勝手ですね
「楓っ!」
前を歩く楓を見つけ、菜穂は大きな声で叫ぶように言った。
楓は立ち止まり、振り返る。
菜穂は息を切らしながら楓に駆け寄った。
「やっぱり嫌だよ!こうして会っても無視して、笑わないで、まるで知らない人みたいになって…!私から避けておいて勝手なこと言ってるのは分かってるよ…でも私前言ったじゃん!楽しいから話したいんだって!それなのにこんな…もう、楓を知らなかった頃の私には戻れないよ!」
菜穂は必死に、叫ぶように楓の両腕を掴んで言った。
楓は驚いたように目を見開き、無言で菜穂を見下ろしていた。
菜穂は言ってから「あ…えっと、何が言いたかったかって言うと…その…だから…」と呟く。
そんな菜穂を見て、楓はついクスッと笑った。菜穂は不安気に楓を見上げた。
楓は笑いながら菜穂を見た。
「本当、勝手ですね。自分から避けたくせにそんなこと言ってくるとか」
言われ、菜穂は「それは…その、ごめん」と俯いた。
楓は微笑んで続ける。
「…すいません、適度な距離って分かんなくて。俺も前の菜穂先輩みたいに露骨に嫌な態度とりましたね。許して下さい」
「楓…」
菜穂は目を丸くして楓を見上げた。
「ていうか、体力ないのにそんなに走ってきて、息切れ過ぎだし。また倒れたいんですか」
そう言う楓を見て、菜穂はつい泣きそうな表情を浮かべた。
「もう…そんな風に話してくれないと思った〜〜〜〜…!!」
菜穂はそう言うと楓の腕を離し、その場にしゃがみこんで両手で顔を覆った。
楓は「えっ」と呟き、自分もしゃがんで菜穂を見た。
「大袈裟なんですけど。てか路上で恥ずいです」
閑静な住宅街で、楓は辺りをキョロキョロ。
菜穂は静かに泣きながら「だって…!」と呟き、そんな菜穂を見て楓は少し頬を緩めた。
「とにかく立ってください」 楓はそう言うと立ち上がり、しゃがみこんでいる菜穂に左手を差し出した。
菜穂は楓を見上げ、「うん…!」と言って右手で楓の手を握り立ち上がった。




