もしそうだとしたらって考えた時、胸がこう…きゅんってなって、心臓がもう、壊れそうな感じになってね。だからその…自分でもはっきりとは分からないんだけど…」


「うん。でも、別に答えを急がなきゃいけない理由もないんだし、今はそれでいいんじゃないのかな。それに、私はだよ?私は、勘違いじゃないと思うな」


遥がそう言うと、菜穂は勢いよく顔を上げて遥の顔を見た。


「まあ、あんなこと言われたらグッ!と、きゅん!ときちゃうよね〜〜分かる分かる。私に言ってるんじゃないのに私も楓っちのことカッコイイ〜!!!って思っちゃったもん」


遥はそう言って笑った。

菜穂は「うん…」と苦笑した。

遥は「まあでも」と続ける。


「でも、桐山の気持ちも分かるよ。彼氏っていう立場だったからこそ、ちゃんと知りたいって思ったんだなって。不安になって当然だよ。それだけ桐山が菜穂のこと好きってことでしょ?だから桐山と話して、楓っちとも話して、ちゃんと答え出しなよ」


遥はそう言って微笑み、菜穂の肩に手を置いた。



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