↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/133

前にも言ったじゃないですか

楓は何も言わないまま菜穂の拳を見つめた。


「…楓が、私の欲しい言葉を全部くれてね…ううん、違う。自分でも…光くんにどうして欲しかったのか分からなかった。でも楓が…楓があの日私を信じてくれてね、ああ、私ってただ…"光くんに信じて欲しかったんだ"って…そう思ったの」


菜穂は言いながら、だんだん声が震えた。


目頭が熱くなった。

胸が苦しくなった。


「だけどね…色んなことがあって…光くんが私を信じられないのも仕方なかったの。分かってたし、それで納得してたの…なのに…なのに何で…何で…楓に信じてもらえた時、あんなに嬉しくなったんだろうって…でも、どこかで思ってた。楓なら…楓なら信じてくれるんじゃないかって…だから…だから…あれ、何が言いたいんだったけ…はは…」


そう呟きながら、菜穂の目から涙が落ちた。


楓はそんな菜穂を見つめ、思っていることはたくさんあるはずなのに、口には出さないように堪えているうちに、ただ無言になっていた。


「…なんか、言ってよ…はは…」


菜穂はそう言って苦笑し、涙を流しながら楓の顔を見た。

楓は目を見開き、真っ赤になった菜穂の顔を見つめた。


「…あ、すいません」


楓はそれだけ呟いて苦笑した。

菜穂は「はは…それだけ…?なんか、恥ずかしいこと言っちゃったね…」と苦笑してからまた楓を見た。


「…要約するとね、楓は"ただの後輩"でも、"ただの友達"でもないの」


菜穂に言われ、楓は恐る恐る口を開いた。


「…じゃあ、菜穂先輩にとっての俺って、何なんですか…?」


聞きたいし、聞きたくない。

知りたいし、知りたくない。

聞いていいのか分からない。

その答えを聞いて、どうするんだろう。

何か変わる?変えていいのか?

変わるのか?

一体何が?


「それは…分かんない」


菜穂から返ってきた言葉はこれだった。

楓は瞬きをして「えっ…」と呟いた。


「ごめん、分かんないの。分かんないけど、大事だなって思う。なんていうか、この辺がね」


菜穂はそう言いながら胸のあたりで自分の手を握り締めた。


「この辺が、ぎゅん!ってなるような。大事だなって、好きだなって思ーーー」


菜穂がそう言いながら楓を見ると、楓は菜穂の胸の辺りで握りしめた手に、自分の左手を重ねた。

菜穂は目を見開き、「あ、えっと…」と動揺した様子で握られた手を見て、楓の顔を見つめた。


「楓…?」


菜穂が言うと、楓は顔を上げ、菜穂を見つめて言った。


「…だめです」


「だめ…って…?」


菜穂が聞き返すと、楓は一度唇をぎゅっと締めるようにしてから口を開いた。


「…だめなんです。そういうこと言っちゃだめです。前にもちゃんと…言ったじゃないですか」


言われ、菜穂は目を丸くしながら「前にも、って…?」と言った。


「…期待させないでください」


楓の言葉に、菜穂はただ楓の目を見つめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。