忘れないと
翌日、菜穂が登校していると「菜穂」と声をかけられ、隣に光が来た。
菜穂は光を見て「あっ」と小さく呟いた。
「おはよ。昨日帰り1人にしてごめんね」
光はそう言って苦笑した。菜穂が「あ、ううん....!」と首を横に振った。
「私の方こそ、待ってるって言ったのに先に帰ってごめんね」と菜穂。
「ううん。待たせちゃった俺が悪いから。また今度ゆっくりデートしようね」
光はいつも通り微笑み、菜穂の手を繋いだ。
菜穂は光に手を繋がられた瞬間、昨日楓に手を握られた感触を思い出した。
一瞬固まった菜穂を見て、光は「ん?どうかした?」と菜穂に微笑みかけた。
「あ、ううん!何でもない。今日学食で何食べようかなあ〜〜」と菜穂。
「はは、まだ朝なのに?」
光も菜穂を見て微笑んだ。
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楓は授業中、頬杖をつきながら窓の外を見た。
ーーーー昨日、飛鳥ちゃんにキスしようとした。
でも飛鳥ちゃんの顔を見たらできなかった。
もちろん嫌いだからじゃない。
傷つけちゃだめだって思ったら、触れるのが怖くなった。
頭の中は菜穂先輩のことばっかりで、触れた手の感触が忘れられなくて、菜穂先輩が兄ちゃんと部屋で何してたかなんて考えたくないのにずっと頭の中から離れなくて。
このままじゃダメだ。
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楓は昼休み、学食で菜穂を見かけた。
「お、菜穂先輩じゃん」
隣にいた和葉はそう言うとどこか気まずそうに楓を見た。
楓は「そうだね」と呟き、普通に食券を買い始めた。
和葉はそんな楓を見て、少し口を尖らせながら言った。
「今日はちょっかいかけに行かないんだ?」
和葉はそう言いながらメニューを見た。楓は食券を取り、和葉の方を見ずに「毎回ちょっかいかけてるわけじゃないって」と苦笑した。
「ふうん。そうだっけ?でも、彼女できても今まで通り普通にするんでしょー?だったら別に話しかけに行けばいいのにー」
「だから毎回話しかけてるわけじゃないって」
2人は話しながら食券を出す。
「へえ。楓って意外と律儀なんだね?中学ん時そんなだったっけ??」と和葉。
「何の話?」楓は微笑む。
「いやー?飛鳥ちゃんの為にちゃんと忘れようとしてるんでしょ??真面目だなあって」
「....そりゃね。付き合ってるならちゃんとしないといけないでしょ」
「ふは、そう思われてることが自体が飛鳥ちゃん可哀想だけどっ」
「え、なんで?そういうもんでしょ」
「いやだって、意識しないと菜穂先輩のこと考えちゃうんでしょ??視線がいっつも菜穂先輩に向いてるぞっ」
「...いや、ちゃんと飛鳥ちゃんのこと好きだよ」
「ふうん。ま、楓がそう言うなら俺は何も言わないけど〜〜〜〜。でも、菜穂先輩とまた何かあったんじゃない?それともお兄ちゃんに何か言われた??」
「何もないよ。ただ適度に距離は置かないとなって思っただけ」
楓はそう言ってカレーを食べ始めた。




