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ごめん

湊が2階へ行ってしまい、2人きりになってしまった光と楓は気まずそうにしながら無言で夕飯の残りを食べた。


光が先に食べ終え、食器を持って立ち上がった時、楓も同時に食べ終えて立ち上がった。


「…俺洗うからいいよ。置いといて」


楓はシンクに食器を置いた光に言った。光は「…いいよ、俺が洗うから」と呟いて水を出した。


「いいって。俺が洗うから」と楓。


「俺が洗うってば」と光。


2人は目が合い、また気まずそうに目を逸らした。


「…ごめん。言い過ぎた」


楓がボソッと呟くと、光はスポンジを手に「…俺もごめん。言っちゃいけないこといっぱい言った」と呟いた。

2人の間に沈黙が流れ、水道の水が流れる音だけが耳に届いた。


「…でもやっぱ、楓が菜穂といるとこ見るの嫌だ。だから邪魔しなきゃって思って…」


光が呟くと、楓は「…うん。ごめん」と呟き、言葉を続けた。


「でも俺も、何もしないまま譲りたくない」


「…分かってるよ、楓の気持ちは。だから、その、話すのを止めるのはやり過ぎた、ごめん。でも、俺がいないとこで絶対触れたりはしないで欲しいんだ」


「…そんなことしないよ」


「ごめん、信用できなくて。でも、俺が楓を信じられないのは…楓が嫌いだからじゃないよ。楓が、俺から見ても良い奴だなって思うから…菜穂が楓といて楽しそうなのも分かってる。菜穂の気持ちも尊重したい。でも、俺だって少しくらいワガママ言う権利はあるでしょ…?」


光は不安気な表情で楓を見た。


「うん....そうだね。後付けになっちゃうけど、俺だって今まで無理矢理彼女作ったり、諦めてたのは相手が兄ちゃんだからだよ....兄ちゃんは俺よりもずっと優しくて、かっこよくて、何でもできる俺の憧れだから。勝ち目がないと思ったし、兄ちゃんから幸せ奪おうなんて思えなかった。今だって奪いたいだなんて思ってない。それは、分かって欲しい」


楓はそう言ってキッチンの向かい側の椅子に座った。

光は泡のついた皿を水ですすぎ、手を拭きながら楓を見た。


「..分かってる。分かってるんだ、全部。楓は俺を不幸にしたいんじゃない、ただ菜穂が...好きなんだよね」


光に言われ、楓は少しだけ光を見つめてから言った。


「うん、好き」


そう言われ、光は一瞬目を見開き、すぐに苦笑した。


「...はっきり言うなよ。さすがに何か、嫌だわ」


「あ、ごめん...」楓も苦笑した。


光はキッチンから出て、ソファに座った。


「はあ、何でよりによって楓なのかな~~~~。俺たち、あんま似てるって言われないのにね。何で1番似たくないとこだけ似ちゃったかなあ」


光はそう言って苦笑した。楓も苦笑し、「本当にね」と光を見た。


「はは...俺らも湊くらい女の子が好きだったら楽だったかな~」


光はそう言って苦笑した。


「確かに。被ったのも湊だったら簡単に譲ってくれたかも。あいつ毎回本気じゃないし。てか本気なんか知らないんじゃね」と楓。


「この間も部屋に女の子連れてきてたよ」


「俺なんて部屋隣だから湊が女の子と話してる声とかチューしてるのとか聞こえて最悪なんだけど」


楓は呆れたように言った。光は笑いながら答える。


「まだ高1であれじゃあこの先がちょっと不安だけどね」


「あいつ小学生の時からいっつも女の子にちょっかいかけてたし、もう手遅れだって」


「あー、やってたやってたっ!毎年女の子とお祭り行ったりクリスマス遊ぶとか言ってね。俺らお兄ちゃんなのに置いてけぼりだったね」


「本当に。小学生の時なんか女の子にそんな興味無かったけどね。あいつ天性の女好きだわ」


楓がそう言って笑うと、光もクスっと笑い、小さく深呼吸をした。


「...楓」


「ん?」

楓が光の方を見ると、光は微笑んだ。


「菜穂に浮気させるなよ。悩ませるな。約束してくれるなら、俺はもう菜穂を信じることしかできない。菜穂がどっちを選んでも、どっちも選ばれなくても、もう恨みっこなしね」


言われた楓は、真剣な表情に戻った。


「...わかった。約束する。ありがと、兄ちゃん」


楓に言われ、光は首を横に振って苦笑した。


「でも、このタイミングで言うのはずるいと思うんだけど...1個、いや2個..?謝っていい?」


楓がそう言うと、光は「ん?」と不思議そうに微笑んだ。


「あのさ...俺前菜穂先輩がすっごい泣いてた時さ...手、握っちゃった」


「はっ!?もう1個は...!?」


光の表情が驚き一色に。


「あー...えっと、その後...ちょっとだけ、一瞬??一瞬だけその..ハグ..的なーーーーーー」


楓が言うと、光は「ハグっ!?は!?」と動揺の表情。


「いやいやいや!で、でも!菜穂先輩側は何も悪くないし、俺が勝手に..!!本当あの、ごめん...!!」


楓はそう言って頭を下げた。

光は今にも倒れそうなのかというくらい青ざめた表情で額を押さえて言った。


「お前...流れで許してもらおうとしてるだろ...でも、菜穂が泣いてたってあれでしょ?俺のせいで泣いてたんでしょ?」


光に言われ、楓は「ああ、まあ、うん....」と気まずそうに呟いた。

光は溜息をつき、「だよね...わかった。それは聞かなかったことにする」と苦笑した。


「あ、ありがと...」と楓。


「でもお前、どさくさに紛れてーーーーー」


光が言いかけ、楓は「キスはしてないっ!本当に」と焦った様子で言った。


「...分かった。でも次はまじで怒るからね」


「はい、すいませんでした...」


「でもハグってさあ~~....」


「ごめんて」


そんな二人の会話を湊は廊下で聞き、クスっと微笑んだ。


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