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光くんのことを考えよう

菜穂はいつも通り光と手を繋ぎ、バイト先の近くで足を止めた。


「じゃあ行ってくるね!」


菜穂がそう言って手を解こうとしたとき、光の手が離れず、菜穂は不思議そうに光を見上げた。

光は苦笑しながら「...今日、何時に終わる?迎えに来ちゃだめ?」と菜穂を見た。


「え、20時には終わるけど...大丈夫だよ?どうしたの??」


菜穂が不思議そうに言うと、光は「ううん。俺が会いたいから...来てもいい?」と言った。


「う、うん?ありがとう。じゃあ、一緒に帰ろっ」


菜穂が微笑むと、光は「ありがと。じゃあバイト頑張ってね」と言って手を離した。


「ありがとう!行ってきます!」



******




菜穂は光に手を振り、事務所へ入った。


「おはようございまーす」


菜穂が言うと、既に中にいた楓が「あ、おはようございます」と菜穂を見た。

菜穂は「お、おはよう...!」と目を泳がせ、ロッカーを開けた。


楓は首を傾げ、「どうしました?目ギョロギョロして魚みたいですよ」と菜穂を顔を見た。


「えっ!?別に!!??」


菜穂はそう言いながら楓の方を見ずに着替え始めた。



******



その日のバイト中も、菜穂は楓と目を合わせようとせずぎこちない会話を繰り広げたり、物を落としたりすることが多く、楓は不思議そうに菜穂を見ていた。


菜穂は1人、あの日楓に抱きしめられた日のことが頭から離れずグルグルしていた。

そして好きかも知れないと思ってしまった自分の感情。

菜穂はぼーっと思い出すとハッとしたように首をブンブンと横に振った。


そんな菜穂を見ていた楓は「どうしました?首座ってないですよ」と言って菜穂の顔を覗き込んだ。

菜穂が横を向き、楓の顔が近くにあったことに動揺し「な、なんでもないって!!!」と言ってレジの方へ小走りで逃げて行った。


あれから1ヵ月....学校でも普通に会ってたし喋ったりもしてるのに、2人きりになるのはちょっと...!!!

そうだ光くん!光くんと会うし、光くんのこと考えよう..!!!!!!

菜穂は1人そんなことを思いながら淡々とレジをしていた。



******



バイトが終わるなり菜穂はさっさと着替え、「じゃ、じゃあお疲れ!」と言ってそそくさと事務所を出て行った。


楓は「えっ」と呟き急いでリュックを背負い、菜穂の後を追った。

事務所の鍵を閉め、走って角を曲がろうとした時、「菜穂っ!」と声が聞こえ、楓は急いで壁に隠れた。


壁から覗くと、そこには光の姿が。

菜穂は楓に背を向けており、遠くからこちら側を向いている光と目が合った。


楓はビクッとなり壁に隠れ、光はムスッとした表情で菜穂の手を握り「帰ろっ」と微笑んだ。


今日、朝出る時母さんに「楓、今日バイト―?」って聞かれたとき「うん」って言ったな、俺。

兄ちゃんに聞こえてたか.........完っっっ全に俺と菜穂先輩が2人になるの阻止しにきてる....

言わないようにしよ.........



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