何でいつも俺じゃないの?
「あっ光くん」と菜穂。
「..兄ちゃん」と楓。
光は二人を怪訝な表情で見ながらゆっくりと教室へ入り、息を整えて言った。
「....ここで何してたの?」
光に言われ、状況を読み込めず咄嗟に2人は視線を合わせた。
光は二人の視線を見てからため息をつき、菜穂を見て言った。
「菜穂、なんで連絡くれなかったの?何回も電話したんだけど」
言われ、菜穂は手に握りしめていたスマホを見て「あ、その、ごめん。スマホ教室に忘れちゃって..」と光を見た。
光は少し菜穂を見た後、楓に視線を向けた。
「...で、何で楓と一緒にいるの?楓は?なんで菜穂といるの?」
光がそう言うと、楓は「いや、俺は呼ばれてーーー」と言い、光は目を瞑ってから楓の言葉を遮った。
「もう意味分かんないって...なにがしたいんだよ」
光はそう言って髪を軽く掻いた。
「いや、違うの聞いて光くん!私は本当にスマホを忘れただけだし、楓も誰かに言われて来ただけなのっ」
菜穂がなだめるようにそう言うと、光は「前だって」と菜穂の言葉を遮った。
「前だって...俺に嘘ついて2人で会ってたよね。今日だって....」
言われ、菜穂が「それは...」と言葉を失うと、楓は「それは俺のせいだから。俺が菜穂先輩に嘘つかせちゃって。ごめん」と光を見た。
光は「それだって意味分かんないから。何で...?何で俺に嘘ついてまで2人で会いたいの?」と菜穂を見て言った。
「いや、だから会おうと思って会ったわけじゃないって」と楓。
「嘘だよね。少なくともいつも...俺がいない時は二人で話して楽しそうにしてる。俺が不安になってるのだって、菜穂知ってたよね...?」
「...ごめんなさい。でもーーーーー」
菜穂が今日のことを弁解しようとすると、光は「ごめんね。本当、今この状況で二人の言い訳聞けるほど冷静じゃない。ごめん」と言ってまた頭を掻いた。
「光くん...あの、言い訳に聞こえるかも知れないけど...本当に偶然会っただけなの。ちゃんと連絡しようとしてたし、楓だって言われてきただけで、約束してたわけじゃないの。信じて」
菜穂がそう言うと、光は小さくため息をついた。
「...何でお互いにそんな庇い合うの?何で...何でいつも俺じゃないの?」
「え?」
「何でいつも...菜穂を困らせるのは俺で、何でいつも菜穂を安心させてるのは楓なの?なんでいつも菜穂を笑わせてるのは俺じゃないの...?」
「そんなこと....」
「ごめん。自分でも何言ってるか分かんない」
光はそう言ってスタスタと教室から出て行った。
「光くんっ!」と言って菜穂は歩き出そうとして、すぐに足を止めて楓を見た。
楓は「俺のことはいいから、行ってあげてください」と菜穂を見た。
「でも、楓だって誤解されたままじゃーーーー」
「落ち着いたら俺は家で話してみます。それに、菜穂先輩が誤解されたままの方が嫌です。早く行ってください」
言われ、菜穂は「..わかった」と言って光を追いかけた。




