友達として
「おつかれーっ!」
菜穂は休憩に入り、トイレへ。
トイレから出ると、また警官姿の楓が。
なんとなく機嫌が悪そうに見えた菜穂は、昨日のことを思い出した。
あれから楓には連絡をしていない。
ただ、光とは嘘をつかない約束をして、楓で話すなとは言われていない。
このままじゃーーーーー。
菜穂は顔を上げ、「楓」と話しかけた。楓は振り返るといつもの表情。
安堵した菜穂は「ごめん、ちょっといい?」と苦笑した。
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階段の方へ行き、菜穂は「ごめん!」と楓に頭を下げた。
楓は「あっいや、俺の方こそ何か紛らわしいことしてすみませんでした」と頭を下げた。
2人は同時に顔を上げ、目が合うと互いに微笑んだ。
「昨日、ちゃんと話せましたか?」
楓に言われ、菜穂は「うん。何とか仲直り出来た」と苦笑した。
「良かったです」
「楓の方は?光くんと話せた…?」
「はい、夜にちゃんと話せたので心配しないで下さい」
「本当?!仲直り…?できた?」
菜穂に言われ、楓は昨日の光の様子、そして『信じてるから』と言われたことを思い出した。
「…はい。兄ちゃんも感情的になってごめんって言ってくれて、誤解も解けて元通りですよ」
楓はそう言って軽く微笑んだ。
「なら良かった。本当ごめんね、巻き込んじゃって」
「いえ。むしろ兄ちゃんと俺の間に菜穂先輩を巻き込んでるのは俺の方なんで」
「ありがとう。あと、聞きたかったんだけど聞いてもいい?」
「何ですか?」
「私の事、熱中症の時送ってくれたでしょ?あれ、何で隠そうと思ったの…?」
菜穂に言われ、楓は「ああ…」と呟いて続けた。
「兄ちゃんにあんまり心配かけたくなかったんです。昨日みたいに不安になっちゃうかなって。むしろ裏目に出ちゃいましたけど…嘘つかせちゃってすみません」
「あっううん!違うの!ただ理由を知りたかっただけだから…!気遣ってくれてありがとね」
菜穂はそう言って微笑み、「あ、でも」と不思議そうに楓を見た。
「どうして昨日楓は3年の教室にいたの?何か誰かに呼ばれたって言ってなかった?」
言われ、楓は今朝の絵里奈のことを思い浮かべた。
悔しいけどあいつの言う通り、俺は菜穂先輩に言えない。
「ああ…すいません、教室間違えて。和葉の知り合いの先輩が忘れ物したから取りに行って欲しいって言われて」
楓の苦しい言い訳に、菜穂は「あ、そうだったんだあ〜」と疑う様子もなく微笑んだ。
「とにかく、先輩と兄ちゃんが仲直りできて何よりです」
楓がそう言うと、菜穂は少し楓を見つめて「あ、うん…!ありがとう…」と微笑んだ。
そこで2人の間に5秒ほど沈黙が流れ、菜穂が意を決したように「あ、あのさ!」と口を開いた。
「はい」と楓が菜穂を見ると、菜穂は「えっと…」と呟いてから言った。
「今回のことで…また前みたいにお互い避けるとかないよね…?」
菜穂に言われ、楓は「えっ」と呟いた。
「これ以上楓に迷惑掛けたくないって気持ちはあるんだよ?でも…だからってやっぱりもう話さないなんて嫌だし…でもでも!楓だってもう光くんと揉めたくないだろうし、迷惑だって言うならもう…話しかけないけど…」
菜穂は話しながらどんどん声が小さくなっていった。
そんな菜穂を見つめ、楓は苦笑した。
「…何言ってるんですか。菜穂先輩が俺に迷惑掛けてるのなんていつもでしょ。今更気にされてもね」
「えっ?!いつも迷惑かけてる私?!」
「はい。いつもうるさいし、人の話聞かないし、拾った猫の世話は人に押し付けるし、ミミズ投げてくるし、すぐ体調崩すし…」
自分で言ってて、菜穂とのこれまでのことを思い出して、なんとなく辛くなった。
ーーあんた菜穂のこと好きなんでしょ?
絵里奈から言われたことを思い出した。
「楓?」
菜穂は黙り込んだ楓を見上げた。
楓は「…とにかく」と言って微笑んだ。
「迷惑上等です。これからも仲良くしましょうよ。まあ、友達として?」
そう言うと、菜穂はパアッと明るい表情になり、「うん!ありがとう!」と微笑んだ。




