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信じてる

菜穂は光を追いかけ、「まって!」と言って光の腕を掴んだ。

光は悲し気な表情で振り返り、無言で俯いていた。


「光くん…ごめんね…そんな顔させて…」


菜穂も今にも泣きそうな表情を浮かべながら光を見つめた。

光は涙を堪えるような表情で菜穂を見た。


「ごめん…!嫌な言い方ばっかりして…自分のことばっかりで…!」


光に言われ、菜穂は首を横に振り「違うの…!私が悪いんだよ…!光くんが謝ることなんかないんだよ…」と言って涙を流した。


光は首を横に振り、目を擦った。


「俺に自信がないから…菜穂を信じてあげられなくて…ごめんね…」


「謝らないで…!違うよ…私が光くんにそんな顔させてる…でも、でもね!本当に楓とはさっき偶然会っただけで、何もないんだよ…?!私も楓も何が何だか…」


「分かってるよ…菜穂も楓も、俺は2人のこと大好きだから…そんなことしないって分かってる。でも…」


光はそう言って俯いた。

菜穂は泣きながら光に抱きつき「ごめん…!ごめんね!」と言った。



******



それから数分して、落ち着いた2人は顔を合わせた。


「…菜穂、ごめんね。俺、楓にも酷いこと言っちゃって…」


階段に座り、光はそう言って俯いた。


「ううん…私のせいだからもう謝らないで。楓のことも…その、ごめん。不安にさせてるって分かってたのに…」


菜穂も俯くと、光は「ううん」と言って菜穂を見た。


「俺が勝手に不安になって、菜穂のことも楓のことも傷つけてた…本当にごめん。でも、話すななんて言えないけど、でも…もう隠さないで欲しい」


「うん!絶対にもう嘘はつかない。ごめんなさい…」


「…菜穂、俺のこと嫌いになってない?あんな…感情的になっちゃったしさ」


光が俯くと、菜穂は「嫌いになんかならないよ。私は光くんのことが好きだよ」と微笑んだ。


「…ありがとう。俺も菜穂のことが好き。本当に…好き」

そう言った光の表情はいつもの綺麗な笑顔ではなく、無理して笑っているように見えた。


菜穂はそんな光を見て「傷つけてごめんね…」と呟いた。



******



楓は家に帰ると、深呼吸をしてから階段を上った。

光の部屋をノックして「…兄ちゃん」と呟きドアを開けると、光は椅子に座った状態で、楓に背を向けていた。


光はゆっくり振り返り、「…おかえり」と苦笑した。

楓は少し沈黙したあと、「入っていい…?」と言い、光は「うん」と頷いた。

楓は座らず、立ったまま光に言った。


「…今日はごめん。でも、本当に菜穂先輩とは何もなくて、菜穂先輩は兄ちゃんのこと本当に好きなんだよ。俺にもいつも兄ちゃんの話ばっかりして来るし、俺が今日あそこにいたのはーーーーーー」


楓が言うと、光は「もういいよ」と苦笑した。


「兄ちゃん…ちゃんと謝らせてよ」


「違う。怒ってるから話したくないんじゃないよ」


光はそう言って立ち上がり、「ごめん」と言って楓に頭を下げた。

楓は「えっ」と目を丸くした。

光は顔を上げ、気まずそうに言った。


「…ごめん。俺勝手に不安になって、楓たちの話も聞かずに自分のことばっかりで2人のこと傷つけた。嫌なことばっかり言って、信じてあげられなくてごめん」


光はそう言うとまた頭を下げた。楓は「いや、兄ちゃんは悪くないから」と眉をひそめる。


「ううん。ちょっと感情的になってた。だからもう、俺に弁解なんかしなくていい。楓のこと、信じてるから」


光に言われ、楓は少しだけ胸がチクッとした。


「…信じてるって、俺が菜穂先輩に何もしてないってこと?」


楓が言うと、光は「うん」と微笑んだ。

楓は無言で光を見つめた。

そんな楓を見て、光は苦笑した。



「…信じるよ、楓のこと」



そう言った光と目を合わせた時、すぐにでも逸らしたくなった。


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