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嘘

【熱中症になっちゃって、今週は行けなさそう】


菜穂からのメッセージを見た光は【体調次第だけどお見舞い行ってもいい?】とメッセージを送った。

【うん!ありがとう!】という菜穂からのメッセージを見て、光は微笑んでスマホを閉じた。



*******



菜穂は光にメッセージを返すと、トーク一覧に戻り楓とのトークを開いた。


【ごめん!また楓に迷惑かけちゃって、今度こそ学食奢るね!本当にありがとう!】


【光くんに言わない方がいいってどういうこと?なんかあったの?】


菜穂が今日送ったメッセージに、まだ既読はついていなかった。




********



その日、楓がバイトに行くと「あ、お疲れ」と声を掛けられ、楓は一瞬いつもそこにいた菜穂の顔が浮かんだ。


目の前にいる別の高校のバイト仲間を見て、「ああ、お疲れ」と呟きエプロンの紐を締めた。


「菜穂ちゃん熱中症だってね~~。聞いた?」


言われ、楓は「...いや。そうなんだ、暑いもんね」と答えた。



*******



チャイムが鳴り、玄関を開けた。


「あ、光先輩。わざわざどうも」


礼実はそう言って目の前にいる光に会釈した。


「急に来てごめんね。菜穂は大丈夫?あ、お邪魔します」


中に入りながら、光は礼実に言った。礼実は「はい。今はもう落ち着いてます」と言って階段を上がり、廊下の先で「そこがお姉ちゃんの部屋です」とドアを指さした。


「ありがとう。あ、これ礼実ちゃん良かったら」


光はそう言って手に持っていた袋からプリンを1個礼実に差し出した。

礼実は「私にまでありがとうございます」とプリンを受け取り、菜穂の部屋をノックした。

礼実は「お姉ちゃん、光先輩が来てくれたよ」と言ってドアを開けながら、礼実は光を中に入れる一瞬の隙に菜穂の部屋を見渡した。


ーーーーー楓くんの痕跡とかないよね?

礼実が部屋を見ると、光は「ありがとう」と微笑み、礼実は「あ、はい」と微笑んでドアを閉めて廊下に出た。

階段を降りながら、なぜか自分の心臓の鼓動が少し早まった気がした。





「大丈夫?」


光はベッドで起き上がった状態の菜穂を見て心配そうに言った。

菜穂は熱さまシートを手で押さえてから「うん、もう4日目だしなんとか」と微笑んだ。


「なら良かった。病院は行ったの?」


「うん。一昨日。やっぱり熱中症だった」


「そっか。ごめんね気づかなくて」


「いや全然!!私も気づいてなくて、急に意識が遠のいた感じだったし!」


菜穂がそう言うと、光は何の気なしに不思議そうに言った。


「えっ、大丈夫それ?よく1人で帰れたね。4日前ってことはバイト終わりだよね?」


言われ、菜穂は「あ、いやーーーー」と言ってから楓からのメッセージを思い出した。


あれ、言っちゃだめなんだっけ。なんでだめなんだろう?

でも、楓からまだメッセージは返ってきてないし、勝手に言ったら楓が迷惑かも知れないよね?

口止めするってことは何か理由があるんだろうしーーーーーーー。


そんなことを思いながら、菜穂は「あ、いや、本当そうだよね!ギリギリで帰ってきたよ」と苦笑した。


「なら良かったけど...俺が迎えに行けたら良かったなあ...」


「ううん大丈夫!気持ちだけで充分嬉しいよ、ありがとう光くん」


菜穂はそう言いながら微笑んだ。

なんだろう、嘘を重ねて、胸の中に黒いシミが広がっていくような感覚ーーーー。



******



礼実の表情、菜穂の反応、そして4日前に突然来た楓からの電話。

菜穂と楓はバイト終わりだった。

光は帰り道、1人でそんなことを思い出した。


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