信じること
光は「え...?」と楓を見た。
絵里奈は楓を睨んでいる。
「いや、まじで意味分かんないんだけど」
楓がそう言うと、光は「俺もまだ意味が分かんないんだよ..」と呟いて髪を掻いた。
すると楓は「いやそうじゃなくてさ」と呟いて光に歩み寄り、光を見て言った。
「自分の好きな人信じないでどうするの?」
楓はそう言って光の目を見つめた。光は目を見開いて楓の目を見つめた。
楓の言葉を聞き、菜穂は目を見開いた。
同時に、さらに涙が溢れ出てきた。
「俺は....俺は彼女だからって片方の話を聞いて判断するのは違うし、橘の話も聞いてちゃんと事実をーーーーー」
動揺しながら、光は言った。
楓は呆れたように光を見て言った。
「そんなの、1つしかないだろ」
言われ、光は「え...」と呟いた。楓は続ける。
「事実がどうとか、誰が正しいとか、間違ってるとか、そんなのどうでもいい。菜穂先輩が好きなら、何で菜穂先輩のこと信じてあげないんだよ。菜穂先輩がどれだけ苦しんでたのか、今どれだけ苦しいかちゃんと考えたのかよ。他の誰が何て言ってようが、目の前で好きな人が泣いてたらその人を信じるだろ」
そう言われ、光は言葉を失い、そのまま無言で楓を見つめていた。
楓の言葉を聞き、菜穂はただただ呆然と2人を見つめた。
何でずっと言って欲しかったことを、楓は全部言ってくれるんだろう。
ただ信じて欲しかっただけだって、私もこの時気づいた。
「そんなんで好きとか、大事とか、簡単に言ってんなよ。自分の言葉にはちゃんと責任持てよ」
楓は不機嫌にそう言い放った。
光はそこまで言われてもただ何も言えずに楓からゆっくりと視線を逸らし、菜穂を見た。
「...菜穂」
光の言葉は、菜穂の耳には届いていなかった。
菜穂は呆然と泣きながら楓の背中を見つめ、光は一瞬目を見開いた。
楓は振り返り、遥に「..遥先輩、兄ちゃんに教えてやってください。この女がしたこと」と言って絵里奈を指さした。
遥はそんな楓を見て、気まずそうにしながらもどこか安堵したように小さく微笑んだ。
「..うん。絵里奈、ちゃんと話そう。桐山、ちゃんと知るべきだよ、菜穂のこと」
遥はそう言って2人を見た。
絵里奈は遥と楓、菜穂を睨みつけると「..じゃ、こんなところじゃなくてまた来週、ちゃんと話そうよ。あたしは帰る」と言ってくるりと振り返りそのまま立ち去って行った。
「絵里奈っ!」
遥はそう言って絵里奈を追いかけようと一歩踏み出したとき、菜穂が遥の腕を掴んだ。
「.....行かないで。今は、今はいい」
菜穂がそう言うと、遥は「菜穂...」と呟き「わかった」と優しく微笑んだ。
そんな菜穂と遥を見て、楓は「...俺も帰りますね。なんか、急にすいません」と言い、軽く会釈をした。
遥は「無理矢理連れてきちゃってごめん、ありがと」と楓に言い、菜穂は無言で楓を見つめた。
「...菜穂。ごめんね。今日は俺と話したくないよね」
光に言われ、菜穂が俯くと「分かった。また連絡するね」と言って光は歩いて行った。




