本当にそれでいいの?
「楓くんっ!バイトおつかれさま!」
駅に行くと、飛鳥が笑顔で手を振った。
楓も微笑み「ありがと」と呟いた。
「楓くんって何のバイトしてるの?」
歩きながら飛鳥が言った。
「ホームセンターだよ」
「ホームセンターかあ!私もやりたいと思ってた!」
「めっちゃ暇だよ。飛鳥ちゃんはバイトしてるんだっけ?」
「うん!アイスクリーム作ってるっ」
「ええ、似合う。やってそう」
「ほんと?今度楓くんにも作ってあげるねっ!」
「まじ?じゃ今度和葉と行くね」
「えええっ!来てくれるの!バイト先の人たちに彼氏だって自慢しちゃお〜♡」
飛鳥は嬉しそうに微笑んだ。
そんな飛鳥を見て楓はクスッと笑い、「仲良いんだねバイト先の人と」と言った。
「うん!同年代の子たちも多いし楽しいんだあ。楓くんは?バイト先の人って仲良い??」
言われ、楓は「ああ…どうかな」と微笑んだ。
*****
飛鳥と1日遊び、飛鳥の家が近づいてきた頃、楓は楽しそうに話す飛鳥を見た。
「ーーーーだったんだあっ!」
飛鳥の話はまるで入って来てなかった。
楓がぼーっとすると、飛鳥は「あ、ごめん…私ばっかり喋っちゃってた」と苦笑した。
「あ、ううん。ごめん」
楓はそう言って苦笑し、「そう…?」と不思議そうに見上げる飛鳥を見た。
楓は飛鳥を見つめ、無言で手を繋ぎ「…帰ろっか」と微笑んで歩き出した。
飛鳥は顔を真っ赤にしながら「あ、あ、うん…!!!!」と言って楓の手を握り返し、小走りで楓の隣へ行った。
******
「楓〜〜〜!今日帰りカラオケ行こーぜっ!」
放課後、楓がリュックを背負ったときに和葉が駆け寄ってきた。
「あーごめん。今日は無理〜」
楓が言うと、和葉は「えーなんで?バイト?」と楓を見た。
「いや、飛鳥ちゃんと帰る約束してるから」
平然と答える楓を見て、和葉は「…は?!?!」と驚いた顔をすると、辺りを見渡して楓に近寄り、小声で言った。
「お前菜穂先輩はっ?!ついこの間好きだわとか言ってたばっかじゃん?!切り替え早!光の速さじゃね?!?!」
「いや…和葉には言われたくないんだけど」と楓。
「いやだってさっ!いつからだよ?!てか付き合ってんの?!」
「んー、2週間くらい前に付き合った」
「はあああっ?!言えよお前〜〜!!」
「え、何で」
「何でじゃねえよっ!友達だろ!まあそんなことはいいんだけど…菜穂先輩のことは?もう良くなったの??」
「…良くなったわけじゃないけど、忘れなきゃいけないし。飛鳥ちゃんいい子だし、好きになれそう」
そう言う楓を見て、和葉は落ち着いた様子で言った。
「楓が良いなら良いんだけどさ…でも、無理に付き合ってんならやめとけよ?」
「無理ってわけじゃないよ。まあ確かにまだ好きとかではないけど、菜穂先輩にも言ったし」
「言ったって何を?!」
「彼女できたって」
楓がそう言うと、和葉は少し呆れたように言った。
「お前さあ…そうやって後に引けなくしたってこと?」
「まあ、そんな感じ。でも別に菜穂先輩のこと避けるわけじゃないし、今度こそ兄ちゃんの彼女としてちゃんと仲良くしていきたいと思ってるよ。これで兄ちゃんが不安になることもないだろうし」
「本当にそれでいいの?」
「…もう戻らないよ。ちゃんと飛鳥ちゃんのこと大事にする。じゃまた明日ね〜」
楓はそう言うと教室の入り口にいた飛鳥の元へ歩いて行った。
和葉は小さく息を吐き、楓の背中を見つめた。
「無理して付き合われる飛鳥が不憫。いつか飛鳥がつらくなると思うなあ」
楓がいなくなると、後ろから声がした。和葉は「うおっ!!?」と言ってビクッと振り返ると、飛鳥と楓が話しているのを見る礼実がいた。
「おお、礼実ちゃん♡♡」
と和葉はニコニコ。
礼実が和葉を睨むと、和葉は咳払いをして表情を元に戻した。
「まああいつ、一度決めたら頑固なとこあるからな〜。ちゃーんと大事にしてくれるとは思うよ?飛鳥ちゃんのことー」
「そうだとは思うけど、飛鳥にいつかバレると思うな、私は。楓くんがお姉ちゃんのこと好きなこと」
礼実は淡々と言った。
「まあ…それは否めないね」
和葉は苦笑した。
「でも、礼実ちゃんのお姉ちゃんは光先輩とラブラブなわけだし、楓に頑張れって言うのも違うっしょ?」
和葉がそう言うと、礼実は菜穂が楓といる時の表情や言動、落ち込んでいた時のことを思い出した。
「…うーん、それはどうかなあ」
礼実が呟くと、和葉は「え?」と聞き返した。礼実は「ううん、何でもなーい」と言って和葉の元から去って行った。
和葉は「え?なになに?てか礼実ちゃん何で楓の気持ち知ってんの?!?」と言いながら礼実に続いた。




