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鼓動

「お疲れ様でしたあ〜」


20時半。飛鳥がバイト先を出て帰ろうとした時、店の外の電柱に楓の姿があった。


「楓くん?どうしたの?!」


飛鳥は楓に駆け寄った。


楓は苦笑しながら「…ちょっと散歩してて。飛鳥ちゃんもうすぐバイト終わる時間かなって思ったから来ちゃった。家まで送ってもいい?」と飛鳥を見た。


飛鳥は「それは、嬉しいけど…」と呟きながら不思議そうに楓を見た。



******



「楓くん、何かあったの?」


歩きながら飛鳥が言うと、楓は「えっ、何で?」と飛鳥を見る。


「いや…すっごく嬉しいけど連絡もなしに来てくれたのって初めてだったから。何かあったのかなって思って」


言われ、楓は先程の菜穂のことを少し思い出すも、「何もないよ。会いたくなっただけ」と微笑んだ。


「…そっか。私も楓くんに会えて嬉しいなっ」


飛鳥はそう言って微笑んだ。

楓はそんな飛鳥を見て微笑み、そっと手を繋いだ。


「…時間大丈夫だったら少し話さない?」


楓はそう言って横の公園を見た。



******



公園のベンチに座り、30分ほど話した。

楓は話しながら飛鳥の手をぎゅっと握ったまま。


飛鳥はそんな楓を見て、なんとなく違和感を感じ、「…きょ、今日どうしたの?」と苦笑した。

楓は「ん?なにが?」と微笑む。


「…ううん。何でもない」


飛鳥は苦笑し、楓の手を強く握り返した。

楓はそんな飛鳥を見つめ、「…飛鳥ちゃん、時間大丈夫?」と言った。


「うん!全然大丈夫だよ」


飛鳥の笑顔を見ると、楓は「…そっか」と苦笑し、飛鳥の手を引いてそのまま飛鳥を抱き寄せた。

飛鳥はビクッとしながら恥ずかしそうに「か、楓くん…?!」と呟いた。


楓は無言で飛鳥の背中に腕を回した。

飛鳥も恥ずかしそうにしながら楓に腕を回した。


1分ほど経ち体が離れると、見つめあった楓の鼻の先が、自分の鼻につきそうな距離に飛鳥は目を見開き、鼓動が高鳴った。


楓は無言で飛鳥を見つめ、2人は数秒見つめ合った。

飛鳥は恥ずかしそうに瞬きをしながら、一瞬楓の唇を見た。


楓は飛鳥の視線に気づき、自分も飛鳥の唇を見つめた。

飛鳥はそんな楓の視線を見て更に鼓動が高鳴った。


楓は数秒飛鳥の口元を見ると、飛鳥の目に視線を戻し、「…急にごめんね。そろそろ帰ろっか」と苦笑して飛鳥から離れた。


飛鳥は少し意外そうに楓を見つめた。


「…う、うん。あの、帰る前にもう1回だけ…」


飛鳥はそう言って楓に両手を向けた。

楓は優しく微笑み、また飛鳥を抱き寄せた。


心臓が飛び出そうな程鼓動が早まっている飛鳥はニコニコと微笑み、静かに楓に腕を回した。


だが数秒後、楓の胸に顔がくっついた飛鳥は目を開けた。

楓は飛鳥の頭を撫でている。

飛鳥の目が泳いだ。



ーーーーーーーあれ、楓くんの心臓の音、全然早くないな。



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