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視線だけは

翌週学校で楓を見かけた菜穂は、いつも通り「かえーーーーー」と話しかけようと微笑み、手を止めた。

飛鳥のことが過った。


菜穂が固まっていると楓が菜穂に気づき、楓の方から近づいてきた。

菜穂は慌てたような表情を浮かべ辺りをキョロキョロ。


「そんなマヌケな顔してどうしたんですか」


そういう楓に、菜穂は「オイ」と目を細めた。


「まあ、マヌケ顔はいつもですけど」


楓はそう言って軽く微笑んだ。菜穂は辺りを見渡してから小声で楓を見た。


「ちょ、ちょっと?私と話してて飛鳥ちゃん気にしたりしないの?????」


言われ、楓は表情1つ変えずに答える。


「え、なんで」


「何でって..!嫉妬とかしちゃったら可哀想じゃん!」


「先輩、自意識過剰ですね。まず俺ちょっと女子と話してたくらいで嫉妬するような面倒臭い人と付き合わないですし、菜穂先輩が嫉妬させられる程の女の子だと?」


楓がクスッと笑うと、菜穂は「はっ!?いや違うしっ!!」と大きな声に戻った。


「いや急に声でか」


楓は耳を塞ぐような素ぶり。


「塞ぐなっ!」と菜穂。


楓は笑いながら耳から手を離した。


「いちいち大袈裟なんですよ。彼女ができたからって別に先輩のこと避けたりしませんって。また前みたいに泣かれても困るので」


「えっいや!あれはしょうがないじゃん!?」


「はいはい。マヌケ顔さらにマヌケになってますよ」


「マヌケ顔じゃないわ」


「じゃあ、アホヅラ?」


「オイっ」


菜穂が目を細めると、楓はクスッと笑って「菜穂先輩に構ってると移動教室遅れるんでもう行きますね。また今度構ってあげるんで1人ではしゃいでてください。それじゃ」と言って廊下を歩いて行った。


菜穂は内心『なんだ、いつも通りじゃん....!』と1人思い、静かに微笑んだ。



******



その日の放課後、楓は飛鳥と下駄箱で合流して一緒に校舎を出た。

校庭を歩きながら、飛鳥はなんとなくソワソワしている様子で会話がぎこちなかった。


楓は「どうかした?」と飛鳥を見る。

飛鳥は「へっ!?あ、いや...!」と恥ずかしそうに楓から視線を逸らした。

楓は首を傾げ、飛鳥を見て言った。


「何かあるの?」


「あ、いや、その....!か、楓くんは...学校のみんなに私と付き合ってることバレても平気かなって..!」


言われ、楓は「...うん、もちろん」と軽く微笑んだ。


「本当っ!?あ、あの、じゃあ...お願いしてもいいかな...?」


飛鳥は恥ずかしそうに楓を見ると、そう言って右手を差し出してきた。楓は「....ああ」と呟き、手を繋ぎたいのだなと思った。


見られたら、だなんて思って一瞬だけ胸が痛んだ。


楓は微笑み、左手で飛鳥の手を握り、2人は手を繋いで校門へ向かって歩いた。


校門を曲がった時、今度は違う意味で胸が痛んだ。

一瞬だけビクッとして立ち止まってしまった。


「楓くん?」


飛鳥が不思議そうに楓を見上げ、楓の視線の先を見ると、そこには光と菜穂が手を繋いで帰っている後ろ姿。


「あ、楓くんのお兄ちゃんと菜穂先輩だ!仲良いね♡」


飛鳥は憧れるようなうっとりした目で2人を見て言った。楓は「あっ...うん」と苦笑する。


「どうかした?...って、お兄ちゃんのああいう姿見たらちょっと恥ずかしくもなるよね...!」


飛鳥がそう言うと、楓は「...そ、そうそう。毎回気まずいなってなっちゃうんだよね」と笑った。



そんな飛鳥と楓の姿を、一瞬振り返ったとき菜穂の視線は捉えていた。


飛鳥もまた、前に向けた楓の視線を捉え、目を丸くした。


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