ボール引き寄せ過ぎでしょ
翌週、学食へ行った菜穂は楓の姿を見つけ駆け寄った。
「楓!!!」
そう言うと、楓と周りにいた3人の男の子たちが振り返った。
「はい」
楓が返事をすると、菜穂は楓を見つめ、勢いよく、深々と頭を下げた。
「先日はありがとうございました!!!!!」
言われ、楓は「えっ」と呟き「大袈裟過ぎてこわいです」と言った。
菜穂は顔を上げ、「学食!奢らせてください!」と言って財布を握りしめた。
「いや、結構です。後で恩着せがましく言われてもだるいんで」と楓。
「言わないわ!!」
「そうですか。じゃあ飲み物とかで大丈夫です。欲しい時言います」
「え、そんなんでいいの!?」
「はい。てか肩大丈夫ですか」
「うん!お陰様で!!まだ腕上がらないけど、ほらあの、コロナの注射した時みたいな感じ!」
菜穂はそう言ってピクピクと腕を上げる動作。
「そうですか。相変わらず元気そうで何よりです」
楓がそう言った時、「あ、あの」と後ろから声をかけられ、菜穂が振り返ると知らない女の子が1人立っていた。
「あ、ごめんごめん。じゃ飲み物欲しい時連絡して!!んじゃ!!」
菜穂がどこうとした時、楓は菜穂の腕を掴んだ。
菜穂が「え」と言うと、楓は「この子、菜穂先輩が庇った子ですよ。用があるのは俺じゃなくて菜穂先輩です」と言って腕を離した。
「あ、え、私?」
菜穂がそう言って彼女を見ると、彼女は「はい...私1年の榎本飛鳥って言います。先日は助けて頂き、本当にありがとうございました...!」と言って菜穂に頭を下げた。
「えっあ、全然全然!!!むしろ飛鳥ちゃんが怪我しなくて良かったよ~~」
菜穂はそう言いながら必死に胸の前で手を振った。
飛鳥は申し訳なさそうに顔を上げた。
「見ず知らずの後輩を庇ってくれて、とても優しいです。菜穂先輩と、それに楓くんにも、お礼をさせてください。私も飲み物買わせていただいてもいいですか?」
飛鳥にそう言われ、菜穂は「いやいや!そんなん大丈夫だよ~~」と焦った表情。
「俺はほぼ関係ないから大丈夫」と楓。
「いえ!買わせてください、お願いします」と飛鳥。
結局2人は彼女にお茶を買ってもらい、菜穂は飛鳥に「ありがと~~」と手を振った。
飛鳥がいなくなると、楓は「先輩そのうち上半身に穴空くんじゃないですか」と呟く。
「え、なんでー?」
菜穂が楓を見上げると、楓は「もはや好きなのかってくらいボール引き寄せてるんで」と答えた。
「1回目はあんたたちでしょうがっ」
「それはまじすいません。先輩男らしいんでこれからも世の女性を守ってあげてください」
「いや私も守ってもらいたいんだけど...」
「16㎏の砂を簡単に持ち上げる人を守れる男なんかいませんよ」
「それは楓が力ないんだよ~~」
菜穂はそう言ってどや顔。
「うざ。んじゃ俺はそろそろ戻りますね」
楓がそう言って歩き始めると、菜穂は「あ、うん!じゃあ何か飲み物買ってあげるから言ってね~~」と楓に手を挙げた。
楓は「あい」と言って教室の方へ戻って行った。




