罠
それから数日して、菜穂が登校するとクラスに入った瞬間に違和感を感じた。
いつも通り「おはよー」と言って教室に入ると、男子たちはいつも通り「おはよー」と、女子が何となく気まずそうに菜穂から視線を逸らした。
まだ絵里奈と遥の姿はなかった。
菜穂は違和感を感じながらも自分の席へ。
すると、斜め後ろの席でクラスメイトの美優が俯き、周りの女子3人が菜穂を見ていることに気づいた。
菜穂が「...え、あ、おはよう」と微笑むと、女子たちは顔を見合わせて1人が菜穂に歩み寄って来た。
「...ねえ菜穂、昼休みちょっといい?絵里奈と遥に言ったら怒るから」
言われ、菜穂は「...え、あ、うん。何か...あったの?」と美優を見た。
「後で話すから。じゃ」
冷たくそう言われ、菜穂は「うん....」と呟いた。
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放課後、菜穂は約束通り絵里奈や遥にも言わず、美優たちの元へ。
美術室の横の階段に呼び出された菜穂は、恐る恐る角を曲がった。
菜穂が行くと、女子が3人と美優が。
「....あの、私に話ってーーー」
菜穂が言うと、女子の1人がスマホを片手に、ムスッとした表情で菜穂に画面を見せた。
「これ、どういうこと?菜穂ってB組の桐山と付き合ってるんでしょ?なんでこんなことすんの?」
言われ、菜穂が画面を見ると、そこにはいつしか健斗と一緒に帰った日の写真。
健斗の後ろ姿、菜穂の顔は見えないが健斗を見上げるような様子。
健斗は菜穂の頬を触っている。
「...これ、キスしてるよね?」
そう言われ、菜穂は目を見開いて「えっ、いや、してないよ!これはただ宮村くんが汚れをとってくれただけでーーーーー」と女子を見ると、女子は「は?」と菜穂の言葉を遮った。
「ねえ、美優が宮村のこと好きなの知ってたよね?なんで桐山と付き合ってるくせに宮村にまで手出すの?」
菜穂はそう言われ、動揺した表情で答えた。
「いやっ...!確かに美優ちゃんが宮村くんのこと好きなのは知ってたけど...でも私そんなことしてない!この日もたまたま宮村くんと会っただけで何もないよ!」
菜穂がそう言って奥で俯いている美優を見ると、他の女子が「菜穂ってさ」と言って菜穂に歩み寄った。
「本当男好きだよね。前から思ってたけど男子に媚び売り過ぎ。桐山の弟にだってちょっかいかけてるらしいじゃん。男がみんな自分を好きじゃないと気が済まないんでしょ」
「そんなことない...!私は美優ちゃんのこと応援してたしーーー」
菜穂がそう言い、今度は美優が顔をあげて言った。
「....菜穂のこと、信用して話してたのに。こんなことすると思わなかった」
美優に言われ、菜穂は首を横に振った。
「ちがうよ...!私は本当に何もしてないよ」
確かに1ヵ月くらい前、美優ちゃんが宮村くんを好きだという話を聞いた。
本当に応援していたし、私は宮村くんとそこまで親しいわけじゃない。
それなのに何でこんなことーーーーー。
この写真は誰がーーーーー。
菜穂はそう思いながら「信じて」と美優を見た。
「もういいよ。桐山も可哀想。菜穂に騙されてて」
女子たちはそう言うと菜穂の横を通り過ぎて行った。
菜穂は泣きそうになりながら教室に戻り、女子たちの視線を感じながら帰る準備をした。
すると部活に行った遥が一度戻ってきて、「あ、菜穂ー。放課後いるの珍しいじゃんっ。まーた宿題忘れたー?」と微笑んだ。
菜穂は「あっ」と呟き、すぐに笑顔を作った。
「あ..うん!またやっちゃた、はは」
はるちゃんに話したら、はるちゃんはきっと私を信じてくれる。
でも、そんなことしたらはるちゃんまでみんなにハブかれるかも知れない。
はるちゃんとえっちゃんには言えないーーーー。
そんなことを考え菜穂が笑うと、「ふは、バカだあ」と遥は笑いながら机からポーチを出し「じゃまた明日〜〜」と行って部活へ戻って行った。
そんなやりとりを見ていた美優は、菜穂を睨むような目で近づいてきた。
「...遥と絵里奈に話してもいいけど、自分が悪いのに被害者ぶってあたしを悪者にするんだ?あんな写真があるんだし桐山にも、信じてもらえるかな?」
美優にそう言われ、菜穂は「そんなこと...」と顔をしかめた。
美優はニヤリと笑い、「邪魔だから早く帰りなよ。それとも誰か男でも待ってんの?」と耳元で言った。
菜穂は美優を見上げ、複雑な表情を浮かべ教室を後にした。




