こっちが彼氏か
楓が保健室を出ると、絵里奈がいた。
「ああ、菜穂先輩の先輩友達」
楓が言うと、絵里奈は「なにその名称…?」と怪訝な表情を浮かべた。
「橘絵里奈ね。菜穂のこと、運んでくれてありがとう」
絵里奈が言うと、楓は「いえ。別に」と答えた。
「ねえ、君桐山の弟なんでしょ?菜穂と桐山が付き合ってること知ってるの?」
「はい、知ってますよ」
「そうなんだ。なんて言うか、菜穂とはただのバイト仲間なんだよね?」
「はい。え、何ですか」
楓は不思議そうに絵里奈を見た。
「…ううん。そのうちバレるとは思うけど、桐山にはこのこと言ってないから」
「このことって?」
「君が菜穂を運んでくれたってこと」
「はあ」
楓は首を傾げた。
絵里奈は「まあ、とにかくありがとね」と言って保健室に入って行った。
それから5分程して、楓が言ったように血相を変えた光が保健室に入って来た。
「菜穂!」
光は少し小走りでベッドに座っていた菜穂に駆け寄り、「大丈夫!?」と菜穂の前にしゃがみこんだ。
「うん、もう大丈夫。来てくれてありがと」
菜穂はそう言って苦笑した。光は心配そうに菜穂を見つめた。
「本当に?まだ痛い?」
「うん、ちょっと痛い。はは」
2人のやりとりを見ていた竹本は少し不思議そうに言った。
「あれ、こっちが彼氏だったの?」
言われ、菜穂は恥ずかしそうに「えー♡まあ、はい♡♡」とヘラヘラ。
光は「...こっち?」と不思議そうに小さく呟いた。
遮るように竹本はニヤニヤしながら2人を見て言った。
「あらー♡青春いいわね~~♡」
そう言われ、光はすぐに「まあ」と微笑んだ。
「大したことないとは思うけどしばらく安静にしててね。もう少し休んだら行っていいわよ」
竹本がそう言い、菜穂は「もう大丈夫です!」と微笑み立ち上がった。
「大丈夫?」
光は心配そうに菜穂を見つめた。菜穂は「うん!みんなの試合も見たいし、光くんも試合出るでしょ?」と微笑んだ。
「菜穂が大丈夫ならいいけど..みんなには言ってきたからゆっくりで大丈夫だよ?」
「ううん。光くんのかっこいいとこ見たいし♡」
そう言う菜穂を見て、光は「そっか」と微笑み菜穂と一緒に保健室を後にした。
「菜穂、せっかく一緒に練習頑張ったのに出られなくなっちゃったね」
廊下を歩きながら光は残念そうに言った。
「仕方ないね。そしたら目一杯みんなのこと応援するよ~~!」
菜穂が微笑み、光は「優しいね、菜穂は」とクスっと笑った。
「え、何が?」
「知らない1年生庇ったって聞いた。菜穂のそういうとこ好きだなあ」
平然とそう言う菜穂に、菜穂は赤くなった顔で「そ、そんな大げさだよ..!!」と微笑んだ。
「大袈裟じゃないよ。咄嗟にそういうことができるってすごいことでしょ。俺にはできないよ」
「ううん、光くんならきっと同じことしたと思う。それに、大したことなかったしみんな万々歳!って感じだね!!」
菜穂はそう言って何故か楽しそうに笑って見せた。
光はクスっと笑い、「ふは、ポジティブでかわいい~~~」と菜穂を見た。




