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ただの後輩だからなのかな

あれから4日。


【ごめん。今日はバイトだから先帰るね】


そんな言い訳をして飛鳥を避けた。


本当はバイトなんて今日しかなかったのに。

家では兄ちゃんがいて気まずいし、基本的にリビングにいられない。

咄嗟のことだったとは言え、あんな偉そうなこと言って兄ちゃんの顔を見れない。


遥先輩の話では、橘絵里奈は4日間学校に来てないみたいだった。

つまり菜穂先輩はまだ何も知らないってことか。

菜穂先輩のことだ、本人から聞きたいとか言ってそうだし。


モヤモヤとしている状況か。

そして今日のバイトはそんな菜穂先輩と2人。

地雷踏まないようにしとこ。


ってか本人の前であんなきもいことを堂々と.......。

恥ず過ぎる。きも過ぎる。ださ過ぎる。


ただの友達が菜穂先輩の彼氏に言うことじゃない。

菜穂先輩の顔見るのが怖くて逃げるように帰っちゃったし。

うわあ.......死にたい。



そんなことを考えながら平然を装い、「おはようございます」と言ってレジへ。

すると菜穂がいて、楓は自然と口元が緩んだ。

表情を直してレジへ行くと、菜穂は「おはよう」と微笑んだ。


「...先輩、今日園芸コーナー品出ししましょ。暇だし」


楓はそう言って微笑んだ。

菜穂も微笑み「うん!だね」と楓を見上げた。



いつものように他愛のない話をしてバイトの時間が終わり、2人は事務所を閉めてホームセンターを後にした。


またしばらく他愛の話をして歩き、「ってか超寒いですね。冬休みまだかなあ」と楓がそんなことを呟くと、菜穂は「あ、あのさ楓..」と呟いた。


「はい?」


楓が言うと、菜穂は立ち止まった。


「...この間は、ありがとう」


菜穂はそう言って頭を下げた。楓はギョッとして、一気に恥ずかしくなった。


「ああ、いえ...その、全然俺は何も..」


楓が気まずそうにそう言うと、菜穂は「嬉しかった」と言って楓を見た。

楓は「え」と呟いて菜穂を見る。


「私のこと、信じてくれてありがとう」


真っ直ぐそう言う菜穂を見て、楓はクスッと微笑んだ。


「当たり前じゃないですか。菜穂先輩に浮気なんてできるわけないですよ、色気ないんだから」


言われ、菜穂は「え、は〜〜??」と言って笑った。


「私だって結構モテるんだよ??こう見えても」


菜穂に言われ、楓も笑った。


「あんま想像できないですね。幼稚園生みたいなのに」


「オイ」


「まあでも、元気になって良かったです」


楓がそう言うと、菜穂も微笑んだ。


「.....楓のお陰だよ。1番に信じてくれたこと、本当に感謝してる。ありがとう」


そう言われ、楓は「改まってなんですか」と笑い、「さっきも聞きましたし」と言った。


「いや、ちゃんと伝えたかったから」


菜穂が微笑み、楓は照れ臭そうにいった。


「別に改まっていいですって」


すると菜穂は少し言いづらそうな表情を浮かべた。

楓が「え、何ですか?」と言うと、菜穂は「ああ…」と呟いてから楓を見た。


「その…はるちゃんから聞いた。私が楓の前で泣いちゃったから…楓がはるちゃんに色々頼んでくれたんだって。その、ありがとうね。私…誰にも言えなくてすごく苦しかった」


菜穂はそう言うと近くのベンチに座った。

楓も菜穂の話も聞きながら隣に座った。


「はるちゃんにも…えっちゃんにも、光くんにも心配かけたくなくて、どう思われるのかが怖くて言えなかった。それなのに…あの日、楓の前で泣いちゃって、はは…何でなんだろうね?」


菜穂は苦笑しながら言った。

楓は少し沈黙し、菜穂を見て苦笑した。


「…俺は、ただの後輩なので。ほら、兄ちゃんとか遥先輩たちは迷惑掛けちゃうとか色々あると思ったと思いますし…巻き込むかもーとか思ったんじゃないですか?」


楓がそう言うと、菜穂も少し沈黙した。


「…うーん、もちろんそれもあるよ。あるけど、そうなのかな…」


「そうなのかなって、何ですか…?」


「いや、なんて言うか…分かんないんだよね。前も言ったけど、何か楓と会ったら安心しちゃって、気づいたら涙が出てて…どう思われるかなとか、疑われるかなとか…何も考えてなかった。現に楓は…疑いもしないで信じてくれた」


菜穂はそう言いながらただ視線は下に向けていた。

菜穂は拳を握り締めながら話していた。



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