やっと言えた
言われた菜穂はその場で固まり、「…え?」と呟いた。
楓は微笑み、小走りで数メートル先にいる菜穂の元へ。
菜穂の前で立ち止まり、楓は菜穂の顔を見て言った。
「俺、菜穂先輩のことが好きです。ずっと…ずっと前から好きです」
楓がそう言うと、菜穂は目を見開いたまま楓の顔を見上げた。
楓はそんな菜穂を見て、「やっと言えた」と微笑んだ。
そんな楓を見て、菜穂は未だ固まったまま楓を見上げていた。
楓はフッと笑った。
「何か言ってくださいよ。人がせっかく勇気出して人生初の告白してるのにそんなアホヅラして。失礼じゃないですか」
言われ、菜穂は「え...あっいや....!」と呟いて俯いた。
「きゅ、急にどうしたの...?す、好きって....え?」
菜穂は小さな声で呟くように言った。
楓は「そのままの意味です。好きです」と淡々と言った。
菜穂は驚いたように顔を上げ、「えっえっ....」と呟き、またすぐに俯いた。
楓はまたフッと笑った。
「そりゃまあ、びっくりもしますよね。突然驚かせちゃってすいません。でも、どうしても伝えたくて。菜穂先輩最近俺のこと避けてるし」
楓がそう言うと、菜穂は「そ、それは楓がっーーーーーー」と言ってから口を閉じ、楓から視線を逸らした。
「俺が?俺が何ですか?何か嫌なことしましたっけ」
楓は不思議そうに菜穂を見た。菜穂は「い、嫌なことって言うか...」と戸惑いながら呟いた。
「あ、俺が抱きついちゃったからですか?ほぼ告白みたいなこと言っちゃったし」
楓は思い出したかのように淡々と言った。
菜穂は「えっ!?それはその...!う、うん...」と言って俯いている。
「それも急にすいませんでした。でも、それも聞きたかったんです。あの日、菜穂先輩がどう思ったのか。どうして俺の前で泣いてくれたのか。どうして俺のことを大事だって、好きだって言ってくれたのか。教えてもらえませんか、菜穂先輩の気持ち」
楓はそう言って真剣な眼差しで菜穂を見た。
「そんなこと言われても....あの時はそう思ってーーー」
菜穂がそう言うと、楓は首を傾げた。
「じゃあ今はもう、俺のこと何とも思ってくれてないですか?」
「ちがっーーーー」
菜穂は勢いよく顔を上げて言った。
「...じゃあ、教えてくれませんか。俺のこと、どう思ってるのか」
楓がそう言うと、菜穂は「い、いや....」とまた俯く。
楓は「...答えたくありませんか?」と菜穂を見た。
菜穂は無言のまま顔を上げ、ただ楓の顔を見つめた。
楓は少し沈黙し、静かに口を開いた。
「...分かりました。俺が急に告白しちゃっただけですし、答えは急ぎません。ちゃんと、兄ちゃんとのことだって理解してます。でも、俺が菜穂先輩のことが好きだってことは分かって下さい。気長に待ってますね」
楓はそう言って微笑み、「帰りましょうか」と言って歩き出した。




