自分の気持ち
菜穂と別れ、楓は廊下を歩きながらグルグルと考えた。
と言っても何を考えたいのか自分でも分からない。
ただ、頭に浮かんでくるのは初めて出会った日のこと、バイト中のこと、絵里奈を守ってボールを受け止めていたところ、猫を拾った時のこと、草むしりをしていた時のこと、熱中症で倒れていた時のこと、互いに避けていた時のこと、その後必死に嫌だと言ってきた時のことーーーーーー。
手錠を片手に、カチャカチャと回しながら廊下を歩いていた楓は、そこで足を止めた。
「…え」
そう呟くと、後ろから「かーえでっ!」と同じく警官の格好をした和葉が来た。
ぼーっとした表情をしている楓を見て、「ん??楓ー??おーい??」と言って楓の顔の前で手を振った。
楓はハッとした顔で和葉を見た。
「…和葉」
言われ、和葉は「んー??」と緩い返事。
「俺、菜穂先輩のこと好きだわ」
楓は真顔でそう言って、和葉の方に顔を向けた。
言われた和葉は目をパチクリし、キョトンとした顔で言った。
「え、え急に何?知ってるけど。え???」
楓は「え」と和葉を見た。
「いや、え、じゃなくて。知ってるって。てか前俺言わなかったっけ?」
「いや、言ってたけどその時は違うと思ってたんだけど」と楓。
「え、そうだっけー?てか何その報告??」
和葉はそう言って笑った。
「いや、何か口に出したくなった。そしたら和葉がいた」
「いや俺だから言ったんじゃないんかいっ!」
和葉はそう言うと「んーまあでもさ」と言って歩き始め、話を続けた。
「どうすんのー?兄ちゃんと付き合ってんじゃん?お姉さん」
「いや、どうもしない」
「えっ指咥えて好きな女が兄ちゃんと付き合ってるの見てんの???」
「いや言い方腹立つな。でも菜穂先輩が好きなのは兄ちゃんだからそれでいいんだよね。なんて言うか、本当にそれは応援してる」
「嘘つけよー。今はそうでも、考えてみろ?兄ちゃんが菜穂先輩とチューしてるとこ見たら嫌だろー?」
「嫌だけど。まあ前見たことあるけども」
「えっ?!見たの?!」
「うん、兄ちゃんの部屋でしてた。てかリアルな音聞こえたしエグいやつ。でもまあ、そん時は別に好きとかじゃなかったから気まず〜くらいにしか思ってなかったけど」
淡々とそういう楓に、和葉は「え〜…」と引きつった表情。
「お前それこの先しんどいって〜…。俺なら耐えられないわ」
「まあ、菜穂先輩が家に来てたら俺が外行くわ」と楓。
「つら!健気かっ!!!」
「えーだってそれ以外なくない?最初から負けてるって分かってて挑むほど俺情熱的じゃないし」
楓は淡々と言った。
「え、そんなの分かんねーじゃん?」
「いや分かるわ。あっち付き合ってんだから。てか俺兄ちゃんのことも好きだし、本当に壊す気はないんだけどさあ、ねえ、どーすれば忘れられる?」
楓に言われ、和葉はもはや引いたように言った。
「お前可愛いかっ!うーんまあ、俺的にはグイグイいっちゃえ!って思ってるけどォ、確かに兄ちゃんとの関係もあるだろうし~~~~楓が邪魔する気ないなら尊重するけど。んー、他の子と付き合ってみるってのは??あ、礼実ちゃん以外で☆」
和葉がヘラヘラと笑うと、楓は「なるほど」と呟いた。
「いや真に受けんなよ」
「いや、でも良い考えかも。俺人好きになるまで長いからあんま考えたことなかったけど、誰かとデートするわ。好きになるかも」
楓はそう言って手錠を持ったまま右手を挙げた。
「いやどんなプレイ!?」と和葉。




