好きじゃないなら
「楓くんっ」
飛鳥に言われ、楓が振り返ると飛鳥は恥ずかしそうに楓を見上げていた。
「ん?」
「きょ、今日ってこの後予定ありますか…!!?その、もし放課後空いてたら一緒に帰りたいなって…!」
飛鳥は手に持った箒を握り締めながら言った。
楓は少し飛鳥を見つめ、クスッと微笑んで「いいよ。一緒に帰ろ」と言った。
「本当?!ありがとう!じゃ、じゃあ掃除終わったら楓くんのクラスに行くね!」
「うん、ありがと」
楓がそう言うと、飛鳥は嬉しそうに手を振り教室へ戻って行った。
楓は戻っていく飛鳥の背中を見送ると静かに息を吐き、振り返り1年の教室の方へ戻ろうとした。
「飛鳥と付き合うの?」
楓が振り返ると、礼実がそう言って楓を見上げた。
楓は「うおっ」と呟きビクッとなり、礼実を見た。
「別に告られたわけじゃないし」
楓が苦笑すると、礼実はどこか腑に落ちないような顔をした。
「飛鳥、いい子だしすごく良いと思う。でも、楓くんが飛鳥を好きじゃないならやめて欲しいなって思っただけ。あ、ごめんね関係ないのに」
「んーそこまで仲良いわけじゃなかったし、確かにまだ好きとかではないけど…でもああやって誘ってくれて嬉しいし」
「…お姉ちゃんが光先輩と付き合ってるから?」
「えっ?」
「お姉ちゃんには光先輩がいるから、飛鳥と付き合って忘れようとしてない?」
礼実に言われ、楓は苦笑した。
「いやいや、全然関係ないでしょ。びっくりしたあ。飛鳥ちゃん普通に可愛いし、もっと知りたいと思ってるよ」
「…そっか。ごめん変なこと言って。楽しんで」
礼実も苦笑して振り返り、そのまま教室へ戻って行った。
******
飛鳥と合流し、楓は飛鳥と話しながら校門へ向かっていた。
3年の教室の窓から絵里奈は楓と飛鳥の姿を見つけ、少しニヤリと笑った。
「菜穂〜、あれ、桐山の弟じゃない?」
絵里奈は隣にいた菜穂にそう言って窓の外を見た。
「んー?なになにー?」
菜穂はそう言いながら絵里奈の視線の先を見た。
そこには2人で歩く楓と飛鳥の姿。
菜穂は一瞬表情が固まり、「ほ、ほんとだ…!」と微笑んで絵里奈を見た。
「彼女かな?」
絵里奈はそう言いながら菜穂に微笑みかけた。
菜穂は楓が『もっと知りたいとは思ってます』と言っていたことを思い出した。
「…そうかも!最近仲良いっぽいし!」
菜穂が言うと、絵里奈はクスッと笑った。
「へえ、じゃあ弟、あの子のこと好きなんだね〜。ダブルデートとかできるね」
「あ、うん…そうだね!楽しみ!」
そう言って苦笑する菜穂を見て、絵里奈はニヤリと笑った。




