本気にさせてくれたこと
私が楓をどう思っているかーーーーー。
そんなの分からないよ。
だって私は光くんと付き合ってて、楓はその光くんの弟なんだよ。
私のことが好きって、本当なの?
飛鳥ちゃんとはどうなったの?
どうして私のことが好きなの?
いつから?
私はここで保留していいの?光くんと付き合ってるのに?
光くんが知ったらどう思う?
何ですぐに断らなかったの?
断らないとだめだよーーーーーー。
「楓っ!」
菜穂はそう言って楓を呼び止め、今度は菜穂が立ち止まった楓のところまで小走りで行った。
菜穂は小さく深呼吸をして、楓を見上げた。
「...ごめんなさい」
菜穂はそう言って楓に頭を下げた。
楓は表情を変えずに菜穂の顔を見た。
「ちゃんと言わなきゃいけなかった。私、楓の気持ちには応えられない...!ごめんなさい...ごめんなさい...!それと...楓の質問には答えられない。ごめんなさい...!」
頭を下げる菜穂を見て、楓は「...顔、上げて下さい」と言った。
菜穂がゆっくりと顔を上げると、楓は優しく微笑んだ。
「謝らないでください。菜穂先輩は何も悪くないんですから。言いたくないことは言わなくていいんです」
「楓...」
菜穂は今にも泣きそうな表情で呟いて楓を見上げた。
楓はクスッと微笑み、視線を菜穂に合わせた。
「俺、後悔してません。菜穂先輩と出会って、菜穂先輩と仲良くなって、菜穂先輩を好きになって、菜穂先輩に自分の気持ちを言えたこと。感謝してます。今こうして話せてること、たくさん笑って、たくさん笑わせてくれたこと。俺のこと、本気にさせてくれたこと。ちゃんと振ってくれたこと。全部、ありがとうございます。俺、菜穂先輩のこと本当に好きです。だから、これからも仲良くしてくださいね、後輩として」
楓はそう言うとまた微笑みかけ、態勢を戻した。
菜穂は目を真っ赤にした状態で楓を見つめた。
「...じゃあ、今度こそ帰りましょうか。もう暗いですし」
楓はそう言って、何事もなかったかのように歩き出した。
「ほら、行きますよ。菜穂先輩足遅いし、早く帰らないと朝になっちゃうんですけど」
くるりと振り返り、楓はいつものように笑った。




