彼女
それから2週間が経ち、菜穂がバイトへ行くとレジには既に楓がいた。
菜穂は楓を見るなり微笑み、「おっはよ!」と言ってレジへ。
「…あ、おはようございます」
「おはよ〜!今日さあーーーーー」
それから5時間、バイトを終え事務所で着替えると、菜穂はいつも通り楓を振り返って言った。
「よーし、帰ろ!」
菜穂がそう言って歩き出すと、楓は立ち止まった。
「…すいません、今日は用事があるのでここで」
楓に言われ、菜穂は「えー?そうなの?またブックオフー?なら私も一緒にーーー」と微笑んだ。
遮るようにして「いえ」と楓の声が聞こえた。
「ん??」
菜穂が言うと、楓は少し間を置いてから顔を上げた。
「…これから彼女と会うので」
言われ、菜穂は一瞬、全身に寒気が走ったような感覚に陥った。
「…へ、へえ!そうなんだ!!楓、彼女できたのー?あ、もしかして飛鳥ちゃん??あの子可愛いもんね〜!楓に気あるような感じだったし上手くいったんだ〜??!」
気づいたらベラベラと口走っていた。
そう言うと、楓はクスッと笑った。
「…はい。飛鳥ちゃんです」
言われ、菜穂はまた胸がチクッとした。
「そうなんだ!え、ええ…いつから!?!楓が告白したの〜〜???」
「1週間前です。飛鳥ちゃんが好きって言ってくれて」
「…そうなの???!やったじゃん!!楓モテるんだね〜!!おめでとう!」
菜穂がそう言うと、楓はどこか戸惑った様子で「ありがとうございます」と微笑んだ。
「そっか…彼女できたんだね…!」
菜穂がボソッと呟くと、楓はそんな菜穂を見て少し沈黙し、またすぐに口を開いた。
「…はい。これで兄ちゃんが変な誤解することもなくなるだろうし、俺は…俺は幸せだし、一石二鳥ですね」
楓の言葉に、また胸がチクッとした。
「…それもそうだね!好き…なんだね!飛鳥ちゃんのことっ!」
菜穂が微笑むと、楓は「…はい。好きですよ」と答えた。
「そっか…!良かったね!」
菜穂がそう言うと、楓は微笑んだ。
「…はい。じゃあ、待たせちゃうのでもう行きますね」
楓はそう言って手を挙げた。
菜穂も手を振り、「うん…!楽しんで!じゃ…また!」と微笑んだ。
楓は「…また」と呟き、振り返って歩いて行った。




