初の礼実ちゃん
「汐崎さん、俺と付き合って下さい…!」
目の前でそう言う彼に、礼実は表情1つ変えずに「ごめんなさい」と軽く頭を下げた。
放課後、教室に忘れ物を取りに行った楓は、「おお」と呟き咄嗟に邪魔しないように壁に隠れた。
「…ありがとう。それじゃあ」
礼実はそう言って彼を教室に残し、カバンを持って教室を出た。
瞬間、壁に寄りかかっていた楓と目が合った。
楓は「どうも」と苦笑した。
礼実は教室の方を見て「教室に用あった?ごめんね」と言って楓の横を通り過ぎた。
楓は「ごめん、聞いちゃった」と礼実を見る。
「別に大丈夫」
礼実はそれだけ言って廊下を歩いて行った。
忘れ物を取り、楓が地下鉄のホームに行くと、また礼実を見かけた。
無視するのも何となく気が引けた楓は「礼実ちゃん」と言って礼実の隣へ。
礼実は「え」と呟き不思議そうに楓を見上げた。
「あ、ごめん。急にちゃん付けで呼んじゃった。汐崎さん」
「いや、いいよ。桐山君ってお姉ちゃんとバイト先一緒なんでしょ」
「え、知ってたの?」
「うん。お姉ちゃんに色々聞かされてる。あと光先輩の弟なんでしょ、お姉ちゃんの彼氏の」
「あ、うんそうそう。菜穂先輩がいつも礼実ちゃんの話してるから下の名前で呼んじゃった。てか、全然似てないね、菜穂先輩と。まあ顔はなんとなく似てると思うけど」
楓はそう言って礼実の顔を見た。
「よく言われる」と礼実。
「さっきみたいに告られたら菜穂先輩だったら大騒ぎしてそうだよね~。興味ないんだ?」
「うん。私あの人とあんまり話したことないし。ていうか、桐山君の方も光先輩とは似てないよね」
「まあ、血繋がってないからね」
楓がそう言うと、礼実は「変なこと言ってごめんなさい」と申し訳なさそうに楓を見た。
「いや、嘘」と楓。
礼実は「は」と楓を見上げた。
「はは、菜穂先輩と同じ反応」
楓がそう言うと、礼実は「なら良かった」と真顔に戻り前を向いた。
「あれ、その後の反応は菜穂先輩と違うね」
「お姉ちゃんリアクション大きくて面白いでしょ」
「確かに」




